文献情報
文献番号
201008019A
報告書区分
総括
研究課題名
漢方薬による免疫がん微小環境の改善と作用機序の解明
課題番号
H22-創薬総合・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
河上 裕(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 工藤 千恵(慶應義塾大学 医学部 )
- 藤田 知信(慶應義塾大学 医学部 )
- 渡辺 賢治(慶應義塾大学 医学部 )
- 山本 雅浩(慶應義塾大学 医学部 )
- 今津 嘉宏(慶應義塾大学 医学部 )
- 木内 文之(慶應義塾大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
漢方薬によるがん微小環境免疫病態の改善作用や抗腫瘍免疫増強作用を検討して、その作用機序を解明することにより、漢方薬のがん治療への有用性を明らかにすることを目的とする。
研究方法
各種漢方処方の経口投与による、直接、あるいは腸管免疫を介した間接的ながん免疫応答へのin vivo 作用を検討した。また、入手可能な62種類の漢方成分の中から、ヒトがん細胞からの免疫抑制分子の産生や制御性T細胞などの免疫抑制性免疫細胞の誘導を阻害する物質を、新しく開発したスクリーニング法を用いて同定した。また、がん免疫抑制病態に関与すると考えられる、がん細胞やがん浸潤免疫細胞で発現する核内受容体AhRに作用する漢方成分を、新しく開発したスクリーニング法を用いて同定した。
結果と考察
「がん免疫抑制環境の改善」と「抗腫瘍免疫応答の増強」をもつ可能性のある漢方処方を選択し、また62種類の漢方成分を購入入手した。漢方処方の経口投与は、 制御性T細胞や骨髄由来免疫抑制細胞などの免疫抑制性細胞の抑制、あるいはCD8+T細胞とNK細胞などの抗腫瘍性リンパ球の増加により、担がん生体の免疫抑制環境の改善や抗腫瘍免疫応答の増強を起こす可能性が示されたが、その効果は強くなく、漢方処方中の活性成分を同定することが必要と考えられた。
そこで、入手した62種類の漢方成分から、各種ヒトがん細胞からのTGF-やIL10などの免疫抑制性サイトカインの産生を抑制する物質、あるいは免疫抑制性の制御性T細胞の誘導を抑える物質を複数同定した。また、がん細胞、およびがん組織浸潤リンパ球や腸管リンパ球に発現して、がん免疫抑制病態に関与すると考えられるAhRに作用する漢方成分を複数同定した。今後、同定した漢方成分の作用強度の検討、作用標的の同定、in vivo効果の検討などを進める必要がある。
そこで、入手した62種類の漢方成分から、各種ヒトがん細胞からのTGF-やIL10などの免疫抑制性サイトカインの産生を抑制する物質、あるいは免疫抑制性の制御性T細胞の誘導を抑える物質を複数同定した。また、がん細胞、およびがん組織浸潤リンパ球や腸管リンパ球に発現して、がん免疫抑制病態に関与すると考えられるAhRに作用する漢方成分を複数同定した。今後、同定した漢方成分の作用強度の検討、作用標的の同定、in vivo効果の検討などを進める必要がある。
結論
本年度の研究により、漢方処方の経口投与は、がん微小環境の免疫抑制状態を改善できる可能性はあるものの、その効果は強くないことから、活性漢方成分を同定することが重要であることが判明し、各種新しく開発したスクリーニング法を用いて、本研究目的に合致した候補漢方成分を複数同定した。今後、同定した漢方成分のさらなる解析により、本研究の目的である「がん免疫抑制環境の改善作用」や「抗腫瘍免疫応答の増強作用」をもつ漢方成分を同定する予定である。
公開日・更新日
公開日
2011-09-14
更新日
-