漢方薬「熊胆」の作用機序の解明からC型肝炎治療薬の開発

文献情報

文献番号
201008026A
報告書区分
総括
研究課題名
漢方薬「熊胆」の作用機序の解明からC型肝炎治療薬の開発
課題番号
H22-創薬総合・一般-010
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
半田 宏(東京工業大学 ソリューション研究機構/大学院生命理工学研究科 生命情報専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 今井 剛(東京工業大学 バイオフロンティアセンター)
  • 末松 誠(慶應義塾大学 医学部)
  • 小田泰子(慶應義塾大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
20,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
漢方薬「熊胆」は「熊の胆(くまのい)」とも呼ばれる動物性生薬である。「熊胆」の主成分であるウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid; UDCA)は胆汁酸代謝物の1種であり、肝機能改善薬として知られている。最近ではC型肝炎に対する有効な治療薬としても利用されている。本研究ではUDCAの薬理作用機構の分子レベルでの解明を目的に、UDCAの標的タンパク質を単離・同定する。また、培養細胞や実験動物を用いてUDCAの機能を解析する。本研究の成果によって、漢方薬「熊胆」の有用性に対して科学的根拠を提供したい。
研究方法
東京工業大学の半田教授が独自に開発した高機能性アフィニティ磁性ビーズにUDCAを固定化し、磁気分離を含むアフィニティ精製により、ラットの肝臓抽出液からUDCA結合タンパク質(群)を探索した。
肝炎患者では骨密度が低いという報告を参考に、骨芽細胞をUDCAで処理して骨芽細胞分化活性を調べた。転写因子に対するUDCAの作用を調べるために炎症性細胞を用い、炎症性サイトカインをイムノアッセイによって測定した。
結果と考察
UDCA固定化磁性ビーズを用いたアフィニティ精製により、ラットの肝臓抽出液からUDCAに選択的に結合したタンパク質が複数得られ、過剰量のUDCAを用いた実験によって、UDCAに対してアフィニティの強いUDCA結合タンパク質(群)を選定した。よって、ラットの肝臓抽出液にUDCA標的タンパク質が存在していると考えられる。
UDCA処理した骨芽細胞ではUDCA濃度依存的に骨芽細胞分化促進活性が上昇し、炎症性細胞においてLPS(Lipopolysaccharide)刺激で活性化される転写因子NF-kBがUDCAによって抑制された。以上の結果から、骨芽細胞などの培養細胞にもUDCA標的タンパク質が存在していることが示唆される。
結論
磁性ビーズを利用したアフィニティ精製によって、ラットの肝臓抽出液からUDCAに対して高いアフィニティを有するUDCA結合タンパク質(群)が得られた。これらはUDCA標的タンパク質の可能性が高いと考えられる。また、UDCAによって骨芽細胞の分化が促進され、炎症性サイトカインの産生に深く関わる転写因子NF-kBの活性化が抑制されたことから、骨芽細胞の分化や活性化NF-κBの抑制にUDCA標的タンパク質が関与している可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2011-09-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201008026Z