文献情報
文献番号
202424043A
報告書区分
総括
研究課題名
濫用等のおそれのある医薬品の成分指定に係る研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KC2005
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
嶋根 卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
- 富山 健一(国立精神神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
- 喜多村 真紀(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
4,346,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
「濫用等のおそれのある医薬品」の指定成分の範囲の見直しを検討することは喫緊の課題である。本研究では、依存症専門医療機関等における市販薬の乱用・依存の実態を把握するとともに、各成分の依存性や乱用につながる精神作用性などに関する情報を収集・整理し、「濫用等のおそれのある医薬品」の指定範囲に関する見解案の作成を目的とした。
研究方法
研究計画に基づき研究1~3を実施した。
結果と考察
主たる結果と考察を各研究ごとに結論に記載した。
結論
【研究1】依存症専門医療機関を受診する患者を対象とする全国調査によると、2024年4月から5月における市販薬症例が主として乱用していた市販薬には、「濫用等のおそれのある医薬品」として指定されている成分のみならず、デキストロメトルファン、ジフェンヒドラミン、アリルイソプロピルアセチル尿素、カフェインといった指定されていない未指定成分が含有されていることが明らかとなった。患者の平均年齢は29.1歳、71.4%が女性であり、主として家族関係や友人関係が乱用開始のきっかけとなっていた。乱用に期待する主たる効果は、気持ちの落ち込みが改善する、リラックス・落ち着く、気分あがる・テンション上がる、フワフワ・浮遊感、多幸感などであった。約20%の症例で入院を伴う救急搬送エピソードが認められた。
【研究1業務委託】市販薬の意図的摂取に関する問い合わせの内容分析によると、2019年から2023年にかけて、問い合わせ件数は増加傾向にあり、患者は女性が多く低年齢化していた。意図的摂取の対象となる市販薬は、「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されている製品のほか、カフェイン含有眠気防止薬、ジフェンヒドラミン含有アレルギー用薬、ジフェンヒドラミン含有催眠鎮静薬、デキストロメトルファン含有鎮咳去痰薬が多かった。
【研究2】PubMedなど学術文献検索サイトを通じた文献調査によると、デキストロメトルファンの過剰摂取による健康影響として、1.5-2.5 mg/kgで軽度の酩酊感、興奮や解離状態を誘発し、2.5~7.5 mg/kgでは、多幸感・幻覚・協調運動障害など、15 mg/kg以上では、幻覚・記憶障害・暴力的な行動・心停止や呼吸停止による死亡例などが報告されていた。ジフェンヒドラミンの過剰摂取による健康影響として、7.5〜7.7 mg/kg摂取することで、高血圧・頻脈が誘発され、8.3~19.8 mg/kgでは、興奮・苛立ち・混乱・幻覚・妄想・呼吸抑制・昏睡を発症し、35.6~61.1 mg/kgでは、眼球振盪・失神に至る。カフェインを大量に摂取または連用中の急激な減量ないしは中止により、不快感、イライラ、落ち着きのなさ、渇望感、軽い体の痛み、偏頭痛、眠気、不眠、疲労感、無気力、自傷行為感等の禁断症状があらわれる。アリルイソプロピルアセチル尿素については、国際的には医薬品として使用されておらず、健康影響に関する情報がほとんど報告されていなかった。
【研究3】ソーシャル・ネットワーキング・サービスを情報源とする研究によれば、2024年4月18日から5月29日にX(旧Twitter)に投稿された「ODレポ」を含む投稿文の分析により、15種類の市販薬の製品が抽出された。このうち14種類の製品には、濫用等のおそれのある医薬品の指定成分ではなく、デキストロメトルファン、ジフェンヒドラミン、アリルイソプロピルアセチル尿素、カフェインが含有されていた。投稿文の内容分析を通じて、市販薬の不適正使用の動機として多幸感、解離症状および幻覚体験があり、これらの経験をSNS上で共有することで、同様の関心を持つユーザー同士のつながりが形成される可能性が示唆された。
【研究1業務委託】市販薬の意図的摂取に関する問い合わせの内容分析によると、2019年から2023年にかけて、問い合わせ件数は増加傾向にあり、患者は女性が多く低年齢化していた。意図的摂取の対象となる市販薬は、「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されている製品のほか、カフェイン含有眠気防止薬、ジフェンヒドラミン含有アレルギー用薬、ジフェンヒドラミン含有催眠鎮静薬、デキストロメトルファン含有鎮咳去痰薬が多かった。
【研究2】PubMedなど学術文献検索サイトを通じた文献調査によると、デキストロメトルファンの過剰摂取による健康影響として、1.5-2.5 mg/kgで軽度の酩酊感、興奮や解離状態を誘発し、2.5~7.5 mg/kgでは、多幸感・幻覚・協調運動障害など、15 mg/kg以上では、幻覚・記憶障害・暴力的な行動・心停止や呼吸停止による死亡例などが報告されていた。ジフェンヒドラミンの過剰摂取による健康影響として、7.5〜7.7 mg/kg摂取することで、高血圧・頻脈が誘発され、8.3~19.8 mg/kgでは、興奮・苛立ち・混乱・幻覚・妄想・呼吸抑制・昏睡を発症し、35.6~61.1 mg/kgでは、眼球振盪・失神に至る。カフェインを大量に摂取または連用中の急激な減量ないしは中止により、不快感、イライラ、落ち着きのなさ、渇望感、軽い体の痛み、偏頭痛、眠気、不眠、疲労感、無気力、自傷行為感等の禁断症状があらわれる。アリルイソプロピルアセチル尿素については、国際的には医薬品として使用されておらず、健康影響に関する情報がほとんど報告されていなかった。
【研究3】ソーシャル・ネットワーキング・サービスを情報源とする研究によれば、2024年4月18日から5月29日にX(旧Twitter)に投稿された「ODレポ」を含む投稿文の分析により、15種類の市販薬の製品が抽出された。このうち14種類の製品には、濫用等のおそれのある医薬品の指定成分ではなく、デキストロメトルファン、ジフェンヒドラミン、アリルイソプロピルアセチル尿素、カフェインが含有されていた。投稿文の内容分析を通じて、市販薬の不適正使用の動機として多幸感、解離症状および幻覚体験があり、これらの経験をSNS上で共有することで、同様の関心を持つユーザー同士のつながりが形成される可能性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2025-06-10
更新日
-