急性冠症候群の疾患モデルウサギの開発及びバイオリソースの樹立

文献情報

文献番号
201008005A
報告書区分
総括
研究課題名
急性冠症候群の疾患モデルウサギの開発及びバイオリソースの樹立
課題番号
H20-生物資源・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
塩見 雅志(神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 範江林(山梨大学 大学院医学工学総合研究部)
  • 北嶋修司(佐賀大学 総合分析実験センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
9,443,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成22年度は、1)WHHLMIウサギへの冠動脈造影による冠動脈スパスム(CS)発生の確認、2)CSが発生したウサギにおける心機能の低下に関するデータを補強、3)CSの冠動脈病変に対する影響の検討、4)matrix metalloproteinase (MMP)-12 遺伝子組換え(Tg)WHHLMIウサギ(ホモ接合体)の増産とCS誘発実験、5)MMP-1-Tg-WHHLウサギへテロ接合体およびMMP-9-Tg-WHHLMIウサギヘテロ接合体の開発を実施する。
研究方法
1)WHHLMIウサギにCSを誘発し,造影剤を注入して血管の開存状況を確認。2)心エコー,血清心筋虚血マーカーの測定でCSの心機への影響を評価した。3)冠動脈病変の病理組織標本を作製し,CSの冠動脈病変への影響を評価した。4)ホルター心電計で心電図異常の持続時間を確認した。5)MMP-12-Tg-WHHLMIウサギを増産し,CS誘発実験を実施した.6)MMP-1-Tg,MMP-9-Tgウサギを開発した。7)MMP-12-Tg-WHHLMIウサギの動脈病変を評価した。8)開発したTg-ウサギを精子の凍結で保存した。
結果と考察
1)冠動脈造影によって,心電図でST低下等を示したウサギでCSの発生を確認した。2)CSが10分以上継続したウサギ(最長12時間)では,心エコーと血清マーカーの上昇で冠攣縮性狭心症の発症が示唆された。3)冠攣縮性狭心症を発症したウサギでは,冠動脈病変の破裂,冠動脈病変の内皮細胞の剥離と剥離部位からのマクロファージの噴出が観察されたこれらの所見はACSの発症を示唆している。4)MMP-12-Tg-WHHLMIウサギにおいても同様にCSを発症した。5)MMP-1-TgウサギとMMP-9-Tgウサギを開発し,MMP-9-TgウサギとWHHLMIウサギを交配してMMP-9-Tg-WHHLMIウサギへテロ接合体を開発した。6)MMP-12-Tg-WHHLMIウサギの大動脈病変では線維化が亢進していた。7) 開発したTgウサギから精子を採取して凍結保存した。
結論
本研究において、冠動脈に重度の動脈硬化を有するWHHLMIウサギはスパスムや心室性期外収縮の誘発によってACSの一つである不安定狭心症のモデル動物になることが確認された。また、CSや不安定狭心症の誘発によって、冠動脈病変に傷害を与えることができることが確認された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-25
更新日
-

文献情報

文献番号
201008005B
報告書区分
総合
研究課題名
急性冠症候群の疾患モデルウサギの開発及びバイオリソースの樹立
課題番号
H20-生物資源・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
塩見 雅志(神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 範江林(山梨大学 大学院医学工学総合研究部)
  • 北嶋修司(佐賀大学 総合分析実験センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
不安定化した動脈硬化病変に物理的な力が加わることが動脈硬化病変の破綻に重要であると考え、冠動脈病変が自然発症するWHHLMIウサギおよび動脈硬化の不安定化や破綻に関わるMatrix metalloproteinase (MMP)を過剰発現する遺伝子組換え(Tg)WHHLMIウサギ(ホモ接合体)に冠動脈スパスムを誘発し、急性冠症候群(ACS、急性心筋梗塞/不安定狭心症/心突然死の総称)の発症を試みた。
研究方法
1) WHHLMIウサギ(ホモ接合体)同士を自然交配した。2) WHHLMIウサギの冠動脈病変について、病理組織学的解析を実施した。3)スカベンジャー受容体のプロモーター配列を含むMMP-1 およびMMP-9の遺伝子コンストラクトを開発した。4) これらのコンストラクトを用いてMMP-Tg-WHHLMIウサギを開発した。5) 血管作動物質、昇圧剤などをWHHLMIおよびMMP-12-Tg-WHHLMIウサギに投与し、心電図と冠動脈造影で冠動脈スパスムを,心電図(ST低下,T波逆転,心室性期外収縮)、心エコー、血清心筋虚血マーカーで心筋の虚血変性を確認した。6) 冠動脈の病理組織標本を作製した。
結果と考察
1) WHHLMIウサギを491匹生産した。2) 冠動脈病変の解析では、10月齢から不安定冠動脈病変が認められ、加齢とともに不安定化が進行し、急性冠症候群の誘発には10月齢以上のWHHLMIウサギが適していると考えられた。3) 開発した遺伝子コンストラクトを用いてMMP-1およびMMP-9のTgウサギを開発した。4) WHHLMIウサギとの戻し交配でMMP-12-Tg-WHHLMIウサギ(ホモ接合体)を開発した。5) ノルエピネフリン、ドブタミン、アンギオテンシンの持続注入下にエルゴノビンを投与してWHHLMIおよびMMP-12-Tg-WHHLMIウサギで冠動脈スパスムが発生し、心エコーおよび血清心筋虚血マーカーの上昇で冠攣縮性狭心症の発症を確認した。6) 冠攣縮性狭心症を発症したウサギでは、冠動脈病変の破裂、内皮細胞の剥離とマクロファージの噴出が認められた。
結論
これらの結果は、冠動脈病変が発生している病態では冠動脈スパスムがACSの一因になることを示唆しており、WHHLMIおよびMMP-Tg-WHHLMIウサギはACSのモデル動物として有用であることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201008005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
WHHLMIウサギでは、冠動脈スパスム(CS)によって心電図上でST低下、T波逆転、心室性期外収縮、心筋虚血マーカーの上昇が発生し、冠動脈病変の破裂、内皮細胞の剥離と剥離部位からのマクロファージの流出が認められた。また、冠動脈病変の程度とCS発生との間に相関が認められた。これらの結果は、WHHLMIウサギが急性冠症候群のモデルとして有用であること、およびCSが重要な役割を果たしていることを示唆している。薬剤等の急性冠症候群発症予防効果の検討に活用できると期待できる。
臨床的観点からの成果
WHHLMIウサギに冠動脈スパスムを発生させることにより、冠攣縮性狭心症を発症したことから、本ウサギを使用して冠攣縮性スパスム、冠動脈スパスムの予防および治療法の開発が進展すると期待できる。
ガイドライン等の開発
該当せず
その他行政的観点からの成果
該当せず
その他のインパクト
日経メディカルオンライン版のトピックス(2012年8月8日)にて「冠スパズムがリピッドリッチ病変の破綻に関係-心筋梗塞を自然発症するWHHLMIウサギ用いた実験から」と題して本研究成果が掲載された。また、本研究成果について80th EAS Congress(2012年5月25-28日、ミラノ)にて”Best Poster Award”を、第61回日本実験動物学会総会(2014年5月15-17日、札幌)にて若手奨励賞を受賞した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
国際的な学術雑誌に掲載
その他論文(和文)
2件
総説
その他論文(英文等)
6件
国際的な学術雑誌等に掲載された総説等
学会発表(国内学会)
17件
第44回日本動脈硬化学会(2012年7月19-20日、福岡)で、シンポジウムの演題に選出、第61回日本実験動物学会(2014年5月15-17日、札幌)で若手奨励賞を受賞
学会発表(国際学会等)
15件
80th EAS Congress (ミラノ, 2012年5月25-28日) での発表が、Best Poster Awardを受賞
その他成果(特許の出願)
1件
急性心臓死ウサギモデル、およびその作製方法(特開22013-101525)
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
急性心臓死ウサギモデル、およびその作製方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2013-101525
発明者名: 範江林、塩見雅志、小池智也
権利者名: 国立大学法人山梨大学
出願年月日: 20130513
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shiomi M, Ishida T, Kobayashi T, et al.
Vasospasm of Atherosclerotic Coronary Arteries Precipitates Acute Ischemic Myocardial Damage in Myocardial Infarction-Prone Strain of the Watanabe Heritable Hyperlipidemic Rabbits.
Arterioscler Thromb Vasc Biol. , 33 (11) , 2518-2523  (2013)
10.1161/ATVBAHA.113.301303
原著論文2
Kobayashi K, Ito T, Yamada S, et al
Electrocardiograms Corresponding to the Development of Myocardial Infarction in Anesthetized WHHLMI Rabbits (Oryctolagus cuniculus), an Animal Model for Familial Hypercholesterolemia.
Comp Med , 62 (5) , 409-418  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201008005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,443,000円
(2)補助金確定額
9,443,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-17
更新日
-