ゲノム医学を用いた骨粗鬆症ならびに関連疾患の疾患遺伝子・分子標的解明に基づく診断・治療法の開発

文献情報

文献番号
201007005A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム医学を用いた骨粗鬆症ならびに関連疾患の疾患遺伝子・分子標的解明に基づく診断・治療法の開発
課題番号
H20-ゲノム・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
井上 聡(東京大学医学部附属病院 抗加齢医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 茂明(東京大学分子細胞生物学研究所 核内情報)
  • 堺 隆一(国立がん研究センター 転移浸潤シグナル研究分野)
  • 細井 孝之(国立長寿医療研究センター 臨床研究治験推進部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
47,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨粗鬆症(OP)・変形性関節症(OA)は、腰背痛や骨折、運動障害等を伴い特に高齢者の健康を損なう症候群である。本研究は、独自の方法とゲノム医学の手法を活用し、骨ならびに関連疾患における遺伝子情報制御分子とその共役因子、標的因子群を網羅的に同定解析し、遺伝子改変動物とヒト遺伝学を用いて、生物個体レベルでそれらの分子機能と、骨関連疾患遺伝子としての意義を明らかにし、新しい診断、治療法への応用を計ることを目的とする。
研究方法
1) ゲノムワイドスキャン(50Kアレイ)によって骨粗鬆症関連遺伝子を見出しその機能を示した。2) ゲノムワイドスキャンによる骨粗鬆症関連遺伝子多型を探索した(250Kアレイ)。3) ゲノムワイドスキャンとCNV解析により肥満関連遺伝子多型を探索した。4) ERαKOマウスの関節と軟骨における遺伝子を解析した。5)骨芽細胞におけるエストロゲン標的遺伝子の解析を行った。6) PXRノックアウトマウスの関節における役割を解析した。7) 生体での骨芽細胞へのエストロゲン作用を検討した。8) 核内受容体、核内受容体共役因子の骨粗鬆症ならびに関連疾患における機能解析を行った。9) 細胞内シグナル伝達因子・膜受容体・酵素系の骨粗鬆症疾患遺伝子としての役割を調べた。10) 骨粗鬆症ならびに関連疾患の標的SNPの同定と臨床応用に関する研究を行った。
結果と考察
1)GPR98を骨粗鬆症疾患遺伝子として得た。2) 25万SNPゲノムワイドスキャンにより、マーカーSNPが複数同定された。3)肥満に関する候補遺伝子とそのSNP/CNVを明らかにした。4)ERαKOマウスの関節変化を明らかにした。5)骨芽細胞系でのエストロゲン標的を得た。6)PXRノックアウトマウスは関節の異常を呈した。7)マウス生体内での骨芽細胞におけるERの働きを明らかにした。8)VDRの新しい生体内作用を明らかにした。9)新しいリン酸化蛋白質の役割を示した。10) GGCX遺伝子機能的SNPの治療薬選択マーカーとしての応用を進めた。
結論
本研究により、GPR98をはじめとする骨関連疾患遺伝子ならびに新しい治療標的分子とその役割を明らかにし、新しい疾患モデル動物を作製解析した。骨量もしくは骨変形の指標、ならびに肥満に相関する新規遺伝子のSNPをゲノムワイド解析により複数同定し知財の確保に努め、遺伝子診断・テーラーメード医療への応用が期待され、ゲノム医学を用いた研究を推進した。

公開日・更新日

公開日
2011-08-12
更新日
-

文献情報

文献番号
201007005B
報告書区分
総合
研究課題名
ゲノム医学を用いた骨粗鬆症ならびに関連疾患の疾患遺伝子・分子標的解明に基づく診断・治療法の開発
課題番号
H20-ゲノム・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
井上 聡(東京大学医学部附属病院 抗加齢医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 茂明(東京大学分子細胞生物学研究所 核内情報)
  • 堺 隆一(国立がん研究センター 転移浸潤シグナル研究分野)
  • 細井 孝之(国立長寿医療研究センター 臨床研究治験推進部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨粗鬆症(OP)・変形性関節症(OA)は、腰背痛や骨折、運動障害等を伴い特に高齢者の健康を損なう症候群である。本研究は、独自の方法とゲノム医学の手法を活用し、骨ならびに関連疾患における遺伝子情報制御分子とその共役因子、標的因子群を網羅的に同定解析し、遺伝子改変動物とヒト遺伝学を用いて、生物個体レベルでそれらの分子機能と、骨関連疾患遺伝子としての意義を明らかにし、新しい診断、治療法への応用を計ることを目的とする。
研究方法
ⅰ) ゲノムワイドスキャン(0K/250Kアレイ)によって骨粗鬆症関連遺伝子を見出しその機能を示した。ⅱ) TGF/Wntシグナル伝達因子のSNP解析を行った。ⅲ)骨芽細胞系におけるステロイドホルモン標的遺伝子の解析を行った。ⅳ) 生体での骨芽細胞へのエストロゲン作用を検討した。ⅴ) ERαKOマウスの関節と軟骨における遺伝子を解析した。ⅵ) PXRノックアウトマウスの骨と関節における役割を解析した。ⅶ)ゲノムワイドスキャンとCNV解析により肥満関連遺伝子多型を探索した。ⅷ)核内受容体、核内受容体共役因子の骨粗鬆症ならびに関連疾患における機能解析を行った。ⅸ) 細胞内シグナル伝達因子・膜受容体・酵素系の骨粗鬆症疾患遺伝子としての役割を調べた。ⅹ) 骨粗鬆症ならびに関連疾患の標的SNPの同定と臨床応用に関する研究を行った。
結果と考察
ⅰ)GPR98をはじめとする新規骨粗鬆症疾患遺伝子を得るとともに、複数のマーカーSNPを同定した。ⅱ)TGFβシグナル抑制に係るSmad6のSNPならびにLRP5の機能的SNPが骨量と相関した。ⅲ)骨芽細胞系での新規エストロゲン/アンドロゲン/グルコルチコイド標的を得た。ⅳ)マウス生体内での骨芽細胞におけるERの働きを明らかにした。ⅴ)ERαKOマウスの関節変化を明らかにした。ⅵ)肥満に関する候補遺伝子とそのSNP/CNVを明らかにした。ⅶ)PXRノックアウトマウスは著明な骨量減少と関節の異常を呈した。ⅷ)VDR、ERαの新しい生体内作用を明らかにした。ⅸ)新しいリン酸化蛋白質の役割を示した。ⅹ)GGCX遺伝子機能的SNPの治療薬選択マーカーとしての応用を進めた。
結論
本研究により、GPR98をはじめとする骨関連疾患遺伝子ならびに新しい治療標的分子とその役割を明らかにし、新しい疾患モデル動物を作製解析した。骨量もしくは骨変形の指標、ならびに肥満に相関する新規遺伝子のSNPをゲノムワイド解析により複数同定し知財の確保に努め、遺伝子診断・テーラーメード医療への応用が期待され、ゲノム医学を用いた研究を推進した。

公開日・更新日

公開日
2011-08-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201007005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
骨粗鬆症ならびに肥満、変形性関節症などの関連疾患の疾患遺伝子、病態にかかわる遺伝子群を同定しその機能を明らかにした。エストロゲン、アンドロゲン、グルココルチコイドをはじめとするステロイドホルモンの標的因子、共役因子と作用機構、ビタミンKの新規作用経路とその標的分子を新規に発見した。これら成果は、学会発表と国際専門誌に公表し、関連した学会での受賞や国際専門誌でのトピックスとして評価された。
臨床的観点からの成果
骨粗鬆症ならびに関連疾患の診断法ならびに治療薬の選択法に関わる遺伝子、ゲノムマーカーを複数発見した。
これらの疾患の治療標的もエストロゲン、アンドロゲン、グルココルチコイド等のテロイドホルモン、ビタミンKに関連して新規に同定した。さらに、これら成果を知財化できるように国内特許出願、国際特許PCT出願を行った。
ガイドライン等の開発
特にないが、骨粗鬆症の治療薬の選択法にかかわるマーカーの意義が示せれば骨粗鬆症治療のガイドライン作成に活用できる可能性がある。
その他行政的観点からの成果
骨粗鬆症の治療薬の選択法にかかわる臨床研究を進めた。
その他のインパクト
新聞(フジサンケイビジネスアイ(2008年9月4:日朝刊)、日経新聞(2008年10月18日:土曜版朝刊))で抗加齢医学講座の取り組みが紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
131件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
190件
学会発表(国際学会等)
102件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計4件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
著書

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Urano T, Hosoi T, Inoue S, et al.
Association of a single nucleotide polymorphism in the insulin-like growth factor-1 receptor gene with spinal disc degeneration in postmenopausal Japanese women.
Spine , 33 , 1256-1261  (2008)
原著論文2
Kubo M, Ijichi N, Inoue S, et al.
Modulation of adipogenesis-related gene expression by estorogen-related receptor gamma during adipocytic differentiation.
Biochim Biophys Acta-Gene Regulatory mecyanisms , 1789 , 71-77  (2009)
原著論文3
Takayama K, Tsutsumi T, Inoue S, et al.
Amyloid precursor protein is a primary androgen target gene that promotes prostate cancer growth.
Cancer Res , 69 , 137-142  (2009)
原著論文4
Takeo C, Ikeda K, Inoue S, et al.
Identification of Igf2, Igfbp2 and Enpp2 as Estrogen-Responsive Genes in Rat Hippocampus.
Endocr J , 56 , 113-120  (2009)
原著論文5
Azuma K, Sakai R, Inoue S, et al.
Association of estrogen receptor α and histone deacetylase 6 causes rapid decetylation of tubulin in breast cancer cell.
Cancer Res , 69 , 2935-2940  (2009)
原著論文6
Urano T, Shiraki M, Inoue S, et al.
Bone mass effects of a Smad6 gene polymorphism in Japanese postmenopausal women.
J Bone Miner Metab , 27 , 562-566  (2009)
原著論文7
Urano T, Shiraki M, Inoue S, et al.
A1330V variant of the low-density lipoprotein receptor-related protein 5 (LRP5) gene decrease Wnt signaling and affect the total body bone mineral density in Japanese women.
Endocr J , 56 , 625-631  (2009)
原著論文8
Urano T, Shiraki M, Inoue S, et al.
Association of a sequence variation in the gene encoding adiponectin receptor 1 (ADIPOR1) with body mass index in the Japanese population.
Anti-Aging Med , 6 , 79-82  (2009)
原著論文9
Urano T, Usui T, Inoue S, et al.
Association of a single nucleotide polymorphism in the constitutive androstane receptor gene with bone mineral density.
Geriatric Gerontol Int , 9 , 235-241  (2009)
原著論文10
Azuma K, Urano T, Inoue S, et al.
Vitamin K2 suppresses proliferation and motility of hepatocellular carcinoma cells by activating steroid and xenobiotic receptor.
Endocr J , 56 , 843-849  (2009)
原著論文11
Ijichi N, Ikeda K, Inoue S, et al.
EPAS1, a dexamethasone-inducible gene in osteoblasts, inhibits osteoblastic differentiation.
Open Bone J , 1 , 28-37  (2009)
原著論文12
Urano T, Shiraki M, Inoue S, et al.
Identification of non-synonymous polymorphisms in the WDSOF1 gene as novel susceptibility markers for low bone mineral density in Japanese postmenopausal women.
Bone , 47 , 636-642  (2010)
原著論文13
Azuma K, Casey SC, Inoue S, et al.
Pregnane X receptor knockout mice display osteopenia with reduced bone formation and enhanced bone resorption.
J Endocrinol , 207 , 257-263  (2010)
原著論文14
Urano T, Hosoi T, Inoue S, et al.
Association of HTRA1 promoter polymorphism with spinal disc degeneration in Japanese women.
J Bone Miner Metab , 28 , 220-226  (2010)
原著論文15
Azuma K, Urano T, Inoue S, et al.
Glucocorticoid-induced gene tripartite motif-containing 63 (TRIM63) promotes differentiation of osteoblastic cells.
Endocr J , 57 , 455-462  (2010)
原著論文16
Ikeda K, Fukushima T, Inoue S, et al.
Estrogen regulates the expressionof N-methl-D-aspartate (NMDA) receptor subunit epsilon 4 (Grin2d), that is essential for the normal sexual behavior in female mice.
FEBS Lett , 584 , 806-810  (2010)
原著論文17
Takayama K, Tsutsumi S, Inoue S, et al.
Estrogen regulates the expressionof N-methl-D-aspartate (NMDA) receptor subunit epsilon 4 (Grin2d), that is essential for the normal sexual behavior in female mice.
Oncogene , 30 , 619-630  (2011)
原著論文18
Urano T, Narusawa K, Inoue S, et al.
A single-nucleotide polymorphism in the hyaluronan and proteoglycan link protein 1 (HAPLN1) gene is associated with spinal osteophyte formation and disc degeneration in Japanese women.
Eur Spine J , 20 , 572-577  (2011)
原著論文19
Ijichi N, Shigekawa T, Inoue S, et al.
Estrogen-related receptor γ modulates cell proliferation and estrogen signaling in breast cancer.
J Steroid Biochem Mol Biol , 123 , 1-7  (2011)
原著論文20
Ikeda K, Tsukui T, Inoue S, et al.
Conditional expression of constitutively active estrogen receptor α in osteoblasts increases bone mineral density in mice.
FEBS Lett  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-06-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
201007005Z