ヒト幹細胞を用いた臨床研究のエビデンス創出から高度医療制度による実用化を目指した研究

文献情報

文献番号
201006016A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト幹細胞を用いた臨床研究のエビデンス創出から高度医療制度による実用化を目指した研究
課題番号
H22-再生・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
坪田 一男(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 榛村 重人(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
角膜上皮再生は、再生医療の中で我が国が最も世界に先駆けて臨床実績が多く、産業化への取り組みも活発な技術のひとつである。本研究テーマである新規の角膜上皮再生技術「他家フィブリン培養角膜上皮細胞シート移植」は、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に承認され、すでに第一例目を自己資金にて実施した。今まで我々は文部科学省再生医療実現化プロジェクト第I期の成果としていくつかの技術改良と安全性向上に努めてきた。具体的には、フィブリン製剤をキャリアーにしてシートを作成する技術(Higa 2007)を開発し、さらにはヒト骨髄幹細胞をフィーダー細胞として用いる技術も完成させた(Omoto 2009)。本研究では、幹細胞指針に基づいてGMP基準に準ずるCPCで作成した上皮シートの臨床をさらに進め、従来の培養シート移植研究よりさらに産業化へ向けて踏み込む。平成22年度では承認された臨床研究に基づいて新規の培養上皮シート移植を5から10例行い、並行して改良技術の基礎研究を実施しする。平成23年度以降、目標症例数に到達した段階で高度医療評価制度を利用して本技術の普及を計ると共に、他施設研究の可能性を探る。
研究方法
本研究において実施する試験治療の内容
(1) 同種(ドナー)角膜輪部からの上皮幹細胞採取
(2) 培養角膜上皮シート作成
(3) 角膜上皮シート移植術
なお、培養法を検討するため、CPC外でも移植を目的としない上皮シート培養を行った。
結果と考察
本研究ではGMP準拠のロット管理のもとテストラン含めて培養上皮シートを7例作成し、うち2例で
移植を行った。実施した2例は、スティーブンスジョンソン症候群と眼類天疱瘡の症例であり、いずれも術後は角膜の透明性は向上し、視力の改善が認められた。また、本研究を進める中で、 (1)高コスト、(2)各種検査のタイムラグ、(3)上皮シートの
増殖のばらつき、などが改良すべき点として明らかになった。
結論
本研究では安全性に配慮したGMP準拠の角膜上皮シートを作成し、移植2例で良好な結果を得た。また、実際に研究を進める中で、高コストや試験結果のタイムラグ、ロット間の上皮成長のばらつきなどの問題が明らかになった。将来的には生物活性を保ったままでの保存技術の開発や、GMP準拠の試薬類の充実、ロットあたりのばらつきを吸収できるような培養技術の開発などが必要と考えられる。GMP準拠の安全な再生医療の普及を目指すうえで今後解決すべき点が明らかになった点においても、本研究は意義があったと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201006016Z