文献情報
文献番号
202424018A
報告書区分
総括
研究課題名
課徴金制度の導入等の医薬品等の広告規制の変化を踏まえた実態調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KC2004
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 伸一(帝京平成大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
- 山浦 克典(慶應義塾大学 薬学部)
- 野村 香織(福島県立医科大学 先端臨床研究センター)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
2,493,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
厚生労働省は、平成30年9月、「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」を策定し、平成31年4月から適用された。
ガイドラインの施行により、製薬企業等が提供しづらくなった情報、医療関係者が入手しにくくなった情報等を調査し、それらのうち、真に情報提供が必要と考えられる情報について、ガイドライン策定の目的を損なうことなく、円滑に医療関係者に提供される条件を検討するため、患者の薬物治療に必要な情報が医療関係者に提供される環境を整備するための研究を行う。
本研究は3年計画であり、2年目の昨年度までに、販売情報提供GLを適切に運用する上での課題を明らかにした。これらの結果も踏まえ、厚生労働省から、主として他社との比較情報の提供に関するガイドラインのQ&Aである「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインに関するQ&Aについて(その4)」(令和6年2月21日厚生労働省医薬局監視指導課事務連絡)が発出された。
最終年度の3年目である本年度は、製薬企業を対象にQA4発出から約半年が経過した時点でアンケート調査を実施し、QA4発出後の情報提供及び社内規定改定の方針を明らかにする。さらに、診療所医師を対象にインタビューを行い、医療用医薬品の情報入手に対する影響等を明らかにする。
ガイドラインの施行により、製薬企業等が提供しづらくなった情報、医療関係者が入手しにくくなった情報等を調査し、それらのうち、真に情報提供が必要と考えられる情報について、ガイドライン策定の目的を損なうことなく、円滑に医療関係者に提供される条件を検討するため、患者の薬物治療に必要な情報が医療関係者に提供される環境を整備するための研究を行う。
本研究は3年計画であり、2年目の昨年度までに、販売情報提供GLを適切に運用する上での課題を明らかにした。これらの結果も踏まえ、厚生労働省から、主として他社との比較情報の提供に関するガイドラインのQ&Aである「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインに関するQ&Aについて(その4)」(令和6年2月21日厚生労働省医薬局監視指導課事務連絡)が発出された。
最終年度の3年目である本年度は、製薬企業を対象にQA4発出から約半年が経過した時点でアンケート調査を実施し、QA4発出後の情報提供及び社内規定改定の方針を明らかにする。さらに、診療所医師を対象にインタビューを行い、医療用医薬品の情報入手に対する影響等を明らかにする。
研究方法
1 医療用医薬品の販売情報提供活動ガイドラインに関するQ&A発出後の製薬企業の対応方針
研究分担者(山浦克典・慶應義塾大学薬学部教授)が調査票の電子ファイルを日本製薬工業協会事務局に送付し、日本製薬工業協会が団体独自のWeb調査システムによる回答画面を作成して、加盟企業が Web により回答する方式で無記名自記式質問紙調査を実施し、製薬協事務局が企業名の記載されていない回答データを研究分担者に送付した。調査期間は、2024年8月1日から2024年8月30日とした。
2 「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」施行後の医薬品情報入手に関する医師の意識調査のためのフォーカス・グループ・インタビューを用いた質的研究
診療所医師6人を対象に、フォーカス・グループ・インタビューの手法を用いてインタビューを行った。インタビューのモデレーターを研究代表者(渡邊伸一・帝京平成大学薬学部教授)、観察者を研究分担者者(野村香織・福島県立医科大学先端臨床研究センター准教授)が務めた。
研究分担者(山浦克典・慶應義塾大学薬学部教授)が調査票の電子ファイルを日本製薬工業協会事務局に送付し、日本製薬工業協会が団体独自のWeb調査システムによる回答画面を作成して、加盟企業が Web により回答する方式で無記名自記式質問紙調査を実施し、製薬協事務局が企業名の記載されていない回答データを研究分担者に送付した。調査期間は、2024年8月1日から2024年8月30日とした。
2 「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」施行後の医薬品情報入手に関する医師の意識調査のためのフォーカス・グループ・インタビューを用いた質的研究
診療所医師6人を対象に、フォーカス・グループ・インタビューの手法を用いてインタビューを行った。インタビューのモデレーターを研究代表者(渡邊伸一・帝京平成大学薬学部教授)、観察者を研究分担者者(野村香織・福島県立医科大学先端臨床研究センター准教授)が務めた。
結果と考察
製薬企業を対象とした調査の結果、QA4発出から約半年が経過した2024年8月時点で、過半数の企業(70社中37社、53%)が社内規定改定に着手していることがわかった。社内規定の改定項目は主に比較情報の提供、未承認適応外使用情報の提供及び情報提供の切り分けに関する内容であった。MRによる未承認適応外使用情報の提供を禁止している企業は約半数(70社中36社、51%)であり、MSL数が多い企業ほど、MRによる情報提供を禁止している傾向が確認された。企業のMR数と社内規定の改定方針とを比較した結果、MR数が多い企業ほど、積極的に社内規定の改定を進めている傾向が見られた。
診療所医師を対象としたインタビュー調査の結果、販売情報提供活動ガイドラインが適用されて以降、製薬企業が主催又は共催する講演会等において、比較情報や適応外使用に関する発現が制限され、これらの情報収集が困難になっている状況が確認された。一方、医師会が主催する研修会では適応外使用も含め、参加者が収集したい情報を入手できていることも確認された。財源や運営面での制約があるものの、行政から医師会が委託を受ける形での講演会・講習会、医師会が主催する研修会等、医師同士の自由な議論の場をどのように確保するかが、医師等医療関係者において重要になってくると考えられる。
診療所医師を対象としたインタビュー調査の結果、販売情報提供活動ガイドラインが適用されて以降、製薬企業が主催又は共催する講演会等において、比較情報や適応外使用に関する発現が制限され、これらの情報収集が困難になっている状況が確認された。一方、医師会が主催する研修会では適応外使用も含め、参加者が収集したい情報を入手できていることも確認された。財源や運営面での制約があるものの、行政から医師会が委託を受ける形での講演会・講習会、医師会が主催する研修会等、医師同士の自由な議論の場をどのように確保するかが、医師等医療関係者において重要になってくると考えられる。
結論
厚生労働省が必要に応じてQ&Aを発出することは、企業の規定改定を促し、販売情報提供活動ガイドラインの適正な運用に寄与するだけでなく、医療機関に対する情報提供の質向上にもつながると考えられることから、今後も、製造販売業者による医療用医薬品の情報提供の状況を把握し、必要に応じ、販売情報提供活動ガイドラインの運用解釈等を示すことは重要であると考えられる。
さらに、製薬企業が主催・共催する講演会・研修会ではなく、行政から医師会が委託を受ける形での講演会・講習会、医師会が主催する研修会等、販売情報提供活動ガイドラインの影響を受けない医師同士の自由な議論の場をどのように確保するか、医師等医療関係者がその対応を検討することも、医療関係者が必要な情報を入手し、患者への適切な薬物治療を提供するための環境整備に重要であると考えられる。
さらに、製薬企業が主催・共催する講演会・研修会ではなく、行政から医師会が委託を受ける形での講演会・講習会、医師会が主催する研修会等、販売情報提供活動ガイドラインの影響を受けない医師同士の自由な議論の場をどのように確保するか、医師等医療関係者がその対応を検討することも、医療関係者が必要な情報を入手し、患者への適切な薬物治療を提供するための環境整備に重要であると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2025-05-30
更新日
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