危険ドラッグ等の乱用薬物に関する最新の分析情報の収集及び危害影響予測のための研究

文献情報

文献番号
202424009A
報告書区分
総括
研究課題名
危険ドラッグ等の乱用薬物に関する最新の分析情報の収集及び危害影響予測のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KC1002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
花尻 瑠理(木倉 瑠理)(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 理恵(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 齊藤 公亮(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
  • 辻 厳一郎(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
  • 石井 祐次(九州大学 大学院薬学研究院)
  • 富山 健一(国立精神神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
7,807,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
指定薬物制度に対応し,具体的な化合物や植物を指定薬物として指定する際に考えられる問題点を科学的に解決し,規制化に必要な評価手法及び科学的データを監視指導・麻薬行政に提供することを目的とする.
研究方法
新規流通危険ドラッグについて,国連等の国際公的機関が発信する海外薬物情報を広く収集すると共に,問題となりうる製品を入手し,新規流通化合物の構造決定及び分析用標品の準備,各種分析データの整備,識別法等を検討した.また,∆8-THC及び∆9-THCのアシル化体の代謝活性化を検討した.さらに,危険ドラッグの中枢神経系への影響を検討するために,in vitro及びin vivoの新規評価法を検討すると共に,危険ドラッグのマウス脳メタボロームに及ぼす影響を解析した.
結果と考察
令和6年度に入手した危険ドラッグ製品から3種類の新規流通化合物を検出・同定した.また,シート状危険ドラッグ2製品から,新規LSD類縁体の1S-LSD,1T-AL-LADを同定した.さらに,1S-LSDを標榜するシート状危険ドラッグ5製品を分析し,シート表面上の図柄などは異なるが,すべての製品が1S-LSDを含有し,1製品は1S-LSDのイソ体を含有すること,類似の図柄の製品は同じ分子量の未知低分子化合物を含有することを明らかにした.大麻の代替品として流通するTHCアナログの還元体HHC,HHCH,HHCPの9(R)-体及び9(S)-体について,GC-MS及びLC-MSを用いて分離分析法を開発した.また,LC-MSを用いて,HHC,HHCHもしくはHHCP含有製品中の各9(R)-及び9(S)-エピマーの含有比率を検討し,製品プロファイルを行った.さらに,キラルカラムを用いたSFC-Q-TOF MSによるキラル分析を行い,エナンチオマーの存在についても検討して,含有化合物の立体構造,原料合成物質,合成方法について考察した.3-Chlorophenmetrazine (3-CPM)(指定薬物)と位置異性体2-CPM及び4-CPM(未規制)の識別法を確立するために,まずは2-CPM及び4-CPMのトランス体を合成した.∆8-THC及び∆9-THCのアセチル化体,プロピオニル化体,ブチリル化体の合成を行い,標準品として確保した.また,毒性が強いケテン体の,加熱反応による生成の実験系構築のためのモデル化合物の合成を行った.∆8-THCV(C3),∆8-THCH(C6),9(S)-HHCP(C7),9(R)-HHCP(C7)及び∆8-THCjd(C8)のアセチル化体について,ヒト肝ミクロゾームで代謝を検討した結果,カルボキシエステラーゼで酵素化学的加水分解を受け,∆8-THCV,∆8-THCH,9(S)-HHCP,9(R)-HHCP及び∆8-THCjdを生成した.また,その生成は,3位のアルキル側鎖の長さが短い方が早かった.∆8-THC及び∆9-THCのプロピオニル化体も,同様に酵素化学的加水分解を受けて,麻薬である∆8-THC及び∆9-THCを生成することから,これら化合物は,プロドラッグとして流通している可能性が考えられた.
危険ドラッグの危害影響予測を行うために,新規活性評価法の検討を行った.大麻成分類似4化合物Δ9-THCOP,Δ8-THCOP,9(S)-HHCPM及び9(R)-HHCPM,新規オピオイド3化合物flunitazene,N-pyrrolidino protonitazene及びN-desethyl isotonitazeneの受容体作用並びに行動薬理学特性を検討した.その結果,大麻成分類似4化合物はいずれもCB1受容体作用活性を示した.また新規オピオイド3化合物は,いずれもオピオイドµ受容体作用(中枢作用)を示すことから,重大な健康被害発生の危険性が高いと考えられた.マウスにJWH-018及びCUMYL-PeGACLONEを投与し,経時的に海馬における2-AG濃度を検討した結果,2-AGレベル上昇は合成カンナビノイド乱用の一般的なバイオマーカーになりうることが示唆された.JWH-018とCUMYL-PeGACLONEについて,CB1受容体作用が同等と期待される用量で比較した結果,両者はマウスの自発運動抑制で類似の効果を示した.しかし,内因性カンナビノイド量および分解酵素mRNAレベルへの影響は異っていたことから,作用に差が現れる機構を明らかにする必要があると考えられた.
結論
指定薬物総数は令和7年4月末時点で2468となった.本研究成果の一部は,令和6年度に5回実施された指定薬物指定の根拠資料の一部として用いられた.また,分析データは,国立衛研違法ドラッグ閲覧システムに登録され公開された.本研究結果は危険ドラッグの規制化に有用な情報を提供し,国の監視指導行政に直接貢献するものである.

公開日・更新日

公開日
2025-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
202424009Z