文献情報
文献番号
202424010A
報告書区分
総括
研究課題名
新興・再興感染症流行時の血液製剤の安全性確保のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KC1003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
水上 拓郎(国立感染症研究所 次世代生物学的製剤研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 岡田 義昭(埼玉医科大学 医学部)
- 相内 章(国立感染症研究所 感染病理部)
- 堀場 千尋(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
- 林 昌宏(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所ウイルス第1部第2室)
- 小林 大介(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
- 黒田 雄大(国立感染症研究所 獣医科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,238,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
血液製剤におけるHIV, HCV, HBV等の既知のウイルス安全性に関しては,日本赤十字社による献血血液にスクリーニング、血漿分画メーカーにおける製造工程中における病原体の除去・不活化処理の導入により,高い安全性が確保されている。しかし血液製剤はヒトの血液を原材料としているため,未知の病原体の混入リスクがある。
研究方法
そこで本研究課題では,国立健康危機管理研究機構(JIHS) 国立感染症研究所(NIID)と日本赤十字社で協力体制を構築し,①定期的な情報収集・リスク評価体制を構築するとともに,②献血血液における次世代シークエンス解析技術(NGS)を用いた病原体検出法を開発する。またMpoxをモデルに③血液中の中和抗体価測定系の改良と評価を行うとともに,④血中動態・血液製剤の製造工程中での不活化評価による迅速リスク評価法を確立する。さらに,新興・再興感染症対策として⑤蚊等媒介性ウイルスの検査系の開発及び⑥発生状況を調査する体制を構築するとともに⑦哺乳類における動物由来感染症発生状況や⑧HBV等の培養が困難なウイルスの高感度in vitro不活化評価系の開発を行う。
結果と考察
① 情報収集・リスク評価:
2024年度はSARS-CoV-2が5類感染症に移行した中で, 様々な感染症が流行した。特に, 海外でのデングやジカ熱の発生状況は, 輸血による感染リスクがあるので, 懸念されるところである。また, インフルエンザ対策等を鑑みると, 本研究分担で進められている動物での実態調査を行い, 適宜リスク評価することが望ましいと考えられる。またオロプーシェウイルスのような新興のウイルスも注視が必要である。
② NGS解析:
NGSを用いた血液からの細菌検出法では血液培養法で培養される細菌を検出できない場合があることが示唆された。原因とする細菌以外の微生物ゲノム検出が、原因菌をマスクする可能性があり、その対策として実験室内で設定したネガティブコントロールからのコンタミネーション減算法が開発された。今後、このプログラムが病原体検出に有用であるか検証が必要であると考える。
③中和抗体測定系の開発:
FRNTに使用する細胞の検討と血清-ウイルス混合液を細胞に添加してからの培養時間を検討することで、1回のアッセイで中和抗体価の値をつけることが可能になった。
④血中動態評価系:
血中動態に基づく迅速リスク評価法の開発に関しては, モデルウイルスとしてワクチニアウイルス(LC16m8株)を用い, 定量的評価のためのリアルタイムPCRを用いた核酸検査法の確立及びウイルス力価測定法を確立し, 日本赤十字社より供与された全血を用いて予備実験を2回実施し, 得られたデータの解析を進めている。
⑤ 蚊等媒介性ウイルス:
遺伝子検査に必要な陽性対照を提供することで、正確な検査結果が得られるようになった。献血血からのオロプーシェウイルスの検出例は報告されていないが、今後もその動向を注視する必要がある。
⑥蚊等媒介性ウイルス発生状況調査体制:
上述の牛舎に設置したトラップでサシチョウバエの一種の雌成虫も捕集された。各種蚊由来培養細胞を用いたウイルスの増殖動態解析を実施した結果、FUKVは実験に用いた4属5種の蚊に由来する8種類の培養細胞の全てにおいて、感染・増殖性が確認された
⑦哺乳類における動物由来感染症発生状況:
IAVに対する抗体が検出されたのはアライグマのみであり、他の野生動物種(イノシシ、シカ、タヌキ、ハクビシン、アナグマ)では陽性例は確認されなかった。本研究では、H5およびH7亜型由来のHAおよびNAを外套させたVSVシュードウイルスの作製に成功し、細胞侵入性の検出が可能であることをルシフェラーゼアッセイにより確認した。
⑧HBV:
4℃において溶媒に依らず長期間感染性を維持していることが明らかになった。また5回の凍結融解は感染性に影響がないことが証明できた。
2024年度はSARS-CoV-2が5類感染症に移行した中で, 様々な感染症が流行した。特に, 海外でのデングやジカ熱の発生状況は, 輸血による感染リスクがあるので, 懸念されるところである。また, インフルエンザ対策等を鑑みると, 本研究分担で進められている動物での実態調査を行い, 適宜リスク評価することが望ましいと考えられる。またオロプーシェウイルスのような新興のウイルスも注視が必要である。
② NGS解析:
NGSを用いた血液からの細菌検出法では血液培養法で培養される細菌を検出できない場合があることが示唆された。原因とする細菌以外の微生物ゲノム検出が、原因菌をマスクする可能性があり、その対策として実験室内で設定したネガティブコントロールからのコンタミネーション減算法が開発された。今後、このプログラムが病原体検出に有用であるか検証が必要であると考える。
③中和抗体測定系の開発:
FRNTに使用する細胞の検討と血清-ウイルス混合液を細胞に添加してからの培養時間を検討することで、1回のアッセイで中和抗体価の値をつけることが可能になった。
④血中動態評価系:
血中動態に基づく迅速リスク評価法の開発に関しては, モデルウイルスとしてワクチニアウイルス(LC16m8株)を用い, 定量的評価のためのリアルタイムPCRを用いた核酸検査法の確立及びウイルス力価測定法を確立し, 日本赤十字社より供与された全血を用いて予備実験を2回実施し, 得られたデータの解析を進めている。
⑤ 蚊等媒介性ウイルス:
遺伝子検査に必要な陽性対照を提供することで、正確な検査結果が得られるようになった。献血血からのオロプーシェウイルスの検出例は報告されていないが、今後もその動向を注視する必要がある。
⑥蚊等媒介性ウイルス発生状況調査体制:
上述の牛舎に設置したトラップでサシチョウバエの一種の雌成虫も捕集された。各種蚊由来培養細胞を用いたウイルスの増殖動態解析を実施した結果、FUKVは実験に用いた4属5種の蚊に由来する8種類の培養細胞の全てにおいて、感染・増殖性が確認された
⑦哺乳類における動物由来感染症発生状況:
IAVに対する抗体が検出されたのはアライグマのみであり、他の野生動物種(イノシシ、シカ、タヌキ、ハクビシン、アナグマ)では陽性例は確認されなかった。本研究では、H5およびH7亜型由来のHAおよびNAを外套させたVSVシュードウイルスの作製に成功し、細胞侵入性の検出が可能であることをルシフェラーゼアッセイにより確認した。
⑧HBV:
4℃において溶媒に依らず長期間感染性を維持していることが明らかになった。また5回の凍結融解は感染性に影響がないことが証明できた。
結論
国立健康危機管理研究機構(JIHS) 国立感染症研究所(NIID)と日本赤十字社で協力体制を構築した。①定期的な情報収集・リスク評価体制を構築し,②献血血液におけるNGSを用いた病原体検出法の開発を進めた。またMpoxをモデルに③血液中の中和抗体価測定系の改良と評価を行うとともに,④血中動態評価法の開発、⑤蚊媒介性ウイルスのウイルス学的解析、⑥蚊のウイルス保有実態調査、⑦野生動物血清を用いた抗体スクリーニング法およびHA亜型の診断系の確立をし、⑧B型肝炎ウイルス等培養が困難なウイルスの培養法の改良と不活化法の評価を行った。
公開日・更新日
公開日
2025-07-28
更新日
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