医薬品等の安全性評価を目的とした新規発がん物質予測法の開発

文献情報

文献番号
201008012A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品等の安全性評価を目的とした新規発がん物質予測法の開発
課題番号
H21-生物資源・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 匡史(独立行政法人国立国際医療研究センター 研究所・感染症制御研究部・ヒト型動物開発研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 石坂 幸人(独立行政法人国立国際医療研究センター研究所 難治性疾患研究部)
  • 松田 潤一郎(独立行政法人医薬基盤研究所 難病・疾患資源研究部)
  • 津田 洋幸(名古屋市立大学 津田特任教授研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
発がん物質は変異原性を含む遺伝毒性の有無により、遺伝毒性発がん物質と非遺伝毒性発がん物質に大別される。近年、安全性試験の適性実施規範(GLP)規制のもと、国際的な発がん性試験実施基準に従って、種々の化学物質の発がん性が検討された結果、試験での陽性結果が必ずしもヒトにおける発がん性を真に反映しているとは言えないことがわかってきた。本研究では“ゲノムの不安定化を誘発するLINE-1レトロトランスポジション(L1-RTP)の発がん過程におけるプロモーション効果”に着目した、新たな発想に基づく発がん物質予測法を開発する。
研究方法
 L1の内在性プロモーターである5’UTRの下流にORF1およびORF2、その下流にEGFPの発現ユニットが逆向きに挿入されている導入遺伝子を用いて、定法に従いトランスジェニックマウスを作製した。MEFを作製しX線への反応性を指標に、2系統を選抜した。これらのマウスを用いて、DMBA/TPA塗布による二段階発がんモデルおよびPhIP投与によるL1-RTP誘導能評価を行った。
結果と考察
DMBA/TPAによる二段階発癌実験では、解析した15個の腫瘍の内13個にL1-RTPの誘導を認めた。また培養細胞を用いた解析により腫瘍プロモーターであるTPAによってL1-RTPが誘導されることを認めた。一方、加熱食品中に存在する癌原物質の中でもヒト乳癌の発症誘因の候補化合物であるPhIPのピコモルレベルでの投与で、乳腺組織にL1-RTPを検出した。
結論
 L1-RTPトランスジェニックマウスは、レトロトランスポジションが誘発するエピジェネテイックな変化から恒常的なゲノム構造異常誘発過程の評価系でもあるため、発がん物質の評価だけでなく、これら化合物の発がん機序の解明に有用なツールと考えられる。すべての生物資源は、独立行政法人医薬基盤研究所実験動物研究資源バンクに保管しており、医薬品・食品の安全性評価に非常に有用なツールとして利用可能である。

公開日・更新日

公開日
2011-07-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201008012Z