疾患多発家系集積データと大規模ジェノタイピングを併用した新規糖尿病発症原因遺伝子の同定とテーラーメード医療への応用

文献情報

文献番号
201007007A
報告書区分
総括
研究課題名
疾患多発家系集積データと大規模ジェノタイピングを併用した新規糖尿病発症原因遺伝子の同定とテーラーメード医療への応用
課題番号
H20-ゲノム・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
稲垣 暢也(京都大学 医学研究科 糖尿病・栄養内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 長嶋 一昭(京都大学 医学研究科 糖尿病・栄養内科学)
  • 小泉 昭夫(京都大学 医学研究科 環境衛生学)
  • 松田 文彦(京都大学 医学研究科 ゲノム医学センター)
  • 池田 正毅(正名会池田病院)
  • 岡本 元純(大津赤十字病院)
  • 矢野 秀樹(彦根市立病院)
  • 山本 泰三(京都桂病院)
  • 水野 展寿(滋賀県立成人病センター)
  • 安田 浩一朗(大阪府済生会野江病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、大規模ゲノム領域解析が可能となった技術的背景と大規模ゲノムデータ収集基盤を基に、糖尿病多発家系を集積した上で全ゲノム連鎖解析およびハプロタイプ解析により候補遺伝子の絞込みを行い、より効率的に糖尿病発症に関与する候補遺伝子を抽出し、その上で該当遺伝子異常に関して、地域と連携した日本人コホートデータベースを利用した検証解析を行うことにより、糖尿病発症原因遺伝子を同定することを目的とする。

研究方法
既報のMODY1-6遺伝子変異を有さない糖尿病関連自己抗体陰性の糖尿病家族歴濃厚家系を集積し、全ゲノム連鎖解析、ハプロタイプ解析を行い、有意連鎖領域内に存在する遺伝子を絞り込む。絞り込まれた候補遺伝子に関して、データベースを用いた手法で解析優先順位付けおよび塩基配列決定を行う。同定されたSNPsを、日本人コホートの糖尿病非罹患者を用いた検証解析および糖尿病家族歴濃厚家系内での当該変異の解析により、rareなエクソン変異であり、変異と疾患発症とのco-segregate(糖尿病罹患者にのみ認められ非罹患者には認められない)するものを検索し、糖尿病家族歴濃厚家系での糖尿病発症原因遺伝子変異を同定する。

結果と考察
3世代以上にわたり糖尿病患者を有する糖尿病家族歴濃厚家系の調査・集積を継続した。京都大学医学部附属病院および関連病院から糖尿病家族歴濃厚家系、累計60家系(223名)を集積し血液検体を採取、14家系全員(96名)の全ゲノムタイピングとMODY1-6遺伝子異常の有無を解析し、先行した4家系検体を用いた全ゲノム連鎖解析等で染色体候補領域を絞り込んだ。候補遺伝子をデータベースを用いた手法で解析優先順位付けし、塩基配列決定を行い、GCKR遺伝子上の複数のSNPsを同定した。岐阜県旧丹生川村(現高山市)コホートの糖尿病非罹患者検体を用いた検証解析および糖尿病家族歴濃厚家系内での当該変異の解析により、GCKR遺伝子上のrareなエクソン変異g.6859C>Gが疾患発症と完全にco-segregateすることを確認し、最終的に日本人糖尿病家族歴濃厚家系における糖尿病発症原因の一つとしてGCKR遺伝子変異が関与する可能性を示した。
結論
糖尿病家族歴濃厚家系の発症原因遺伝子の一つとしてGCKR遺伝子を同定した。

公開日・更新日

公開日
2011-07-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201007007B
報告書区分
総合
研究課題名
疾患多発家系集積データと大規模ジェノタイピングを併用した新規糖尿病発症原因遺伝子の同定とテーラーメード医療への応用
課題番号
H20-ゲノム・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
稲垣 暢也(京都大学 医学研究科 糖尿病・栄養内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 長嶋 一昭(京都大学 医学研究科 糖尿病・栄養内科学)
  • 小泉 昭夫(京都大学 医学研究科 環境衛生学)
  • 松田 文彦(京都大学 医学研究科 ゲノム医学センター)
  • 池田 正毅(正名会池田病院)
  • 岡本 元純(大津赤十字病院)
  • 矢野 秀樹(彦根市立病院)
  • 山本 泰三(京都桂病院)
  • 水野 展寿(滋賀県立成人病センター)
  • 安田 浩一朗(大阪府済生会野江病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病は家族集積性が知られており遺伝的負荷が高い疾患である。糖尿病発症感受性遺伝子同定のため、Genome-wide association study(GWAS)による解析が盛んであるが、最終的な疾患発症原因遺伝子が同定されるまで至ったケースは少なく、発症感受性遺伝子の多くは未同定のままである。大規模ゲノム領域解析が可能となった技術的背景と大規模ゲノムデータ収集基盤を基に、糖尿病多発家系を集積した上で連鎖解析およびハプロタイプ解析により候補遺伝子の絞込みを行い、より効率的に糖尿病発症原因候補遺伝子を同定し、その上で該当遺伝子異常に関する地域と連携した日本人コホートデータベースをもとに検証解析を行うことにより、最終的に糖尿病発症原因遺伝子を同定することが本研究の目的である。
研究方法
既報のMODY1-6遺伝子変異を有さない糖尿病関連自己抗体陰性の糖尿病家族歴濃厚家系を集積し、全ゲノム連鎖解析、ハプロタイプ解析を行い、有意連鎖領域を絞り込み、領域内に存在する遺伝子に関してデータベースを用いた手法で解析優先順位付けした上で塩基配列決定を行った。同定された変異に関して日本人コホートの糖尿病非罹患者を用いた検証解析および糖尿病家族歴濃厚家系内での当該変異の解析により、rareなエクソン変異であり、変異と疾患発症とco-segregate(糖尿病罹患者にのみ認められ非罹患者には認められない)するものを検索し、糖尿病家族歴濃厚家系における糖尿病発症原因遺伝子を同定する。
結果と考察
3世代以上にわたり糖尿病患者を有する糖尿病家族歴濃厚家系の調査・集積を行い、京都大学医学部附属病院および関連病院から糖尿病家族歴濃厚家系、累計60家系(223名)から血液検体を採取、14家系全員(96名)の全ゲノムタイピングとMODY1-6遺伝子異常の有無を解析し、先行した4家系検体を用いた全ゲノム連鎖解析等で染色体候補領域絞り込んだ。候補遺伝子をデータベースを用いた手法で解析優先順位付けし、塩基配列決定を行い、GCKR遺伝子上の複数のSNPsを同定した。日本人コホートの糖尿病非罹患者検体を用いた検証解析および糖尿病家族歴濃厚家系内での当該変異の解析により、GCKR遺伝子上のrareなエクソン変異g.6859C>Gが疾患発症と完全にco-segregateすることを確認し、最終的に日本人糖尿病家族歴濃厚家系における糖尿病発症原因の一つとしてGCKR遺伝子変異の関与する可能性を示した。
結論
日本人糖尿病家族歴濃厚家系における疾患発症原因遺伝子の一つとしてGCKR遺伝子を同定した。

公開日・更新日

公開日
2011-07-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-01-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201007007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
既報のMODY1-6遺伝子変異を有さない糖尿病関連自己抗体陰性の糖尿病家族歴濃厚家系を集積し、全ゲノム連鎖解析、ハプロタイプ解析およびデータベースを用いた解析優先順位付け後に塩基配列決定を行い、日本人コホートを用いた検証解析を行った。rareなエクソン変異であり、変異と疾患発症とがco-segregateする日本人糖尿病家族歴濃厚家系における一つの発症原因遺伝子としてGCKR遺伝子を同定した。本成果は解析結果のみならず、より生物学的妥当性の高い解析手法確立の観点からも重要な成果と考えられる。
臨床的観点からの成果
糖尿病の発症原因遺伝子の大部分は未同定である。認知された発症原因遺伝子変異が患者で確認されれば、糖尿病の成因分類上「その他の特定の機序、疾患によるもの」に変更となる。平成22年改訂の糖尿病の分類と診断基準では、我々が本邦初で報告したKir6.2遺伝子異常が新たに糖尿病発症原因遺伝子として認知された。疾患発症原因遺伝子の探索知見は、臨床診療の基盤となる糖尿病診断および成因分類に直接反映される可能性があり、生物学的妥当性の高い発症原因遺伝子の同定と効率的探索手法の確立は臨床的観点からも意義深い。
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
特記事項なし
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
71件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
82件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tanaka D, Nagashima K, Sasaki M, et al.
GCKR mutations in Japanese families with clustered type 2 diabetes.
Mol. Genet. Metab. , 102 (4) , 453-460  (2011)
原著論文2
Yamane S, Hamamoto Y, Harashima S, et al.
GLP-1 receptor agonist attenuates endoplasmic reticulm stress-mediated β-cell damage in Akita mice.
J. Diabetes Invest. , 2 (2) , 104-110  (2011)
原著論文3
Ogawa E, Hosokawa M, Harada N, et al.
The effect of gastric inhibitory polypeptide on intestinal glucose absorption and intestinal motility in mice.
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 404 (1) , 115-120  (2011)
原著論文4
Fujita Y, Hosokawa M, Fujimoto S, et al.
Metformin suppresses hepatic gluconeogenesis and lowers fasting blood glucose levels through reactive nitrogen species in mice.
Diabetologia , 53 (7) , 1472-1481  (2011)
原著論文5
Ogura M, Nakamura Y, Tanaka D, et al.
Overexpression of SIRT5 confirms its involvement in deacetylation and activation of carbamoyl phosphate synthetase 1.
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 393 (1) , 73-78  (2010)
原著論文6
Liu X, Harada N, Yamane S, et al.
Effects of long-term dipeptidyl peptidase-IV inhibition on body composition and glucose tolerance in high fat diet-fed mice.
Life Sci. , 84 (25) , 876-881  (2009)
原著論文7
Naitoh R, Miyawaki K, Harada N, et al.
Inhibition of GIP signaling modulates adiponectin levels under high-fat diet in mice.
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 376 (1) , 21-25  (2008)
原著論文8
Fujiwara H, Hosokawa M, Zhou X, et al.
Curcumin inhibits glucose production in isolated mice hepatocytes.
Diabetes Res. Clin. Pract. , 80 (2) , 185-191  (2008)
原著論文9
Yamada K, Hosokawa M, Fujimoto S, et al.
Effect of corosolic acid on gluconeogenesis in rat liver.
Diabetes Res. Clin. Pract. , 80 (1) , 48-55  (2008)
原著論文10
Nishi Y, Fujimoto S, Sasaki M,et al.
Role of mitochondrial phosphate carrier in metabolism-secretion coupling in rat insulinoma cell line INS-1.
Biochem. J. , 435 (2) , 421-430  (2011)
原著論文11
Ogawa E, Hosokawa M, Harada N, et al.
The effect of gastric inhibitory polypeptide on intestinal glucose absorption and intestinal motility in mice.
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 404 (1) , 115-120  (2011)
原著論文12
Tanaka D, Nagashima K, Sasaki M, et al.
GCKR mutations in Japanese families with clustered type 2 diabetes.
Mol. Genet. Metab. , 102 (4) , 453-460  (2011)
原著論文13
Uonaga T, Toyoda K, Okitsu T, et al.
FGF-21 enhances islet engraftment in mouse syngeneic islet transplantation model.
Islets , 2 (4) , 247-251  (2010)
原著論文14
Fujita Y, Hosokawa M, Fujimoto S,et al.
Metformin suppresses hepatic gluconeogenesis and lowers fasting blood glucose levels through reactive nitrogen species in mice.
Diabetologia , 53 (7) , 1472-1481  (2010)
原著論文15
Kawasaki Y, Harashima S, Sasaki M,et al.
Exendin-4 protects pancreatic beta cells from the cytotoxic effect of rapamycin by inhibiting JNK and p38 phosphorylation.
Horm. Metab. Res. , 42 (5) , 311-317  (2010)
原著論文16
Takagi T, Furuta H, Miyawaki M, et al.
Clinical and functional characterization of the Pro1198Leu ABCC8 gene mutation associated with permanent neonatal diabetes mellitus.
J. Diabetes Invest. , 4 (3) , 269-273  (2013)
原著論文17
Sasaki M, Fujimoto S, Sato Y,et al.
Reduction of reactive oxygen species ameliorates metabolism-secretion coupling in islets of diabetic GK rats by suppressing lactate overproduction.
Diabetes , 62 (6) , 1996-2003  (2013)
原著論文18
Tanaka D, Nagashima K, Sasaki M, et al.
Exome sequencing identifies a new candidate mutation for susceptibility to diabetes in a family with highly aggregated type 2 diabetes.
Mol. Genet. Metab. , 109 (1) , 112-117  (2013)
原著論文19
Ikeda K, Fujimoto S, Goto M, et al.
A new equation to estimate basal energy expenditure of patients with diabetes.
Clin. Nutr. , 32 (5) , 777-782  (2013)
原著論文20
Nakamura Y, Ogura M, Ogura K, et al.
SIRT5 deacetylates and activates urate oxidase in liver mitochondria of mice.
FEBS Lett. , 586 (23) , 4076-4081  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201007007Z