野生鳥獣の食肉利用に関わるリスク分析に資する研究

文献情報

文献番号
202423027A
報告書区分
総括
研究課題名
野生鳥獣の食肉利用に関わるリスク分析に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KA1004
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
前田 健(国立感染症研究所 獣医科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 壁谷 英則(日本大学生物資源科学部)
  • 鈴木 康規(北里大学 獣医学部)
  • 入江 隆夫(宮崎大学 農学部 獣医学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
20,158,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班はこれまで研究成果の蓄積により、国内の野生動物が保有する病原体、その分布などを明らかにし、そのリスク分析を行ってきた。それらの成果は平成26年に策定され、その後改定を続けている「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」としてまとめるに至っている。そのガイドラインに基づいて、平成30年食肉処理施設の国産ジビエ認証制度、令和5年ジビエハンター育成研修制度が農林水産省より制定され、更には令和元年日本ジビエ振興協会より「小規模なジビエ処理施設向けHACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」が出版された。ガイドライン制定から10年が経過するにあたりガイドラインにおける問題点・改善点を再確認する必要がある。更に、野生鳥獣肉の利用範囲は多角化しており、ペットフードや展示動物への“屠体給餌”に利用されている。しかし、高病原性鳥インフルエンザの韓国における猫用ペットフードを介したネコの感染、アジアにおけるトラの感染などが報告されている。餌として与えられた動物が感染することによる飼い主や飼育者への感染も危惧されている。野生鳥獣肉の利用に関する様々なヒトへのリスクを更に総合的に評価する必要がある。
 狩猟者は野生動物における異常の発見の最前線に立っている。食肉と直接関連はしていないがイノシシにおける2018年の豚熱の発生、野鳥における高病原性鳥インフルエンザの発生などは捕獲に関わる狩猟者が一番発見する可能性が高い。動物由来感染症を迅速にかつ正確に把握するために狩猟者に野生動物の異常に関する情報を提供し、情報収集するシステムの必要性がある。また、狩猟者は野生動物から動物由来感染症に感染するリスクが高い。狩猟者を守るための情報提供も重要である。また、消費者に対して野生鳥獣肉由来の感染症の存在を周知し、加熱や調理順序等の重要性を伝え、消費者自身による対応の重要性を情報提供する必要がある。本研究班は、イノシシ・シカを中心とした野生鳥獣の食肉利用に関する総合的なリスク分析を行い、野生鳥獣由来食肉の衛生管理の向上に資する対策を確立することを目標とする。
研究方法
本年度は、1)「野生鳥獣が保有する病原微生物の汚染状況に関する研究(SFTS)」、2)「野生鳥獣が保有する病原微生物の汚染状況に関する研究(HEV)」、3)「ジビエ生産物の狩猟者、解体・加工者及び消費者に至る流通過程における健康被害の軽減に関する研究」、4)「食中毒や健康被害の発生防止対策のための科学的な根拠の提供に関する研究―野生カモおよびその捕獲・解体環境におけるカンピロバクター分布調査―」、5)「現場の実態に対応したHACCP に沿った衛生管理手法の確立に関する研究」、6)「野生鳥獣における食中毒細菌等の病原細菌の汚染状況の把握と病原因子の機能解析に関する研究」、7)「野生動物の保有する寄生虫に関する研究」、8)「イノシシで成熟できる単為生殖型肝蛭の集団遺伝構造の解析」の課題について研究を実施した。
結果と考察
SFTSVの抗体検出及び遺伝子検出を実施した。抗体陽性率が高い地域が確認されたが、遺伝子の検出は稀だった。他の病原ウイルスについては、検査頭数・検査地域が少ないため、継続した調査を実施予定である。HEVのイノシシとシカでの疫学調査を継続した。比較的西日本のイノシシの糞便から高率にHEV遺伝子が検出された。カラーアトラス改訂作業、普及活動としてセミナー、試作版の配布、ジビエ病変相談を実施した。食中毒や健康被害の発生防止対策のための科学的な根拠の提供として、野生カモにおける盲腸内のカンピロバクター保有状況、およびカモ捕獲地やカモ解体場等環境中のカンピロバクター分布状況の調査を行った。①わが国の野生鳥獣肉処理施設で処理されたシカ、イノシシの枝肉拭き取り調査を実施した。②表皮付き熟成を行う施設における表皮洗浄効果を評価した。③細菌叢解析を応用した屋外解体処理時の枝肉の細菌汚染源を推定した。④「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理方法」導入施設における内部検証法の確立に向けアンケート調査を実施した。野生鳥獣からの黄色ブドウ球菌及び薬剤耐性菌の分離とゲノム解析の実施・非結核性抗酸菌の分離方法の検討。イノシシの有鉤嚢虫について6県167検体が陰性であり、国内に蔓延した状況ではないことを確認した。東北地方のイノシシ4検体について旋毛虫陰性であることを確認した。九州地方2県のアナグマ8検体のうち、2検体において住肉胞子虫を検出し、今後食中毒原性について評価する予定である。イノシシ由来肝蛭の集団遺伝学的解析を行い、大分県内に他地域と異なる集団を認め、今後は人の肝蛭症との関連を評価する予定である。
結論
本年度は順調に研究の成果を出すことができた。最も大きな点は、カラーアトラスの作成に大きく貢献した点である。

公開日・更新日

公開日
2025-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-06-30
更新日
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収支報告書

文献番号
202423027Z