国際流通する偽造医薬品等の実態と対策に関する研究

文献情報

文献番号
202424028A
報告書区分
総括
研究課題名
国際流通する偽造医薬品等の実態と対策に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KC2007
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究域附属AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 前川 京子(同志社女子大学 薬学部)
  • 小出 達夫(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
1,731,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
偽造医薬品対策として、医薬品の個人輸入代行業者に着目するとともに、個人輸入が濫用等のおそれのある医薬品の入手ルートになる可能性を踏まえ、インターネットを介して国際流通する医薬品の実態や国際的規制の動向を明らかにすることにより、より効果的な啓発と対策の強化に資するため、本年度は、①医薬品等の個人輸入代行に係る規制状況調査(規制調査)、②偽造医薬品による健康被害に関する調査、③インターネットを介して個人輸入される医薬品の実態調査(試買調査)を行うとともに、④偽造医薬品を取り扱う個人輸入代行サイトの推定を行った。
研究方法
①医薬品個人輸入代行業者の資格要件について、ドイツと英国を対象に調査した。②2024年度中に論文として報告された偽造医薬品による健康被害事例について、PubMedをデータソースとして情報を収集した。③2023年度試買したフォシーガ10mg錠、デキストロメトルファン製剤、およびジフェンヒドラミン製剤について品質試験を行った。また、新たにリベルサスを対象に、個人輸入代行サイトを介した個人輸入医薬品の試買調査を実施した。リベルサスの主薬成分である高分子化合物セマグルチドを定性・定量するための液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)測定条件について検討した。④個人輸入により入手した医薬品212検体を対象に、2023年度に抽出された偽造医薬品取り扱いサイトの特徴ならびに構築された偽造医薬品取り扱いサイト予測モデルを用いて、新たに入手した個人輸入リベルサスの偽造性を予測した。また、新たに入手したリベルサス21サンプルを含むデータセットを作成した。
結果と考察
①ドイツでは、承認または登録されていない医薬品は、個人輸入も含め、原則として輸入禁止である。医薬品の個人輸入は、承認を得た薬局が注文し受け取る場合に限り認められる。英国では、医薬品の輸入は製造業者免許または卸売業者登録を有する者にのみ認められるが、個人が自分または世帯員のために、医薬品を輸入することは可能である。但し、個人が輸入する場合は自ら輸入しなければならず、輸入業者や登録ブローカーは介在できない。②英語で書かれた論文450件のうち偽造医薬品に関する58件の内容を確認し、偽造医薬品による健康被害の内容が記載された論文は4件を特定した。偽造アルプラゾラム、偽造オキシコドンおよび偽造ヒドロコドンによる死亡事例、ならびに偽造カリソプロドールによる紫色発疹発現事例について報告されていた。③フォシーガ錠、デキストロメトルファン製剤およびジフェンヒドラミン製剤について、主薬成分含量を測定した結果、顕著な過不足は認められなかった。リベルサス錠3 mgを試買した結果、処方箋を提出することなく、20サイトから21サンプルを入手した。入手したリベルサス錠 3 mg の 1錠当たりの平均価格は、 1007.7 円/錠であり、薬価の 7.2 倍に相当する額であった。真正性調査の結果、今回入手したリベルサス錠は、すべて真正品であることが確認された。セマグルチド定量法の構築にあたり、セマグルチドのガラス吸着への対策が必要であることが示され、今後、LCでの分離条件を含め、定量法をさらに改変し、個人輸入リベルサス錠を対象に主薬成分の定量を行う。④リベルサスの試買調査において得られた結果は、2023年度に抽出された偽造医薬品取り扱いサイトの特徴と大きな矛盾はなく、偽造医薬品取り扱いサイト推定法により、入手したリベルサスはすべて真正品と予測された。
結論
自己施用のための医薬品個人輸入について、ドイツと英国では、個人輸入代行業者の介在による医薬品の個人輸入は想定されておらず、個人輸入代行業者の存在自体が違法性を問われる可能性があることが明らかになった。新たに収集された偽造医薬品による健康被害として、米国における偽造オピオイド等による死亡事例が報告されていた他、美容目的で使用される医薬品の偽造が増えている可能性が示された。試買調査で入手した個人輸入医薬品に明らかな低品質・偽造医薬品の混在は確認されていないが、世界的には偽造医薬品の出現が報告されていることから、販売者に対する監視・指導に加え、国民に対する情報提供や実効性のある注意喚起の必要性が示された。2023年度に提案した偽造医薬品取り扱いサイト推定法は、2024年度に入手したリベルサス錠の偽造性を正しく予測した。引き続きデータの拡充を行い、精度向上ならびに監視・指導等での活用を目指す。

公開日・更新日

公開日
2025-06-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-06-17
更新日
-

収支報告書

文献番号
202424028Z