抑肝散の精神機能障害に対する効能解析への科学的・分子生物学的アプローチ

文献情報

文献番号
201008020A
報告書区分
総括
研究課題名
抑肝散の精神機能障害に対する効能解析への科学的・分子生物学的アプローチ
課題番号
H22-創薬総合・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
遠山 正彌(大阪大学大学院医学系研究科 神経機能形態学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 掛樋 一晃(近畿大学 薬学部/分析化学・糖鎖生物学)
  • 島田 昌一(大阪大学大学院医学系研究科神経細胞生物学講座/神経薬理学、生化学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢化が著しく進む現在、アルツハイマー病などの認知症の治療法の開発はまさに急務である。抑肝散歯認知症に効果を示すという臨床結果が蓄積されている‥また認知症の予防や進行防止にも有効との結果も報告されている。認知症と並んで抑肝散の著名な効果が認められる疾患は統合失調症である。すなわち抑肝散は統合失調症治療にも有効な成分をも含むことを示している。一方漢方薬は長年の歴史から副作用は少なく安全性が確保されているが、科学的立証に乏しい。本研究は認知症や統合失調症に有効とされている抑肝散の化学的立証を目指し、有効成分とその機序についての解明を行うものである。
研究方法
アルツハイマー病における認知症は大脳や海馬の神経細胞死によって引き起こされる。此の細胞死はアルツハイマー病の患者では小胞体ストレスによる細胞死から細胞を守る機序が阻害されカスペース4が活性化するために生ずることを我々は明らかとしてきた。本研究では抑肝散が小胞体ストレスからの神経細胞死を救済するか、されにどの成分がその任を担うかの解明を目指す。一方統合失調症ではセロトニン受容体機能の制御以上が生じている。本研究では抑肝散のセロトニン受容体に対する効果、どの成分がその効果を担うかを解明する。
結果と考察
本研究では抑肝散の認知症に対する効果は抑肝散を構成するセンキュウに含まれる成分が小胞体ストレスによる神経細胞死を抑制し、カスペースー4の活性化を阻害することを解明した。さらに本研究ではセンキュウに含まれるどの成分が此の作用を有するかまで解明した。また抑肝散の統合失調症への効果は抑肝散の構成生薬であるチョウトウコウに含まれる一因子が各種セロトニン受容体の機能を制御することを解明した。
結論
以上の事実は小胞体ストレスによる神経細胞死を防ぐセンキュウ、抑肝散はアルツハイマー病による認知症の治療、予防、進行防止に有効であるとの科学的証左を与えるものである。抑肝散が各種セロトニン受容体の機能を制御するという事実は、抑肝散、チョウトウコウはこれまでの統合失調症の治療薬が備える各種セロトニン受容体に対する特徴のみならず、セロトニン受容体7への新しい効果も有することが判明した。これらの結果はよく肝散が統合失調症の治療薬としてきわめて有効なものであると結論できる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201008020Z