安全な血液製剤の安定供給に資する適切な採血事業体制の構築のための研究

文献情報

文献番号
202424020A
報告書区分
総括
研究課題名
安全な血液製剤の安定供給に資する適切な採血事業体制の構築のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KC2007
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
大隈 和(関西医科大学 医学部微生物学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 照英(日本薬科大学 薬学部)
  • 田野崎 隆二(慶應義塾大学医学部 輸血・細胞療法センター)
  • 岡田 義昭(埼玉医科大学 医学部)
  • 八橋 弘(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 朝比奈 靖浩(東京科学大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
5,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤は、ヒトより採取された血液を原料として製造されているため、有限かつ貴重であるとともに、血液を介して病原体を伝播させるリスクも有している。また、インバウンド/アウトバウンドの増加により、現在は主に海外で流行が見られる血液媒介性感染症の病原体が血液製剤に混入するリスクの高まりが懸念されていることから、安全性確保をなお一層図る必要がある。そこで本年度は、昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症への対策を含む、採血事業に関する基準等について最新の知見・状況を踏まえ検討を行った。
研究方法
本邦において、新型コロナウイルスワクチンとして新たに承認されたMeiji Seikaファルマ社製の自己増殖型mRNAワクチン(レプリコンワクチン)の採血制限等について対応方針を定める必要があったため班会議を開催した。変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)に関する採血制限について、近年海外においてこれまでの知見やリスク評価に基づき採血制限の撤廃や緩和が進んでいることを受け、昨年度に引き続き、わが国における見直しについて班会議において検討した。男性間性交渉者(MSM)に関する採血制限については、海外では個別リスク行為による後天性免疫不全ウイルス(HIV)感染リスクが評価され、各国ではこの結果に基づき、近年献血受入基準の変更がなされたことを受け、昨年度に引き続き班会議で検討した。輸血歴のある場合の献血制限について、輸血感染しうるウイルス等のリスクが判明していることや、感染症に対する検査精度も上がっており、輸血の安全性は高まっていることから、昨年度に引き続き検討を行った。原告・弁護団から、特措法の対象外である製剤の投与歴があるC型肝炎2症例に関して調査が求められたため、昨年度に引き続き検討を行った。
結果と考察
以下の課題について検討し意見を取りまとめた。1. Meiji Seikaファルマ社製のレプリコンワクチン(コスタイベ筋注)接種者の採血制限について、審査報告書のデータから、他のmRNAワクチンと同様に、採血制限の期間を「接種後48時間」とすることで問題ない。2. vCJDに関する採血制限について、米国食品医薬品局とオーストラリア保健省薬品・医薬品行政局が行った数理モデルを用いた輸血によるvCJD感染リスク解析の評価を実施した。しかし、日本独自の数理モデルを用いた日本のリスク解析が必要であると考えられたため、「日本人英国渡航歴者の献血からのvCJD感染リスクに関する推計」を実施したところ、今後、時間の経過とともにvCJDの感染リスクが軽減していくことも併せて考えると、今後、英国滞在者の供血制限を解除しても、これによってvCJD患者が増加することはないと判断してよいと考えられた。3. MSMに関する採血制限について、英国等で個別リスク行為によるHIV感染リスクが評価された。その結果、新しい、もしくは複数のパートナーとのアナルセックスは感染リスクが高いことが分かった。そこで、検討事項として、新たなもしくは複数のパートナーとの性的接触、アナルセックスの有無を問診項目に明記することにより、それらがリスク行為であることの認識を促す、等があげられた。4. 輸血歴による採血制限について、新たな検査項目や高感度検査の導入も進んでいるため、輸血後、一定の献血延期期間を設ければ、献血を受け入れることは可能ではないか、等の意見が出された。以上から、海外で輸血歴がある場合は従来通り献血不可とし、国内でのみ輸血歴がある場合はWHOの方針に沿って1年間不可とする。5. 非特定血液凝固因子製剤投与に係るC型肝炎症例の検討について、原告団・弁護団から厚生労働省に提出された資料に基づき検討を行った。2症例ともに、当該製剤にC型肝炎ウイルス(HCV)が混入していた可能性を評価することは困難であり、企業からの追加資料や情報からも、当該製剤におけるHCVの混入あるいは不活化の有無を明確に判断することはできなかった。加えて、同一のロットの投与による肝障害の副反応報告の存在も、調査した範囲では確認されなかった。また2症例とも、製剤投与前及びHCV陽性が判明するまでの間に受けた他の医療行為による感染の可能性を排除できる情報がないこと等から、当該製剤の投与との因果関係を評価することは困難であった。
結論
新たに承認された新型コロナウイルスのワクチン接種者の採血制限については、厚生労働省血液事業部会安全技術調査会で説明や提言を行った。また、vCJD、MSM、輸血歴に係る採血制限については見直しに向けた検討を行い、研究班内で一定の結論が得られた。非特定血液凝固因子製剤投与に係るC型肝炎症例の検討についても議論したが、得られた資料から当該製剤の投与とHCV感染との因果関係及び関連性を示す情報は得られなかった。

公開日・更新日

公開日
2025-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-06-30
更新日
-

文献情報

文献番号
202424020B
報告書区分
総合
研究課題名
安全な血液製剤の安定供給に資する適切な採血事業体制の構築のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KC2007
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
大隈 和(関西医科大学 医学部微生物学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 照英(日本薬科大学 薬学部)
  • 田野崎 隆二(慶應義塾大学医学部 輸血・細胞療法センター)
  • 岡田 義昭(埼玉医科大学 医学部)
  • 八橋 弘(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 朝比奈 靖浩(東京科学大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、血液製剤の安定供給、安全性の向上、献血者の保護という大原則のもと、血液製剤等に係る遡及調査ガイドラインの見直しや、様々な感染症の採血事業への影響を評価し、適切な採血事業体制の構築を目指した。
研究方法
以下の事項について班会議を開催し、国内外の最新の知見や動向、関連資料などをもとに検討した。1. 「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」の一部改正(案)について2. 新たに承認されたSARS-CoV-2ワクチンの接種者の採血制限について3. エムポックスに係る安全対策について4. COVID-19の5類感染症移行に伴う新型コロナウイルス既感染者の採血制限の見直しについて5. 献血の採血基準の見直しについて6. vCJDに関する採血制限について7. MSMに関する採血制限について8. 輸血歴による採血制限について9. 非特定血液凝固因子製剤投与に係るC型肝炎症例について
結果と考察
以下の課題について検討し意見を取りまとめた。1. 「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」の一部改正(案)について、HBV、HCV及びHIVに関して、NAT陽性となった供(献)血者から過去に採血されたNAT陰性の血漿の取扱いについて、また、HEVに係る遡及調査及びHEV-NAT陽性となった供(献)血者から過去に採血されたHEV-NAT陰性の血液の取扱いについて検討した。2. 新たに承認されたSARS-CoV-2ワクチンの接種者の採血制限について、武田社製の組換えタンパク質ワクチン(ヌバキソビッド筋注)については、採血制限の期間を接種後24時間、ヤンセンファーマ社製のウイルスベクターワクチン(ジェコビデン筋注)については接種後6週間、Meiji Seikaファルマ社製のレプリコンワクチン(コスタイベ筋注)については接種後48時間とした。3. エムポックスに係る安全対策について、当面エムポックス既感染者からは採血を行わないこと、患者等との接触者については最終接触日から21日間は採血を行わないこと、必要応じて遡及調査を行うこと等とした。4. COVID-19の5類感染症移行に伴うCOVID-19罹患者の採血制限について、症状軽快(無症候の場合は陽性となった検査の検体採取日)から2週間に変更することとした。5. 献血の採血基準の見直しについて、国外における有害事象や国内の血液製剤との基準の違い、国内で採血量を増量した場合のハード面・ソフト面における課題等が指摘された。6. vCJDに関する採血制限について、日本独自の数理モデルを用いた「日本人英国渡航歴者の献血からのvCJD感染リスクに関する推計」を実施したところ、英国滞在歴も含めて、vCJDに関する献血制限を国内では撤廃する方向で総意が得られた。7. MSMに関する採血制限について、英国等では、個別リスク行為によるHIV感染リスクが評価された。これらを検討した結果、HIVの関連問診の必要箇所を修正することで総意は得られた。8. 輸血歴による採血制限について、マラリアやシャーガス病に関する対策は済んでおり、CJDについては日本国内のvCJDのリスクは非常に低いため、海外で輸血歴がある場合は従来通り献血不可とし、国内でのみ輸血歴がある場合はWHOの方針に沿って1年間不可とすることとした。9. 非特定血液凝固因子製剤投与に係るC型肝炎症例の検討について、2症例について原告・弁護団から調査が求められた。2症例ともに、原告・弁護団から提出された資料からは、当該製剤にHCVが混入していた可能性を評価することは困難であり、企業からの追加資料や情報からも、当該製剤におけるHCVの混入あるいは不活化の有無を明確に判断することはできなかった。加えて、同一のロットの投与による肝障害の副反応報告の存在も、調査した範囲では確認されず、当該製剤投与とHCV感染との関連を支持するような結果は得られなかった。また2症例とも、製剤投与前及びHCV陽性が判明するまでの間に受けた他の医療行為による感染の可能性を排除できる情報がないこと等から、当該製剤の投与との因果関係を評価することは困難であった。
結論
COVID-19に関連する採血制限について、感染症の流行状況やワクチン接種に伴う副反応発生状況を確認し検討を行った。また、血液製剤等に係る遡及調査ガイドラインの一部改正やエムポックスに関する採血制限についても検討を行った。これらの血液製剤の安全性の向上及び安定供給に寄与する検討内容を厚生労働省血液事業部会安全技術調査会において提言した。また、vCJD、MSM、輸血歴に係る採血制限についても見直した。非特定血液凝固因子製剤投与に係るC型肝炎症例についても精査・議論したが、得られた資料から当該製剤の投与とHCV感染との因果関係及び関連性を示す情報は得られなかった。

公開日・更新日

公開日
2025-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-06-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202424020C

収支報告書

文献番号
202424020Z