文献情報
文献番号
202423013A
報告書区分
総括
研究課題名
と畜・食鳥処理場におけるHACCPの検証及び食肉・食鳥肉の衛生管理の向上に資するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
森田 幸雄(麻布大学 獣医学部)
研究分担者(所属機関)
- 中馬 猛久(鹿児島大学 共同獣医学部)
- 岡田 由美子(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
- 山崎 伸二(大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 獣医学専攻 感染症制御学講座)
- 下島 優香子(東洋大学 食環境科学部)
- 小関 成樹(北海道大学大学院 農学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
15,913,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食肉の安全性確保は,農場(生産)から,加工・流通,保存,調理・消費までのフードチェーン全体の各段階でリスク管理を行うことが必要である.
研究方法
生産段階として①養豚農場への農場HACCP導入効果②黒毛和種牛のと畜場搬入時のカンピロバクター保菌状況③黒毛和種牛のと畜場搬入時のサルモネラ保菌状況,と畜場・食鳥処理場施設での加工段階として④施設環境モニタリング実施⑤と畜処理されためん羊枝肉の衛生状況⑥食肉衛生検査所の食鳥処理場の衛生管理実態や意識調査,食肉衛生検査所が実施する外部検証データ分析として⑦外部検証の微生物試験結果の分析,食肉・食鳥肉等消費時の情報として⑧市販食鳥・鶏レバーのカンピロバクター・サルモネラ汚染等状況調査⑨市販牛肉・豚肉の食中毒菌および生菌数汚染調査⑩食肉のProvidencia属菌汚染と衛生指標菌(大腸菌群)汚染⑪鶏生レバーの食中毒菌等汚染を実施した.
結果と考察
①養豚農場の調査から,農場HACCPを導入すると安全性は確保され食品(豚肉)の安全性だけでなく,家畜衛生向上となり,健康的な家畜を生産につながっていた.②と畜場搬入黒毛和種牛は高度にカンピロバクター汚染(保菌率は50%(45/90頭),56%(32/57農場)の農場が陽性)しており,分離菌はC. jejuniが最も多くC. hyointestinalisも2頭から分離された.③黒毛和種牛糞便262検体のスワブ検体からサルモネラは分離できず,黒毛和種牛のと畜場搬入時のサルモネラ保菌は極めて低いと思われた.④と畜場や食鳥処理場の施設環境モニタリング手法の検討では,衛生指標菌の他にListeria monocytogenesを含むListeria spp.が有効である結果が得られた.⑤と畜処理されためん羊の枝肉表面は部位により細菌汚染が異なることが確認された.と畜場のめん羊処理において大腸菌等,腸内細菌科菌群が検出された部位は確実にゼロトレランス検証を行うことなどの重要性が確認された.⑥全国食肉衛生検査所協議会の協力を得て,アンケート調査を実施したところ,HACCP導入後の大規模食鳥処理場におけるチラー水の温度及び塩素濃度管理基準,微生物汚染が発生しやすいと考えられる工程や外部検証における基準値の設定方法等の衛生管理実態が明確となった.食肉衛生検査所が実施する外部検証データ分析から⑦過去3ヵ年分の全国各地の牛と体,豚と体および食鳥と体における外部検証微生物試験結果を解析したところ,食肉の一般生菌数,腸内細菌科群数の傾向を把握することができ,食鳥と体においてはカンピロバクターの定量として工程管理目標案(工程管理目標案として,通年平均+2SD (2.6 log) あるいは 欧州基準3.0 log)を提示することができた.消費時の情報として⑧カンピロバクター及びサルモネラは多くの鶏肉・鶏レバーから分離されることから,これらハイリスクな食材であることが再確認された.さらに,鶏肉のこれらの食中毒菌の汚染指標として一般生菌数,腸内細菌科菌群数,大腸菌群数は用いることはできないことが判明した.⑨検体数は少ないがサルモネラ,カンピロバクター,EHEC汚染の無い,牛肉,豚肉が市販されていた.しかし,一般生菌数の汚染は高く,35℃培養で発育する菌より,30℃や15℃で発育する菌による汚染が多いこと,また,市販牛肉は,鶏肉や豚肉より一般生菌数が高いことが判明した.⑩食肉79検体(鶏肉28,豚肉41,牛肉10)中36検体(46%;鶏肉24,豚肉12,牛肉0)よりProvidencia属菌をPCRで検出し,PCRで陽性となった36検体中30検体からProvidencia属菌を分離することができた.また,鶏肉,豚肉由来株は共にP. alcaligaciens, P. rustigianiiであった.食肉のProvidencia属菌汚染と衛生指標菌(大腸菌群)汚染との相関についてはさらなく研究が必要である.⑪鶏生レバー62検体中40検体でカンピロバクターが検出され,27検体は3-1,400 MPN/10gの値を示し,13検体は1,400 MPN/10gよりも高い値を示した.表面焼烙後,カンピロバクター陽性率は低減しなかったが,菌数は表面加熱前に比べて有意に低い値を示し,18検体中13検体において表面焼烙後に菌数の低減を認めた.鶏レバー割面から最も高頻度に分離されたのはエロモナス属菌でA. hydrophilaの分離を認めた.サルモネラの陽性率は69.6%であり,定量した24検体中6検体が3-9 MPN/10gに分布していた.鶏レバーはカンピロバクターやサルモネラのみならすエロモナスによるリスクもあることが判明した.
結論
本年度は①から⑪の知見を得ることができた.これらの知見は,食肉衛生上重要なものが多かった.
公開日・更新日
公開日
2025-06-30
更新日
-