文献情報
文献番号
202423016A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の放射性物質等検査システムの評価手法の開発に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1006
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
片岡 洋平(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
- 山田 崇裕(近畿大学 原子力研究所)
- 鍋師 裕美(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
- 蜂須賀 暁子(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
- 畝山 智香子(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
11,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成23年の東京電力福島第一原子力発電所事故によって食品に移行した放射性物質の問題に対応するため、原子力災害対策本部は「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」(以下「ガイドライン」)を策定し、地方自治体において検査計画に基づくモニタリング検査を行っている。本研究課題では、現状に則したガイドライン改正のための科学的知見を得るための研究として、1. 食品中放射性物質の検査システムの評価手法の検討、2.食品中放射性物質濃度データの解析、3.食品中放射性物質等の実態調査、4.緊急時の食品放射能測定法の検討、5.消費者への食品検査及び安全性情報伝達方法に関する検討を実施した。
研究方法
食品中の放射性物質等検査システムの評価手法の検討では、非破壊検査法による食品中の放射性セシウムスクリーニング法について、検査対象品目のさらなる適用拡大を検討した。
食品中放射性物質濃度データの解析では、令和6年度に厚生労働省から公表された食品中の放射性セシウム検査データを集計し、放射性セシウム検出率、基準値超過率、検出濃度等を食品カテゴリ等のパラメータ別に解析した。食品中放射性物質等の実態調査では、魚介類からのポロニウム210の被ばく線量の推定を目的に、市場流通する貝のポロニウム210の放射能濃度を実態調査した。緊急時の放射能測定法の検討では、「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」について、背景と主に放射性ヨウ素の測定法について改訂等の必要性の箇所を検討した。消費者への食品検査及び安全性情報伝達方法に関する検討では、食品の安全性情報の伝え方と消費者意識調査を行い、安全だけでなく安心に繋げる方法の検討を行った。
食品中放射性物質濃度データの解析では、令和6年度に厚生労働省から公表された食品中の放射性セシウム検査データを集計し、放射性セシウム検出率、基準値超過率、検出濃度等を食品カテゴリ等のパラメータ別に解析した。食品中放射性物質等の実態調査では、魚介類からのポロニウム210の被ばく線量の推定を目的に、市場流通する貝のポロニウム210の放射能濃度を実態調査した。緊急時の放射能測定法の検討では、「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」について、背景と主に放射性ヨウ素の測定法について改訂等の必要性の箇所を検討した。消費者への食品検査及び安全性情報伝達方法に関する検討では、食品の安全性情報の伝え方と消費者意識調査を行い、安全だけでなく安心に繋げる方法の検討を行った。
結果と考察
食品中の放射性物質等検査テムの評価手法の検討では、ヒラタケ、カラスタケ、ウラベニホテイシメジ、タラノメ、コシアブラのスクリーニング法への適用性が高いことが見込まれた。また、キジを除くイノシシ、クマ、シカについてスクリーニング法による検査の可能性が示唆された。食品中放射性物質濃度データの解析では、令和6年度の基準値超過率は全体で0.42%、流通食品で0.20%、非流通品で0.065%であった。基準値超過試料は、高濃度の放射性セシウムに汚染した飼料の給与により汚染が生じた牛肉1試料を除くと、栽培/飼養管理が可能な品目からの基準値超過はなかった。食品中放射性物質等の実態調査では、魚介類のうち喫食量が多い10種類の貝について調査した結果、アサリで100 Bq/kgを超える試料もあったが、その他の貝の全試料で100 Bq/kg未満であった。また、平均放射能濃度は10種類の貝を通じて、1-50 Bq/kgの範囲にあった。緊急時の放射能測定法の検討では、これまでに改訂された放射性ヨウ素測定法では、スクリーニング検査法が削除されたが、緊急時の食品衛生法での検査では、迅速な基準値判定に必要と考えられた。また、放射性ヨウ素の測定法として3種類の方法が候補に挙げられ、機器校正の課題は、同型機種間の換算係数共用により解決が試みられた。消費者への食品検査及び安全性情報伝達方法に関する検討では、「食品の安全性」に関する一般的認識を調査した結果、昨年度と同様に食品中放射性セシウム基準や食の安全に関する回答はここ数年の傾向とほぼ変わりなく、アルプス処理水の放出に関連する報道の影響はほとんど観察できなかった。
結論
食品中の放射性物質等検査システムの評価手法の検討では、マイタケ、ヒラタケ、カラスタケ、ウラベニホテイシメジ、タラノメ、コシアブラ及び野生鳥獣肉(イノシシ、クマ、シカ)について、すでに非破壊式検査の適用種となっている品目と同等レベルのスクリーニングレベルが確保可能であることが分かった。食品中放射性物質濃度データの解析では、昨年度と同様に現在の検査体制はおおむね有効に機能していると考えられるものの、天然キノコとその乾燥加工品、天然山菜においては流通品における検出率が高いため、これらの品目に重きを置いた出荷前検査の実施が重要であると考えられた。食品中放射性物質等の実態調査では、一般的な食生活では、貝から過度にポロニウム210により内部被ばくをする可能性は低いと考えられた。引き続き筋肉部位だけの可食部だけでなく内臓を喫食する甲殻類などについても今後の調査の重要性が示唆された。緊急時の放射能測定法の検討では、緊急時の食品衛生法による検査では、迅速な基準値判定のためにスクリーニング検査が重要であること、また緊急時には状況が大きく変わるため、混在核種の影響を考慮し、測定法の幅広い柔軟な準備が重要と考えられた。消費者への食品検査及び安全性情報伝達方法に関する検討では、風評被害の再燃はないと考えられ、今は「平時のリスクコミュニケーション」をしっかり行うことが望ましいことが考えられた。
公開日・更新日
公開日
2025-09-11
更新日
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