文献情報
文献番号
202423020A
報告書区分
総括
研究課題名
食肉中のカンピロバクターの殺菌法と生菌数の新規定量法の構築
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA3003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
畑中 律敏(大阪公立大学 大学院獣医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 山崎 伸二(大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 獣医学専攻 感染症制御学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国の細菌性食中毒の中でカンピロバクター食中毒は、事件数・患者数とも常に上位に位置し問題となっている。カンピロバクター食中毒の多くは、本菌で汚染された食肉を加熱不十分な状態で喫食することが原因と考えられている。また、我が国には「鳥刺し」や「たたき」といった半生の状態で喫食する食文化もあり、食中毒の発生リスクが高まる。そのため、カンピロバクター食中毒を減らすためには食肉の汚染をいかに減らすかが重要であり、そのためには迅速に生菌を検出・定量し消毒薬等で殺菌および評価する方法を確立することが重要である。しかしながら、消毒薬の評価は多くの場合、試験管内で対象菌と薬剤を混和した後に生菌数を計測することで行われ、食品中や食肉処理現場での評価は十分とはいえない。その背景には生菌と死菌を区別するためには培養法に依存せざるを得なく、迅速性や感度の問題もある。そこで本研究では、鶏肉のカンピロバクター汚染に焦点をあて、食鳥処理場や調理現場にも応用できる方法を提案するための基盤データの収集を目的に、培養法では定量できない微量の生菌のみを迅速に定量するDroplet Digital PCR (ddPCR)法の構築を行うとともにカンピロバクターを汚染させた鶏肉を塩素系消毒薬で処理し、殺菌効果の検討を行う。
研究方法
昨年度の研究において熱処理し、殺菌した菌体に対してはPMA処理により死菌が検出されなくなることは確認されていた。塩素系薬剤の殺菌メカニズムはタンパク質の変性によるものであるため、塩素系薬剤で処理された死菌の細胞膜・細胞壁を透過しDNAに作用できるかを確認した。次に研究の最終目的である、食鳥処理工程における塩素系消毒薬のCampylobacterの殺菌効果の評価に構築したPMA-ddPCRを用いるために、実際の鶏肉揉みだし液中においても塩素系薬剤で殺菌した死菌に対してPMA処理が有効であるか評価を行った。
結果と考察
100 ppmの次亜塩素酸Naまたは25 ppmの亜塩素酸水にて処理した菌体はどちらもPMA処理を行うと約8 log copies/mLの菌体がddPCRで検出されなくなり、検出限界以下(3 log copies/mL未満)となった。また、血液寒天培地上に発育せず、殺菌されていると考えられ、塩素系消毒薬で殺菌した場合にも構築したPMA-ddPCRは有用であった。また、100倍濃縮した鶏肉揉みだし液においてもPMA処理により死菌はほぼ検出されなくなり、ほぼ検出限界(2 log copies/g)となり、構築したプロトコールによって塩素系消毒薬による殺菌効果は検証できると考えられた。
結論
構築したPMA-ddPCRプロトコールは100倍濃縮した鶏肉揉みだし液中においても塩素系消毒薬で処理した菌体は検出されず、鶏肉を用いた塩素系消毒薬の殺菌評価に使用できると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2025-06-30
更新日
-