機能性siRNA経口投与による家族性高コレステロール血症に対する新しい治療薬の開発

文献情報

文献番号
201007008A
報告書区分
総括
研究課題名
機能性siRNA経口投与による家族性高コレステロール血症に対する新しい治療薬の開発
課題番号
H20-ゲノム・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
斯波 真理子(独立行政法人 国立循環器病研究センター 研究所 分子薬理部)
研究分担者(所属機関)
  • 山岡 哲二(独立行政法人 国立循環器病研究センター研究所 生体医工学部)
  • 飯田 秀博(独立行政法人 国立循環器病研究センター研究所 画像診断医学部)
  • 笹栗 俊之(九州大学大学院医学研究院生体情報科学講座臨床薬理分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
家族性高コレステロール血症(FH)は、LDL受容体機能に関わる遺伝子に変異を有する遺伝病であり、ホモ接合体では著明な高コレステロール血症、幼少期より進行する動脈硬化症を示し、未治療では心筋梗塞などの動脈硬化症に伴う重篤な合併症を引き起こし20才まで生きられないと言われている。本研究では、安全性が高くて効率が良く、経口という非侵襲的な方法でのsiRNA遺伝子導入システムを開発して、FHを対象疾患として治療実験を行い、体内動態を含めて総合的に研究し、研究終了後の臨床試験に備えることを目的としている。
研究方法
siRNAのin vitro機能評価はマウス肝細胞への導入を行い、その効果を標的遺伝子mRNA定量により評価した。in vivo機能評価は、高脂血症モデル動物に対して腹腔内や静脈内投与を行い、肝臓での標的遺伝子mRNA定量により評価した。mRNA定量は、real time RT-PCR法を用いた。キャリアーの開発は、Pullulan-PEIを用いてsiRNAとの複合体を作製した。経口投与によるsiRNAの肝臓へのデリバリーは、腸膜に存在するM細胞を介するパン酵母の殻であるβ1,3-D-glucanを経口投与用キャリアーとして使用した。
結果と考察
siRNAの一部の塩基をBNA化することにより、酵素に対する強力な耐性能を得、静脈注射により肝臓でのApoBmRNAの発現低下、コレステロール値の低下を認めた。BNAをさらにホスホロチオエート化することにより、腹腔内投与後24日間という長期間にわたって肝臓におけるmRNA量の低下、血清コレステロール値の低下を認めた。Pullulan-PEIを作製してsiRNAとの複合体を作製し、単回および複数回の静脈内投与により肝臓へのターゲティングおよび肝臓選択的イメージングを実現できた。β1,3-D-glucanにAlex 750蛍光ラベル化ApoB siRNAを添加し、PEIとの複合体を作製し、マウスに経口投与したところ、肝臓と腎臓で蛍光強度が上昇していることが確認できた。

結論
siRNAのBNA化、ホスホロチオエート化修飾により、長期間の遺伝子発現抑制効果が得られること、さらにβ1,3-D-glucanを用いて経口投与により肝臓へのターゲティングに成功した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201007008B
報告書区分
総合
研究課題名
機能性siRNA経口投与による家族性高コレステロール血症に対する新しい治療薬の開発
課題番号
H20-ゲノム・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
斯波 真理子(独立行政法人 国立循環器病研究センター 研究所 分子薬理部)
研究分担者(所属機関)
  • 山岡 哲二(独立行政法人 国立循環器病研究センター研究所 生体医工学部)
  • 飯田 秀博(独立行政法人 国立循環器病研究センター研究所 画像診断医学部)
  • 笹栗 俊之(九州大学大学院医学研究院生体情報科学講座臨床薬理分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
家族性高コレステロール血症(FH)は、LDL受容体機能に関わる遺伝子に変異を有する遺伝病であり、ホモ接合体では著明な高コレステロール血症、幼少期より進行する動脈硬化症を示し、未治療では心筋梗塞などの動脈硬化症に伴う重篤な合併症を引き起こし20才まで生きられないと言われている。本研究では、安全性が高くて効率が良く、経口という非侵襲的な方法でのsiRNA導入システムを開発して、FHを対象疾患として治療実験を行い、体内動態を含めて総合的に研究し、研究終了後の臨床試験に備えることを目的としている。
研究方法
BNA化したsiRNA(siBNA)に対して、ホスホロチオエート化、2’-OMe化、コレステロール化の修飾を施して、Invivofectamineを用いて静脈注射により肝臓へのターゲティングを行い、肝臓での標的遺伝子mRNA定量および血中コレステロール値測定により評価した。mRNA定量は、real time RT-PCR法を用いた。経口投与によるsiRNAの肝臓へのデリバリーは、凍結乾燥したβ1,3-D-glucanにAlex 750蛍光ラベル化ApoB siRNAを添加し、PEI溶液(PEI:siRNA(w/w)の比率=80)を添加し、siRNAとPEIとの複合体を形成し、マウスに対して経口投与を行い、各臓器への蓄積を測定した。
結果と考察
siBNAをホスホロチオエート化したものは、静脈注射後24日間、肝臓でのApoB mRNAの抑制効果と血中コレステロール値の低下を認めた。Pullulan-PEIを作製してsiRNAとの複合体を作製し、単回および複数回の静脈内投与により肝臓へのターゲティングおよび肝臓選択的イメージングを実現できた。さらに、siRNAの経口投与による肝臓へのターゲティングを目的としてβ1,3-D-glucanにAlex 750蛍光ラベル化ApoB siRNAを添加し、PEIとの複合体を作製し、マウスに経口投与したところ、肝臓と腎臓で蛍光強度が上昇していることが確認できた。
結論
siRNAのBNA化、ホスホロチオエート化修飾により、静脈内投与により24日間という長期間の遺伝子発現抑制効果が得られること、さらにβ1,3-D-glucanを用いて経口投与により肝臓へのターゲティングに成功した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201007008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
家族性高コレステロール血症ホモ接合体を対象疾患として、アリポプロテインBに対するsiRNAをBNA化、ホスホロチオエート化することによりin vivoでの安定性の飛躍的改善に成功し、プルラン-PEIを用いて肝臓のターゲッティングに成功し、高脂血症モデル動物を用いた治療実験によりその効果を確認した。さらにβ1,3-D-glucanを用いて経口投与による肝臓へのsiRNAの送達に成功したことは、機能性核酸の今後の開発において大きな進歩であると言える。
臨床的観点からの成果
家族性高コレステロール血症ホモ接合体は、幼少期より著明な高コレステロール血症を示し、動脈硬化症硬化症の進展による心筋梗塞や大動脈弁狭窄、弁上狭窄を引き起こす。LDLコレステロール値を低下させるために週に1回の血漿交換療法が必要であり、時間的、身体的にも大きな負担が強いられている。本研究の内容の経口投与によって著効を示す機能性核酸の開発は非常に有意義であり、今後、さらに有効な条件検討、毒性検査の後に臨床応用まで持っていくことができれば、本疾患患者に大きな貢献ができると言える。
ガイドライン等の開発
本研究内容はガイドラインの開発には直接の関係はない。
その他行政的観点からの成果
家族性高コレステロール血症ホモ接合体は、著明に高値であるLDL-コレステロール値を低下させるために、週に1回の血漿交換治療を受ける必要がある。この血漿交換療法はLDLアフェレシスと呼ばれ、LDLを特異的に吸着するカラムを使用するため、1回の治療コストは約18万円である。より安価でより非侵襲的な治療法が確立することにより、政府の財政負担の軽減、患者の負担の軽減を図ることができる。
その他のインパクト
本研究の主任研究者である斯波真理子が、家族性高コレステロール血症に対して新しい治療法を開発していることを、平成22年10月13日の朝日放送のテレビ番組、「おはよう朝日です」に紹介され、反響を呼んだ。また、その後の研究成果も含めて、平成24年9月29日のNHK Eテレ、「名医にQ」のからはし未来研究所というコーナーで紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
31件
その他論文(和文)
26件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
100件
学会発表(国際学会等)
20件
その他成果(特許の出願)
4件
「出願」「取得」計4件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Harada-Shiba M,Sugisawa T,Makino H, et al.
Impact of station treatment on the clinical fate of heterozygous familial hypercholesterolemia
J Atherosclr Thromb , 17 (7) , 667-674  (2010)
org/10.5551/jat.4143
原著論文2
Harada-Shiba M,Takamisawa I,Miyaa K, et al.
Intratracheal gene transfer of adrenomedullin using polyplex nanomicelles attenuates monocrotaline-induced pulmonary hypertension in rats
Mol Ther , 17 (7) , 1180-1186  (2009)
10.1038/mt.2009.63
原著論文3
Jeong-Hun Kang, Tachibana Y, Kamata W, et al.
Liver-targeted siRNA delivery by polyethylenimine(PEI)-pullulan carrier
Bioorganic & Medicinal Chemistry , 18 (11) , 3946-3950  (2010)
10.1016/j.bmc.2010.04.031
原著論文4
Tachibana Y, Hashimoto T, Nozaki H, et al.
Timing-controlled Decompaction of Polyplexes In Vivo Greatly Enhances Transgene Expression
Chem.Lett , 39 (12) , 1238-1239  (2010)
原著論文5
Koshino K, Watabe H,Hasegawa S, et al.
Development of motion correction technique for cardiac 15O-water PET study using an optical motion tracking system
Ann Nucl Med , 24 (1) , 1-11  (2010)
10.1007/s12149-009-0323-8
原著論文6
Iida H, Nakagawara J, Hayashida K, et al.
Multicenter evaluation of a standardized protocol for rest and acetazolamide CBF assessment using quantitative SPECT reconstruction program and split-dose 123I-IMP
J Nucl Med , 51 (10) , 1624-1631  (2010)
10.2967/jnumed.110.078352
原著論文7
Teramoto N, Koshino K, Yokoyama I, et al.
Experimental Pig Model of Old Myocardial Infarction with Long Survival Leading to Chronic Left Ventricular Dysfunction and Remodeling as Evaluated by PET
J Nucl Med , 52 (5) , 761-768  (2011)
10.2967/jnumed.110.084848
原著論文8
Sugisawa T, Okamura T, Makino H, et al.
Defining patients at extremely high risk for coronary artery disease in heterozygous familial hypercholesterolemia
J Atherscler Thromb , 19 (4) , 369-375  (2012)
org/10.5551/jat.11536
原著論文9
Kang JH, Tachibana Y, Obika S, et al.
Efficient reduction of serum cholesterol by combining a liver-targeted gene delivery system with chemically modified apolipoprotein B siRNA
J Control Release , 163 (2) , 119-124  (2012)
10.1016/j.jconrel.2012.08.030
原著論文10
Yamamoto T, Yasuhara H, Wada F, et al.
Superior Silencing by 2',4'-BNA(NC)-Based Short Antisense Oligonucleotides Compared to 2',4'-BNA/LNA-Based Apolipoprotein B Antisense Inhibitors
J Nucleic Acids  (2012)
10.1155/2012/707323
原著論文11
Wada S, Obika S, Shibata MA, et al.
Development of a 2',4'-BNA/LNA-based siRNA for Dyslipidemia and Assessment of the Effects of Its Chemical Modifications In Vivo
Mol Ther Nucleic Acids , 1  (2012)
10.1038/mtna.2012.32
原著論文12
Harada-Shiba M, Arai H, Okamura T, et al.
Multicenter study to determine the diagnosis criteria of heterozygous familial hypercholesterolemia in Japan
J Atheroscler Thromb , 19 (11) , 1019-1026  (2012)
org/10.5551/jat.14159
原著論文13
Yamamoto T, Harada-Shiba M, Nakatani M
Cholesterol-lowering Action of BNA-based Antisense Oligonucleotides Targeting PCSK9 in Atherogenic Diet-induced Hypercholesterolemic Mice
Mol Ther Nucleic Acids , 1  (2012)
10.1038/mtna.2012.16

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201007008Z