食用動物等のプリオン病の病態機序およびヒトへの感染リスクの解明に関する研究

文献情報

文献番号
202423014A
報告書区分
総括
研究課題名
食用動物等のプリオン病の病態機序およびヒトへの感染リスクの解明に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1004
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
堀内 基広(北海道大学 大学院獣医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 豊孝(北海道大学 大学院獣医学研究院 獣医衛生学教室)
  • 青島 圭佑(北海道大学 大学院獣医学研究院)
  • 岩丸 祥史(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 )
  • 萩原 健一(国立感染症研究所 細胞化学部 第一室)
  • 今村 守一(宮崎大学 医学部医学科感染症学講座微生物学分野)
  • 小野 文子(岡山理科大学 獣医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
23,780,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C-BSEの発生は、飼料規制等の管理措置により制御下にあるが、2021年、2024年に英国で感染牛が摘発されたように、感染源は完全には排除されていない。また、非定型BSE(H-BSEとL-BSE)は高齢牛で自然発生し、L-BSEはヒトに感染するリスクがある。ヒツジのスクレイピーの病原体、鹿科動物の慢性消耗病の病原体にも多様性があり、異種間伝播によりC-BSE様の病原体が出現することが報告されている。このようにC-BSE収束後も、動物プリオン病によるヒトの健康危害の懸念は存在する。プリオン病は致死性の疾患で治療法がないため、食品を介した動物プリオン病のヒトへの伝播リスクの低減に継続的に取り組む必要がある。これまでの本事業の成果として、Protein Misfolding Cyclic Amplification(PMCA)およびReal-time quaking-induced conversion(RT-QuIC)等、試験管内解析技術が高度化している。これらは、高精度な検査法、感染動物の病態の解析、ヒトへの感染リスクを含めた異種間伝播能の推定に応用可能である。本研究では、これまでの成果を基盤として、1)RT-QuIC等の各種動物プリオン病の検査への適用と確定検査法の見直し、2)異種間伝播によるプリオンの性状変化を解析する試験管内試験系の構築、3)BSE感染ウシおよびサルの病態解析、食を介して動物プリオン病の病原体がヒトへ感染するリスクの低減に資する。
研究方法
1) RT-QuIC等の各種動物プリオン病の検査・診断法への適用と確定検査法の見直し
・ 基質として、rShPrP(ヒツジ)-ARQ、アミノ酸173と177をヒツジ型に置換したrCerPrP-173S/177N、非定型スクレイピープリオン検出用としてアミノ酸98、173および177をヒツジ型に置換したrCerPrP-98S/173S/177Nを用いた。
2) 異種間伝播によるプリオンの性状変化を解析する試験管内試験系の構築
・ Shaking法による構造変換誘導反応の構築を行った。野生型マウス脳乳剤、バキュロウイルス-昆虫細胞発現系により調製したマウスPrPを基質とした。96ウェルプレートに分注した後、37℃、1,200 rpmにて2日間の旋回振盪を行った。
3) BSE感染ウシおよびサルの病態解析
・ C-BSEを経口投与し、解剖後に脳幹部からWB法でPrPScが検出されなかったウシの脳幹部からPMCA法を用いてPrPScを検出した。
・ L-BSEを経口接種したカニクイザルから採取した各組織検体からPMCA法により増幅したPrPresの性状を解析した。
結果と考察
1) RT-QuIC等の各種動物プリオン病の検査・診断法への適用と確定検査法の見直し
・ C-BSE、定型および非定型スクレイピーを実用レベルの検出感度で検出可能なRT-QuIC法を構築した。これまでの成果と合わせると、ウシ、シカ、ヒツジとヤギの各種プリオンを検出可能な実用レベルのRT-QuIC法が揃ったことになる。
2) 異種間伝播によるプリオンの性状変化を解析する試験管内試験系の構築
・ Shaking法は、PMCA法と同様のプリオン増幅が可能であり、より簡便な試験管内増幅系の開発が進展する可能性がある。
3) BSE感染ウシおよびサルの病態解析
・ カニクイザルに経口的に接種されたL-BSEプリオンは体内で性状を変化させ、C-BSE様のプリオンへと変異し、リンパ組織内で増殖する可能性が示唆された。これは、L-BSEプリオンの構造が感染経路に応じて変化することを示す重要な知見である。
・ C-BSEプリオンは経口ルートでウシに感染後、比較的早期に中枢神経系に移行することが判明した。
結論
・ウシ、シカ、ヒツジとヤギの各種プリオンを検出可能な実用レベルのRT-QuIC法が揃った。
・Shaking法によるプリオン増幅が可能であり、より簡便な試験管内増幅系となる可能性がある。
・C-BSEプリオンは経口ルートで感染後比較的早期に中枢神経系に移行することが判明した。
・L-BSEプリオンが感染サル体内で性状を変化させ、C-BSE様のプリオンへと変異する可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2025-06-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
202423014Z