食品媒介感染症被害実態の推計に基づく施策評価のための研究

文献情報

文献番号
202423011A
報告書区分
総括
研究課題名
食品媒介感染症被害実態の推計に基づく施策評価のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
窪田 邦宏(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部第二室)
研究分担者(所属機関)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 実地疫学研究センター)
  • 八幡 裕一郎(国立感染症研究所 実地疫学研究センター)
  • 上間 匡(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 熊谷 優子(和洋女子大学家政学部健康栄養学科)
  • 小関 成樹(北海道大学大学院 農学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
9,270,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
感染症サーベイランスシステム(NESID)データ、検査機関におけるアクティブサーベイランスデータ、食中毒を疑わせる事例の疫学調査データ、環境中のウイルスのデータ等を活用することで、散発事例も含めた食品媒介感染症被害実態の推計方法を検討する。
研究方法
宮城県および全国における積極的食品由来感染症病原体サーベイランスならびに下痢症疾患の実態把握では、2023年度に関する臨床検査機関を対象としたアクティブサーベイランスデータを用い、検査機関の住民カバー率、および以前に行った夏期および冬期の2回の電話住民調査の結果から求めた検便実施率および医療機関受診率を推定モデルに導入することで、Campylobacter、Salmonella、Vibrio parahaemolyticusの3菌について、モンテカルロシミュレーション法により当該菌による食品由来下痢症実患者数の推定を行なった。ウイルス性食中毒を疑わせる事例の疫学調査データ等からの詳細な実態把握 手法等の研究ではノロウイルスによる感染症事例の実態を把握し、患者数の外挿推計手法の検討を目的として、協力自治体Bのデータを用いた記述疫学分析を行った。公衆衛生上の負荷は過去に報告された広域事例の疫学情報を利用する。広域に発生する主に細菌性疾患の疫学情報とゲノム情報の分析と監視に基づく疾病負荷軽減策の検討では公衆衛生上の負荷は自己対照ケースシリーズ法(Self-Controlled Case Series法: SCCS法)による試行を実施した。下水検体や河川に生息する二枚貝を検体としてノロウイルス遺伝子がどの程度検出されるかについて検証した。2018年から2023年の医科レセプトデータを用いた食品由来感染症の実被害患者数を推計し、その実行可能性を検証するとともに、医科レセプトデータ活用における課題を抽出した。食品由来感染症被害対策評価において消費者の食品安全意識や知識に関するWeb調査を行い、活用手法を検討した。DALYsに代わる、分かりやすい新たな指標策定を検討するために、海外の経済コスト面からの食中毒被害実態推定を検討するワーキンググループと連携して情報収集を行なった。
結果と考察
宮城県データから推定した全国における下痢症の食品由来実患者数の平均値は2023年では、Campylobacterが444,548、Salmonellaが101,501人、Vibrio parahaemolyticusが0人であった。全国における下痢症の食品由来実患者数の推定値の平均値は、Campylobacterが5,235,839人、Salmonellaが1,173,427人、Vibrio parahaemolyticusが30,142人であった
食中毒統計資料によると、全国における2023年の厚生労働省への食中毒患者報告数はCampylobacterが2,089人、Salmonellaが655人、Vibrio parahaemolyticusが9人であった。協力自治体Bにおけるノロウイルスに起因する感染症事例:食中毒事例の比が暫定的に4:1となったことについては、過去の事例単位のウイルスが検出された事例による同様な分類で得られた情報と(25%など)近似の結果であり、これを経時的に分析していくことは有用なであると考える。SCCS法では従属変数を同一の分子タイプとし、独立変数を焼肉店の利用として、SCCS法の試行によるリスク期間のIRRは32.0 (95%CI: 12.5-82.1)であった。ノロウイルスの状態空間モデルにより潜在的な総感染者数を推定するモデルを構築し、3つのシナリオに基づいた推定を通じて、より適切な仮定を組み込むことで総感染者数の推定精度が向上することが示された。消費者調査ではHACCPによる衛生管理の知識や経験がHACCPによる衛生管理に取り組んでいる飲食店の評価額に影響を与えていることを確認した。DALYsに代わる指標では各国の最新の研究成果を収集し、現状の取組み状況を把握したうえで、新たな指標策定のための方向性を見出した。
結論
アクティブサーベイランスからの推定により、散発事例も含めた患者数の概要が把握できた。学校サーベイランスの入力率の向上と活用推進が、能動的な集団感染探知に寄与することが期待された。SCCS法によるIRRの算出が可能であることが考えられた。食品由来感染症被害対策評価において消費者の食品安全意識や知識の活用手法を検討し、HACCPによる衛生管理の知識や経験がHACCPによる衛生管理に取り組んでいる飲食店の評価額に影響を与えていることを確認した。世界では食中毒被害実態の推定に経済指標を導入しようとする動きが活発化していることが明らかとなり、日本においても検討する必要があることが把握できた。

公開日・更新日

公開日
2025-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-08-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
202423011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,900,000円
(2)補助金確定額
9,737,000円
差引額 [(1)-(2)]
163,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 940,104円
人件費・謝金 146,008円
旅費 5,371,395円
その他 2,650,598円
間接経費 630,000円
合計 9,738,105円

備考

備考
一部の分担研究者が研究費を返還した際に、返還単位が千円のため生じた差異が生じております。(自己負担1,105円)

公開日・更新日

公開日
2025-09-02
更新日
-