低侵襲・ヒト幹細胞デリバリーシステムによる重症心不全治療実用化基盤技術の開発

文献情報

文献番号
201006020A
報告書区分
総括
研究課題名
低侵襲・ヒト幹細胞デリバリーシステムによる重症心不全治療実用化基盤技術の開発
課題番号
H22-再生・若手-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 一真(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 四津 良平(慶應義塾大学 医学部 外科学(心臓血管))
  • 三好 俊一郎(慶應義塾大学 医学部 内科学(循環器))
  • 五條 理志(東京大学大学院医学系研究科重症心不全治療開発講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究課題は、重症心不全に対するヒト幹細胞移植において、内視鏡下・低侵襲アプローチを応用することで、心筋への細胞移植を受けるレシピエントに侵襲が少なく、安全で効率的な移植システムを構築することを目的としている。
研究方法
本研究では、
1)既製の内視鏡システムを用いた心嚢内での内視鏡手術手技の確立、マニピュレータを含めた周辺機器の最適化、心外膜側からの細胞移植デバイスツールの開発、2)細胞移植治療に用いるための細胞ソースの安定的、効率的な培養を確立し、移植法の検討に必要な細胞数を確保するための培養システムの確立、3)ピオグリダゾン活性化骨髄間葉系細胞を用いたイヌ心不全モデルに対する細胞移植の効果検討、を行った。
結果と考察
低侵襲ヒト幹細胞移植システムとして、胸腔鏡アプローチ、心嚢鏡アプローチの実行可能性について検討した。既に臨床応用されている胸腔鏡アプローチを用いて心臓に安全に到達し幹細胞を安全に移植することは十分可能であることがわかった。しかしながら、重症心不全における幹細胞移植治療は左心室が主なターゲットとなることが多く、従来、低侵襲心臓弁膜症手術において用いられてきた右側方小開胸によるものでは左心室への到達が困難であることも立証された。これらをふまえて、左側方小開胸による心臓への到達法について知見を深める必要性がある。
心嚢アプローチについては、空気による心嚢腔拡張法を考案しこれの安全性の確認を主として行った。心タンポナーデ等の血行動態の変化をきたす事無く心嚢内視鏡治療が可能であった。今後慢性期まで癒着が少なく、繰返し移植操作が可能な手技の開発が必要となることが予想される。
胎盤・羊膜は複雑な構造を有しており、各組織を分離採取して細胞の樹立を試みた結果、形態学的・細胞表面特性には大きな違いが認められなかった。一方、細胞の増殖能には違いが認められた。今回の結果からどの部位の細胞が移植に適したソースとなるかについての一定の知見が得られた。今後はより安定的にかつ性状を維持したまま細胞を効率よく増やしていくための培養システムの構築が求められる。
結論
胸腔鏡による重症心不全心に対する幹細胞移植法は視野、操作性ともに良好で臨床応用が十分可能であった。心嚢内視鏡による細胞移植手技は、硬性鏡を用いる事で操作性が飛躍的に向上し、血行動態にも大きな影響を及ぼさず安全に色素の移植が可能であった。内視鏡下・低侵襲アプローチによる細胞移植システムの移植細胞ソースとして有用と考えられている胎児付属物由来細胞からの細胞樹立ならびに特性解析により移植法開発へとつながる基盤ができた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201006020Z