地域共生社会における調剤業務の効率化に係る方策の有用性・安全性の評価・検討のための研究

文献情報

文献番号
202424012A
報告書区分
総括
研究課題名
地域共生社会における調剤業務の効率化に係る方策の有用性・安全性の評価・検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KC1005
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
入江 徹美(国立大学法人 熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 武田 香陽子(北海道科学大学 薬学部薬学科薬学教育学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,430,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生労働省は令和4年7月、「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループのとりまとめ」を公表し、調剤業務の一部外部委託、処方単位で個包装された薬剤を薬剤師が開封せず患者に交付する調剤方法(いわゆる「箱出し調剤」)、調剤機器の導入、さらには薬剤師以外の調剤補助者・支援者の活用等、対物業務の効率化に向けた方針を示した。
箱出し調剤が実現すれば、調剤業務の一貫した自動化が飛躍的に進展し、薬剤師以外の調剤補助者・支援者による業務分担が拡大することで、薬剤師の対物業務が効率化され、対人業務に充てる時間の確保が期待される。
本研究では、「箱出し調剤を実現するには、薬剤の効能・効果を踏まえた個包装サイズの標準化が不可欠である」との仮説のもと、製剤設計および医薬品包装学的な観点から調査研究を行う。令和6年度は、箱出し調剤に関する国内外の文献・資料を精査し、有用性が認識されながら普及が進まない要因を抽出し、ボトルネックを明確化する。令和7年度は、それらのボトルネックを解消するための根本的な解決策を策定する。
なお、箱出し調剤の導入に際しては、各ステークホルダーにとってメリット・デメリットのトレードオフが生じると想定される。そこで、アンケート調査や公開シンポジウム等を通じて、本研究の内容を広く社会に発信し、多様な意見を取り入れた上で施策等に反映させることで、地域住民に対する安全かつ安心な医療の提供に貢献することを目的とする。
研究方法
本研究では、以下の取り組みを実施した:
1. 箱出し調剤に関する国内外の公開情報を収集・分析し、各ステークホルダーにとってのメリットとデメリットおよび課題を整理した。
2. 箱出し調剤に関わる全国規模のWEBアンケート原案およびステークホルダーへのヒアリング案を作成した。
3. 偽造医薬品流通防止の観点から、箱出し調剤に関する懸念事項について、専門家から意見を聴取した。
4. 薬局や医療機関に勤務する薬剤師および調剤補助者・支援者を対象に、薬剤師以外の調剤補助者・支援者の業務および教育に関するWEBアンケート調査を実施した。
5. 日本薬学会145年会(福岡)において、「薬局・薬剤師の調剤業務の充実 ~薬剤調製の効率化・高精度化に向けた取り組み~」と題したシンポジウムを開催し、関係者との意見交換を行なった。
結果と考察
本研究班では、箱出し調剤に関する国内外の文献・情報を精査し、特に欧州における導入の背景や経緯、利点・欠点について整理を行った。箱出し調剤の有用性は徐々に認識されつつあり、導入に向けた複数の試みがある一方で、現時点ではまだ普及には至っていない。
一方、医療現場のニーズに応じて、新型コロナウイルス感染症治療薬等の一部の薬剤では、処方単位で包装された製剤が近年上市されている。また、薬局には高性能な調製設備や機器類が導入されており、調剤業務の自動化は飛躍的に進展している。さらに、薬剤師以外の調剤補助者・支援者による業務範囲も拡大しており、医療提供体制は急速に変化している。
また、医薬品流通における供給不足、デッドストックの発生、廃棄に伴う損失、そして患者の多様なニーズの顕在化といった課題を背景に、箱出し調剤の導入の可能性について、改めて検討する意義が高まっている。
偽造医薬品流通防止の観点から箱出し調剤に関して専門家の意見を伺ったところ、「包装上の工夫や識別システムなどの技術的対策は補助的な手段に過ぎず、過信は禁物である」、「最も重要なのは健全な医療および医薬品流通の社会を維持すること」との助言を得た。
薬剤師以外の調剤補助者・支援者の業務分担については、Webアンケート調査により、多くの現場で薬剤師以外の調剤補助者・支援者が調剤補助・支援業務に従事している一方、教育の頻度や教材の整備は不十分であることが明らかとなった。今後は、薬剤師以外の調剤補助者・支援者が調剤補助・支援業務に積極的に関与するためには、一定の教育体制の構築が必要であると考えられる。
日本薬学会第145年会(福岡)におけるシンポジウム「薬局・薬剤師の調剤業務の充実 ~薬剤調製の効率化・高精度化に向けた取り組み~」では、薬局、製薬企業、調製設備・機器類の供給企業など様々な立場から意見を聴取し、薬剤師以外の調剤補助者・支援者による調剤補助・支援業務の現状を踏まえた上で、薬局・薬剤師の調剤業務の高度化に向けた今後の展望について議論を深めた。
結論
薬局・薬剤師の対物業務の効率化策について、これまで有用と認識されながら普及しない要因や背景を明らかにした。本研究で得られる成果は、地域医療連携システムの構築に資するとともに、今後の医療行政施策の形成過程における参考資料となることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-08-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-08-08
更新日
-

収支報告書

文献番号
202424012Z