薬局薬剤師の対人業務の質評価指標の開発

文献情報

文献番号
202424014A
報告書区分
総括
研究課題名
薬局薬剤師の対人業務の質評価指標の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KC1007
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
田口 真穂(白木 真穂)(横浜薬科大学 レギュラトリーサイエンス研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 藤田 健二(横浜薬科大学 薬学部)
  • 佐藤 周子(横浜薬科大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,428,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医薬品の適正使用を推進するためには、薬学的見地から処方内容や病状変化を評価できる薬局薬剤師の関与は重要である。しかし、対人業務の質には薬局や薬剤師ごとに差があることが知られており、これが患者アウトカムや治療効果に影響を与える可能性がある。そのため、ケアの質評価指標であるQuality Indicator(以下QI)を用いて薬剤師業務の質を可視化する取り組みが世界各国で進んでいる。
本研究の目的は下記の3点である。
1)薬局薬剤師の対人業務の質の実態把握および対人業務の質とアウトカムとの関係性の評価
2)諸外国における薬局の対人業務の質を評価するための指標の開発・運用状況の把握
3)上記を踏まえた日本の薬局薬剤師の対人業務の質を評価するためのQIの開発
2年間で7項目のプロジェクトを計画しており、本報告では、令和6年度に実施した4項目について、その研究方法と結果を報告する。
研究方法
① 薬局薬剤師が発見・対応した医薬品関連問題(DRP)の特定
日本医療機能評価機構の「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」から、疑義照会・情報提供に関する事例(2020年3月から2024年1月)を対象とした。「高齢者の医薬品適正使用の指針」や「薬局における疾患別対応マニュアル」から抽出した推奨内容に基づいて定義書を作成した。自然言語処理後ブール検索により内容別報告数を概算後、精度補正を行い報告件数を推定した。
② 医薬品関連問題の分類表の妥当性および信頼性の評価
PCNE Classification for Drug-Related Problems V9.1と文献レビューに基づき、日本版DRP分類表を作成し、10名の薬剤師による修正デルファイ法からその内容妥当性を評価した。項目レベル内容妥当性指数(I-CVI)とスケールレベル内容妥当性指数(Ave-CVI)を計算し、I-CVI ≥ 0.8、Ave-CVI ≥ 0.9を優れた妥当性の基準とした。内容妥当性を担保した後、Fleissのカッパ係数(κ)を用いて評価者間信頼性を評価した。
③ 海外の薬局版QIの把握
オランダ薬剤師会への訪問調査と、QIワークショップ(スイス、オーストリア)への参加を通じて、各国のQI開発・運用状況について情報を収集。関係者への聞き取りやアンケートを実施した。
④ QI候補の開発
既存のQIや厚生労働省発出の「薬局における疾患別対応マニュアル」および「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き」に基づき、薬剤師業務の推奨内容を抽出。60項目のQI候補を新たに作成し、今後の運用試験に向けた準備を整えた。
結果と考察
① 薬局薬剤師が発見・対応した医薬品関連問題(DRP)の特定
疑義照会等に関する報告件数は395,001件で、定義書を作成した評価項目は「高齢者の医薬品適正使用の指針」から90項目、「疾患別対応マニュアル」から31項目で、報告件数の多い事例を優先的に分析し、臨床現場で多く発見されているDRPの対応実態を特定。これらの事例を②DRP分類表開発の基礎資料とした。
② 医薬品関連問題の分類表の妥当性および信頼性の評価
最終的な分類表は、原因・介入・受諾・結果の4カテゴリと52のサブカテゴリで構成された。Fleissのカッパ係数は、各カテゴリにおいて0.82~0.97と高水準であり、分類表の妥当性と信頼性が確認された。
③ 海外の薬局版QIの把握
オランダでは国家レベルでQIを運用しており、他国では開発段階にあるものの、継続運用には至っていない例が多かった。オーストリアのワークショップでは、日本のQI候補と欧州の糖尿病関連QIを統合し、今後の日本での運用試験に活用する方向性が合意された。
④ QI候補の開発
既存のQIの130項目と比較検討のうえ、薬局業務の特性を反映した60のQI候補を開発。分子・分母構造により標準化し、プロセス指標に加えアウトカム指標の開発も検討した。次年度は開発したQI候補の妥当性および信頼性の評価を行う。
結論
以上の結果により、薬局薬剤師の対人業務の質を定量的に把握し、標準化するための基盤が整いつつあることが示された。次年度は、QIの開発を進め、完成したQIを用いた複数薬局での運用試験を予定している。

公開日・更新日

公開日
2025-08-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-08-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
202424014Z