生体イメージングによる幹細胞由来誘導細胞の生体内動態の可視化と臨床有用性・安全性評価系の確立

文献情報

文献番号
201006019A
報告書区分
総括
研究課題名
生体イメージングによる幹細胞由来誘導細胞の生体内動態の可視化と臨床有用性・安全性評価系の確立
課題番号
H22-再生・若手-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
西村 智(東京大学附属病院 システム疾患生命科学による先端医療技術開発拠点)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の、多能性幹細胞(ES, iPS)の研究の進歩により、試験管内で幹細胞を分化誘導させ様々な機能を持った細胞を作成することが可能になり、山中四因子を導入せずとも簡便にiPS細胞を得ることにも成功しつつある。今後は、幹細胞を用いて、細胞療法・再生療法を含む広い範囲での臨床応用(低侵襲なテーラーメイド医療)が期待されている。しかし、これらの実現にあたって、実験動物レベルでの基礎研究を臨床に繋げるためには、ヒトを対象とした臨床研究に移行する前に、実際に試験管内で作成した細胞が、実際の実験動物の個体(マウス及び大動物)の中でどのように機能しているか、どのように病変に働くか、その有用性と安全性を明らかにすることは必須である。しかし、これらを評価するシステムが存在せず、多くの研究者に求められているのが現状であった。
研究方法
本研究では、光を用いた生体内での細胞の可視化手法(生体イメージング)により個体に導入された幹細胞由来の分化細胞がいかに個体に生着し、機能するかを評価した。本年度、我々はiPS誘導細胞の生体内動態の可視化を行った。ヒトiPS細胞由来人工血小板の作成に成功し、生体内での血小板としての機能を明確に示した。
結果と考察
輸血製剤である血小板製剤は凍結保存が出来ず、管理が非常に困難であり、慢性的に供給不足状態にある。血小板は無核で移植片対宿主病を起こさない事からも、iPS細胞から作成した人工血小板は細胞療法として有望で、実用化に非常に近いところにあると言える。我々は、iPS細胞樹立のための初期化因子であるc-mycの発現を制御することでヒトiPS細胞から効率的に人工血小板を作成することに成功した。さらに生体内でいかに機能するか、本生体イメージング手法を用いて検討した。マウスの中でiPS細胞由来人工血小板は体内を循環するだけでなく、レーザー傷害により宿主の血小板とiPS細胞由来血小板が相互作用しながら血栓を形成するさまが観察された。
結論
すなわち、iPS細胞由来の血小板が生体内で血小板としての機能をもつ事をはじめて示し、将来の臨床応用にむけて輸血製剤としての有用性・安全性を示した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201006019Z