食品含有・残留化学物質のがん悪性転化毒性評価法の開発

文献情報

文献番号
202423008A
報告書区分
総括
研究課題名
食品含有・残留化学物質のがん悪性転化毒性評価法の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KA3006
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
芳賀 優弥(大阪大学 大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
2,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
一般に多段階発がん説は、①Initiation→②Promotion→③Progression→④Malignant change(悪性転化)という過程を辿る。食品・農薬に含まれる「食品含有・残留化学物質」の安全性評価 に際しては、①~③を中心として評価されている一方で、抗がん剤耐性・転移能などがんによる死 亡原因の殆どを占める④悪性転化に与える影響は、十分に理解されておらず、評価法確立は遅々と して進んでいない。そこで本研究では、食品含有・残留化学物質によるがん悪性転化機序の解明に 基づく、「がん悪性転化毒性評価法」の確立を目指すものである。本研究にて推進する食品添加物 や食品残留農薬のがん悪性転化作用の評価は、「食の安全・安心」の更なる向上を達成し、社会的 ニーズや産業界の要請に答えるものである。
研究方法
本研究では、モデル化学物質Bisphenol A(BPA)がトリプルネガティブ乳がん細胞株HCC1806に与える影響をRNA-seq解析により網羅的に検討し、発現変動遺伝子や関連経路を特定した。同定した遺伝子については患者データベースを用いた発現解析により、臨床的意義を評価した。さらに、Vimentinを標的としたレポーター細胞をレンチウイルスベクターにより作製した。
結果と考察
本研究では、昨年度に行ったRNA-seq解析の再現性と信頼性を高めるため、サンプル数を増やして再解析を行った。モデル化学物質としてBPAを用い、乳がんの中でもエストロゲン受容体陰性のトリプルネガティブ乳がん細胞株HCC1806に対して、10 nMおよび10 µMの濃度で1週間曝露を行い、遺伝子発現変動を評価した。その結果、各曝露群で多数の発現変動遺伝子が見られ、パスウェイ解析によりEMTや腫瘍の悪性化に関連する経路が抽出された。中でもHIST1H2AE、SEMA5A、HOXC12の3遺伝子について、患者データベースを用いた解析により、悪性転化との関連が示唆された。加えて、Vimentinのプロモーター領域を導入したレポーター細胞を構築し、TGF-βによる刺激後に蛍光強度の増加を確認した。このレポーター細胞を用いた化学物質のスクリーニング試験も現在準備を進めている。
結論
本年度の検討により、低濃度BPAを乳がん細胞に曝露した結果、複数のがん悪性転化関連遺伝子の発現が変動することが確認され、化学物質の悪性転化形質を評価するレポーター細胞を樹立した。これまでの成果を元に、化学物質のスクリーニングに活用することで、新たな視点からの食品中化学物質の安全性評価手法の確立が期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-08-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-08-14
更新日
-

文献情報

文献番号
202423008B
報告書区分
総合
研究課題名
食品含有・残留化学物質のがん悪性転化毒性評価法の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KA3006
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
芳賀 優弥(大阪大学 大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
一般に多段階発がん説は、①Initiation→②Promotion→③Progression→④Malignant change (悪性転化)という過程を辿る。食品・農薬に含まれる「食品含有・残留化学物質」の安全性評価 に際しては、①~③を中心として評価されている一方で、抗がん剤耐性・転移能などがんによる死 亡原因の殆どを占める④悪性転化に与える影響は、十分に理解されておらず、評価法確立は遅々と して進んでいない。そこで本研究では、食品含有・残留化学物質によるがん悪性転化機序の解明に 基づく、「がん悪性転化毒性評価法」の確立を目指すものである。本研究にて推進する食品添加物 や食品残留農薬のがん悪性転化作用の評価は、「食の安全・安心」の更なる向上を達成し、社会的 ニーズや産業界の要請に答えるものである。
研究方法
モデル化学物質としてビスフェノールA(BPA)およびベンゾピレンを用い、乳がん細胞に対する長期曝露実験を通じて、悪性転化形質への影響ならびに網羅的遺伝子変動を解析した。また、変動遺伝子については、データベースを用いて臨床的意義を評価した。また、Vimentinを指標としたレポーター細胞について、CRISPR-Cas9システムやレンチウイルスによるレポーター細胞の樹立基盤を構築した。
結果と考察
1年目はBPAおよびベンゾピレンの影響評価と、HEK293T細胞を用いたレポーター系構築に着手。2年目にはBPA長期曝露による乳がん細胞の表現型変化およびRNA-Seq解析、レポーター細胞の改良を進めた。3年目はサンプル数を増加させたRNA-Seq解析を再度実施し、悪性転化に関与する候補遺伝子の絞り込みを行うとともに、レポーター細胞樹立に向けた検討を行った。
その結果、RNA-Seqによる遺伝子発現変動解析では、BPA曝露によってEMTや浸潤・転移に関与する遺伝子群が変動し、とくに低濃度(10 nM)でも悪性化関連経路の活性化が確認され、臨床的意義も示唆された。また、Vimentinを指標としたレポーター細胞について、CRISPR-Cas9システムによる樹立基盤を構築した。
結論
本研究では、がん悪性転化形質に焦点をあてた新たな評価系の構築を目指し、HEK293T細胞を用いたVimentinの蛍光標識や、乳がん細胞を用いた低濃度BPA曝露実験により、悪性転化関連遺伝子の発現変動を確認した。また、これらの知見をもとに、悪性転化誘導性を鋭敏に評価可能なレポーター細胞の樹立基盤も構築した。今後、細胞種やマーカー選定をさらに最適化し、本評価系の感度を検討することで、がん悪性転化誘導性が未知の化学物質に対する評価が可能となり、発がん性や遺伝毒性とは異なる観点から食品含有化学物質のリスク解析に資する科学的基盤の整備につながると期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-08-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202423008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
がん悪性転化形質に焦点をあてた新たな評価系の構築基盤を確立しただけでなく、乳がん細胞を用いた低濃度化学物質曝露実験により、悪性転化関連遺伝子の発現変動を確認した。今後、細胞種やマーカー選定をさらに最適化し、本評価系の感度を検討することで、がん悪性転化誘導性が未知の化学物質に対する評価が可能となり、発がん性や遺伝毒性とは異なる観点から食品含有化学物質のリスク解析に資する科学的基盤の整備につながると期待される。
臨床的観点からの成果
乳がん細胞を用いた低濃度化学物質曝露実験により、変動が認められた悪性転化関連遺伝子について、患者データベースでも悪性転化と相関することを見出し、臨床的意義が示唆された。
ガイドライン等の開発
特記事項なし。
その他行政的観点からの成果
特記事項なし。
その他のインパクト
日本薬学会関西支部にて成果を発表し、多くの研究者と議論した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-06-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
202423008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
3,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,838,816円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 469,184円
間接経費 692,000円
合計 3,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2025-08-26
更新日
-