粘膜免疫機能を増強する漢方薬の探索とその有効成分の同定

文献情報

文献番号
201008023A
報告書区分
総括
研究課題名
粘膜免疫機能を増強する漢方薬の探索とその有効成分の同定
課題番号
H22-創薬総合・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
小泉 桂一(富山大学 和漢医薬学総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 國澤 純(東京大学 医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人類は、再び感染症の脅威に直面している。粘膜組織を標的とした経口ワクチンは、自然免疫応答に基づく粘膜防御強化のみならず、ワクチン接種による粘膜系獲得免疫応答の増強も可能である。従って、今後の感染症予防対策の切り札として期待されているが、その殆どが実用化に至っていない理由の一つとして、安全かつ有効なアジュバントの開発が進んでいないことが挙げられる。そこで、本研究では、(1)単独の服用で、粘膜免疫を活性化する、および、(2)経口ワクチンとの服用で、アジュバント効果を有する漢方薬を網羅的に探索し、その有効成分の同定と作用機序の解明を行うことを目的とする。
研究方法
まず初めに、in vitro抗原提示試験により、ワクチンアジュバント効果を有する可能性が高い漢方薬とその成分を網羅的に探索した。次に、抗原提示能力を亢進することが明らかとなった漢方薬、十全大補湯、補中益気湯、および黄耆建中湯マウスに経口投与し、経日的に糞便、血清を回収し、その中に含まれる抗体価を測定した。経口投与した抗原に対する特異的な免疫応答を検討する目的で、上記、漢方薬を前投与したマウスにモデル抗原であるニワトリ卵白アルブミン(OVA)を粘膜アジュバントであるコレラトキシンと共に経口投与し、糞便、ならびに単核球を回収し、OVA特異的抗体反応を測定した。
結果と考察
in vitro抗原提示試験により、抗原特異的な免疫応答を誘導できるアジュバント活性を有する漢方薬のスクリーニングを行った。その結果、十全大補湯、補中益気湯、および黄耆建中湯には、強い抗原提示活性が確認できた。特に、経口ワクチン投与期間中に補中益気湯を投与すると抗原特異的IgA抗体産生の増強作用があったことは興味深い。今後、経口ワクチンとの併用療法構築のためのトランスレーショナルリサーチを展開することが大切だと思われる。さらに、抗原特異的アジュバント活性を有する成分、pentagalloylglucose および類縁体も同定した。また、生薬成分では、黄耆エキスに樹状細胞に対する非常に強い抗原提示能力亢進作用が確認できた。
結論
今後は十全大補湯、補中益気湯に関しても今年度に行った黄耆建中湯と同様の研究を行い、さらに、動物実験で漢方薬の経口ワクチンに対するアジュバントしての有用性を確認していく予定である。さらに、上記漢方薬エキスを水溶性成分・脂溶性成分、さらには複数の分画を分収し、活性本体の同定を行い、pentagalloylglucoseと同様に同定された有効成分は、感染症に対する新規医薬品開発に対するシーズとしての可能性を追求していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2011-08-15
更新日
-

収支報告書

文献番号
201008023Z