認知症疾患モデル「TDP-43脳脊髄異常蓄積マウス」の開発

文献情報

文献番号
201008018A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症疾患モデル「TDP-43脳脊髄異常蓄積マウス」の開発
課題番号
H22-創薬総合・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 治彦(財団法人東京都医学研究機構 東京都精神医学総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 成人(財団法人東京都医学研究機構 東京都精神医学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
原因不明とされてきた認知症疾患の多くが,脳脊髄への異常蛋白質蓄積に基づいていることが明らかになり,分子生物学的手法を駆使する事で根本治療薬開発に必須な疾患モデルの作出が可能になってきた.本研究では認知症原因蛋白質のうち,病態解析が遅れ,薬剤開発に適した動物モデルも存在しないTDP-43の異常蓄積動物モデルを開発する.
研究方法
常法にそって野生型および変異型ヒトTARDBP遺伝子をマウスの胚に注入し,TARDBPトランスジェニック(Tg)マウスを作出した.導入遺伝子の発現が確認されたマウスの脳をイムノブロットおよび免疫組織化学を用いて解析し,脳におけるヒトTDP-43産生が確認できた3系統のTARDBP-Tgマウスを得た(野生型,G298S,M337V各1系統).これらを一定期間飼育し,行動および脳脊髄の解析を行った.またオリゴデンドログリア系培養細胞を用いて,神経系培養細胞のモデル作製において既に良い結果を得ている改変TARDBP遺伝子を導入,発現させた.ヒト剖検脳の解析については,これまでに本研究室に蓄積された約2500症例の標本から前頭側頭葉変性症(FTLD)を計66例抽出し,剖検脳組織標本を免疫組織化学染色により解析した.
結果と考察
樹立したTARDBP-Tgマウス3系統のうち,野生型,G298Sの2系統は生後早い時期から後肢の機能異常が観察されたが,生化学的には,患者脳に蓄積する不溶性の異常リン酸化TDP-43を検出することはできなかった.しかし免疫組織化学染色では少数ではあるが異常リン酸化TDP-43を蓄積した神経細胞を認めた.ただ,異常蓄積の出現頻度はヒト疾患脳脊髄に比べて僅かであった.またオリゴデンドログリア系培養細胞に改変TDP-43遺伝子を導入した培養細胞モデルを作製し,神経系培養細胞モデルと同様,リン酸化,ユビキチン化を伴うTDP-43異常蓄積を起こすことに成功した.ヒト剖検脳の解析ではFTLD計66例のうち約半数がFTLD-TDPであり,さらに,残りのタウ陰性TDP-43陰性FTLD計10例中9例が,TDP-43と同じhnRNPであるのFUS蓄積症(FTLD-FUS)であることが明らかになった.
結論
全長TARDBP-Tgマウスでは,ヒト病変に匹敵するTDP-43異常蓄積を生じる事はなかった.抗認知症薬の創薬モデルとするには,今後,異常蓄積を加速させる可能性がある背景要因の付加,改変TDP-43遺伝子の導入などの改良を加える必要がある.

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201008018Z