核酸等温増幅反応を用いた食品遺伝子検査の新規プラットフォーム開発に係る研究

文献情報

文献番号
202423004A
報告書区分
総括
研究課題名
核酸等温増幅反応を用いた食品遺伝子検査の新規プラットフォーム開発に係る研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KA3002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
曽我 慶介(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中山 達哉(広島大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
2,730,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、Loop-mediated isothermal amplification(LAMP)やRecombinase Polymerase Amplification(RPA)等の核酸等温増幅反応の現状の情報収集を行い、その中から実用的な方法を選択して、サンプリングから結果の解析までの流れを鑑みて食品行政に係る遺伝子試験としての適用性を評価し、試験法として開発することを目的とする。オンサイトで結果を確認できる迅速検査法として、食中毒菌カンピロバクター(Campylobacter jejuni及びCampylobacter coli)および遺伝子組換え(GM)トウモロコシ検査をモデルに、RPAまたはLAMPを用いた核酸クロマト目視判定試験紙Printed Array Strip(C-PAS)を検討した。
研究方法
カンピロバクター検査では、RPAに用いるカンピロバクター用プライマー(C. jejuniはmapA遺伝子、C. coliはceuE遺伝子を標的)及び細菌用陽性コントロール(PC)プライマー(16S rRNAを標的)を複数設計し、性能評価およびRPA-C-PASの検討を行った。
GMとうもろこし検査では、陽性対照としてとうもろこし内在性遺伝子スターチ合成酵素Ⅱb(SSⅡb)を、GMの共通配列としてカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(P35S)および土壌細菌由来ノパリン合成酵素ターミネーター(TNOS)を標的としたRPA-C-PASまたはLAMP-C-PASを検討した。
結果と考察
カンピロバクター検査では、第一にRPAに用いるカンピロバクター用プライマーでC. jejuni用8セット、C. coli用9セット及びPC用プライマーを5セット設計した。アガロースゲル電気泳動による検出限界濃度を評価した結果、反応温度39℃反応時間30分以内でC. jejuni用mapA-4において0.1 pg/μLから1 pg/μL、C. coli用ceuE-1で1 pg/μL、PC用16S-2で10 pg/μLと良好な感度を示した。次に、これらのプライマーおよびC. jejuni陽性鶏肉検体のプレストン増菌培地を用いて、RPAによる検出を試みた結果、mapAの増幅が確認されたことから、食品検体からの迅速検出法として有用となことが示唆された。しかしながら、RPA-C-PASの検討では、陰性試料からも増幅が確認され、適用することができなかった。GMとうもろこし検査をモデルにRPA-C-PASを検討したが陰性試料において非特異的な増幅が検出されてしまい、現時点での適用はカンピロバクターと同様に困難と考えられた。LAMP-C-PASでは、SSⅡb、P35SおよびTNOSにおいて、Simplex-C-PASが機能することを確認した。しかし、マルチプレックス化を検討した際に、プライマー濃度を調整することでDuplexのSSⅡb/TNOS、P35S/TNOSは機能することを確認できたが、Triplex試験などは増幅するべきものが確認できないことや、非特異的増幅が確認される等課題が残った。公定検査法として運用する際には、今回の検討でも確認された反応チューブ開閉時の作業環境汚染の問題を解決する必要があり、そのためには閉鎖系で実験から解析まで完了できる新たな検討が必要と考えられた。
結論
RPAを用いたカンピロバクター検出法を開発した。GMトウモロコシ検査ではLAMP-C-PASのSimplexは機能することが確認された。しかし、両検査においてオンサイト検査としてC-PASへの応用は課題が残った。
以上を踏まえ、PCRを核酸等温増幅反応で完全に代替することは現時点では難しいとみられるが、まずは検査数の多いスクリーニング検査や現場の即時結果を求められる場面で蛍光検出等の閉鎖系を前提とした核酸等温増幅反応の導入を検討していくことが、検査体制の効率化に繋がるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2025-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-07-25
更新日
-

文献情報

文献番号
202423004B
報告書区分
総合
研究課題名
核酸等温増幅反応を用いた食品遺伝子検査の新規プラットフォーム開発に係る研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KA3002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
曽我 慶介(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中山 達哉(広島大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の食品種の多様化、世界各国からの食品の輸入量及びその安全性確保需要増加に伴い、食品遺伝子検査の需要も増すものと考えらえる。現在の食品遺伝子検査はリアルタイムPCRがゴールドスタンダードになっているが、機械が高価かつ時間がかかることが問題視されていた。一方で、遺伝子検出技術として様々な等温核酸増幅反応の有用性が報告されている。Loop-mediated isothermal amplification(LAMP)法やRecombinase Polymerase Amplification(RPA)法は等温でかつ数十分で反応が完了することから、定性検査法として医療分野では普及してきている。しかし、国内の食品遺伝子検査としては検討が進んでいないのが実情である。そこで本研究は、LAMPやRPA等の核酸等温増幅反応の現状の情報収集を行い、その中から実用的な方法を選択して、食品行政に係る遺伝子試験としての適用性を評価し、試験法として開発することを目的とする。
研究方法
文献調査を中心に、食品遺伝子検査として利用可能な核酸等温増幅反応に関する情報収集を行った。公的検査機関における核酸等温増幅反応の需要調査を実施した。
GMとうもろこしの検出をモデルとして、とうもろこし内在性遺伝子SSⅡb及び多くの遺伝子組換え作物に導入されているP35S、TNOS配列を標的としたRPAおよびLAMPを検討した。
微生物試験では、カンピロバクターをモデルにC. jejuni用はhipO及びmap遺伝子を標的に、C. coli 用はceuE遺伝子を標的に、細菌用陽性コントロール(PC)プライマーとして16S rRNA遺伝子を標的に迅速なRPAを検討した。
核酸等温増幅法を用いたクロマト目視判定試験紙Printed Array Strip(C-PAS)の検討を行った。
結果と考察
近年の論文数はLAMPが一番多く、次にRPAと続いた。LAMPは反応温度帯が65℃、RPAは39℃で、反応が30分以内に終わるため、迅速簡便検査法として有用と考えられた。
需要調査では、通常の検査では迅速性が必要な半面、通知試験法と同等の性能を有しなければ利用しにくいという意見が多数であった。よって、PCRと同等の性能を持つ迅速な核酸等温増幅反応の開発が重要と考えられた。また、加工食品からの前処理時にカラムが詰まる等の現行法の問題点も多数があり、粗抽出DNAでも適用可能な方法として核酸等温増幅反応は需要が見込まれた。微生物試験分野では、病原性大腸菌、ノロウイルス、カンピロバクターの順で検査の改善必要意見が多かった。
RPAを用いたGMとうもろこし検査ではSSⅡb及びP35S標的として評価したところ、特異性は良好であったが感度がリアルタイムPCRと比較して悪かった。とうもろこし加工食品をモデルに、粗抽出DNAの適用性を評価したところ、リアルタイムPCR、LAMPと比較して、RPAが最も食品マトリクスへの適用範囲が広かった。また、PCRと比較して短時間で終わるため、DNA簡易抽出からの実施は迅速化が見込まれた。オンサイトで可能な迅速試験法としてRPA- C-PASを検討したが、非特異的な増幅が検出され、現時点での適用は困難と考えられた。LAMP-C-PASでは、各標的でSimplexが機能した。しかし、マルチプレックス化には課題が残った。
カンピロバクター検出について、RPAプライマーを新たに開発して、性能評価を行った。検出感度は良好な結果を示した。また、鶏肉増菌培地からもC. jejuniが検出可能で、食品検査として適用可能なことが示唆された。しかしながら、RPA-C-PASでは、陰性コントロールでの非特異的検出等課題を残った。
結論
PCRに代わる新たな核酸検出技術としてRPAの検討を主に行ったが、機械不要な温度帯での反応、夾雑物への適用性が見込める半面、プライマーデザインツールの不在、加水分解プローブのコスト高、C-PASへの展開の困難など、開発面での障壁がいくつか確認された。LAMPは反応温度帯が65℃だが、C-PASへの展開も見込まれることから、今後迅速検査法開発を検討する場合は第一選択肢になりえる。しかし、C-PASを公定検査法として運用する際には、反応チューブ開閉時の作業環境汚染の問題を解決する必要があり、今後は閉鎖系で解析を完了するような新たな検討が必要と考えられた。PCR検査を核酸等温増幅反応で完全に代替することは現時点では難しいが、まずは検査数の多いスクリーニング検査や即時結果を求められる場面で閉鎖系を前提とした核酸等温増幅反応検査の導入を検討していくことが、食品検査体制の効率化に繋がるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2025-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-07-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202423004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全国の地方衛生研究所等の公的検査機関を対象とした、食品遺伝子検査に関する現行の検査体制の問題点や需要を調査したことで、新たに取り組むべき課題等を明らかにした。
GMとうもろこしおよびカンピロバクターを対象としたRPAを開発した。RPAは37℃付近で検査可能な新たな検査系という点で新規性がある。また、とうもろこし検出用のLAMPを改良し、GMとうもろこし検査を含めたC-PASへの応用可能性を示した。偽陽性の問題がクリアできれば、今後簡便迅速検査法として活用されることが期待される。
臨床的観点からの成果
特に無し
ガイドライン等の開発
特に無し
その他行政的観点からの成果
特に無し
その他のインパクト
特に無し

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakayama T, Soga K
Simple and quick detection of extended-spectrum β-lactamase and carbapenemase-encoding genes using isothermal nucleic acid amplification techniques.
J Microorganism Control , 28 (3) , 145-152  (2023)
10.4265/jmc.28.4_145

公開日・更新日

公開日
2025-06-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
202423004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
3,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,774,335円
人件費・謝金 491,400円
旅費 76,920円
その他 387,345円
間接経費 270,000円
合計 3,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2025-08-26
更新日
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