諸外国における外国人労働者への安全衛生教育の実施手法及び我が国での実効可能性に関する研究

文献情報

文献番号
202422012A
報告書区分
総括
研究課題名
諸外国における外国人労働者への安全衛生教育の実施手法及び我が国での実効可能性に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24JA1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 直孝(独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 里鶴(麗澤大学 国際学部)
  • 高橋 明子(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 リスク管理研究グループ)
  • 和崎 夏子(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 リスク管理研究グループ)
  • 大幢 勝利(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 研究推進・国際センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
7,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、外国人労働者の受入れが進む日本において、労働災害の防止と安全衛生水準の向上を図るために、労働安全衛生教育のあり方を検討し、より実効的な制度構築に資する知見を得ることを目的とする。特に、外国人労働者の定着や活用が社会的にも経済的にも重要な政策課題となる中で、安全衛生教育が言語・文化・制度の壁を越えてどのように提供されるべきか国際比較の視点から検討する必要がある。そのため本研究では、多文化社会の中で制度的対応が進んでいるオーストラリア、欧州連合(EU)、フランス、アメリカの4地域・国を受入国のモデルとして取り上げ、安全衛生教育の法的枠組み、教育内容、実施体制、多言語対応、翻訳支援等の現状を調査・整理した。また、日本にとって主要な送出国であるベトナムおよびタイを対象に、送出前教育や制度的支援体制の実態も分析し、受入れ・送り出しの両側面から課題を把握した。さらに、外国人労働者に対する非言語的なリスク伝達手段として注目されるピクトグラム安全表示についてもその意味するところを適切に理解することを促すため、その解説文を各言語に翻訳することを目的とした。
研究方法
本研究は、文献調査と現地ヒアリング調査を組み合わせて実施した。文献調査では、各国・地域の労働安全衛生関連法規、行政機関のガイドライン、訓練制度に関する公的文書、ならびに国際機関の報告書を参照し、制度的枠組みと教育施策の全体像を把握した。とくに制度設計の理論と現場運用の整合性、教育実施における多文化対応の工夫などに注目して情報を収集・整理した。一方、実態の把握と補完的な定性情報の収集を目的として、2025年2月にオーストラリアにて行政機関(Safe Work Australia、Work Safe ACT、Work Safe Victoria)、水道インフラ企業、職業訓練機関等への訪問調査を行い、担当者からの聞き取りを通じて制度運用の具体的事例を収集した。また、送出国であるベトナムおよびタイにおいても、送出機関等に対してヒアリングを実施し、出国前における安全衛生教育の内容、教育時間、教材の整備状況、講師体制などを明らかにした。ピクトグラム安全表示に関しては、ISO規格の解説文を各言語に翻訳した。
結果と考察
調査の結果、受入国では外国人労働者を前提とした安全衛生教育の制度整備が一定程度進展しており、とくにオーストラリアでは、「PCBUs(Persons Conducting a Business or Undertaking、事業または事業計画を実施する者)」という概念が労働安全衛生法に導入されていた。PCBUsは、直接雇用している労働者に対してのみならず、契約業者や下請企業の労働者に対しても影響力や指揮命令権を持つ限り、安全配慮義務を負うことになる。PCBUsに対して包括的な法的責任を課すとともに、国家資格制度、多言語資料、ARなどを活用した実技訓練、翻訳支援体制などが実効的に運用されていた。また、行政による監査と罰則制度が併存しており、教育の形骸化を防ぐ構造が確立されていた。アメリカにおいても、OSHAが定める基準に加え、州ごとの自主的取組(特にカリフォルニア州)により、スペイン語などを用いた現場教育が定着しつつある。一方で、EU・フランスでは制度的には高度であるものの、多言語対応に限界があり、フランス語使用義務を課している業種も見られた。ベトナムやタイでは、送り出し前教育の実施内容や時間数に大きな差があり、ある機関では1時間程度の形式的な安全衛生教育にとどまっていた一方で、自国の制度に準拠した12時間以上の実践的な安全衛生教育を提供する事例も見られた。ピクトグラム安全表示については、非識字者や外国人に対する危険情報の伝達手段として国際的に評価されている一方、その意味や用途について十分な教育が伴っていない現状もあり、補完的な説明が求められる。
結論
本研究から得られた知見は、今後の日本における外国人労働者の安全衛生教育制度を見直すうえで、実践的な示唆を数多く含んでいる。特に、(1)教育義務の法制化とPCBU概念の導入、(2)多言語資料および翻訳支援体制の整備、(3)送出国との教育内容の共通化・連携強化、(4)ピクトグラム、AR等を活用した視覚的教材の導入、(5)事業者責任と監督・罰則制度の実効性強化、が項目として挙げられた。これらの要素は、制度の整備だけでなく、教育現場での実践、監査体制、教材設計、そして国際連携の各段階において統合的に取り組むことが求められる。多文化社会に向けた制度設計という観点から、外国人労働者にとって理解しやすく実効的な安全衛生教育の実現を目指すことが大切である。

公開日・更新日

公開日
2026-01-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
202422012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,880,000円
(2)補助金確定額
9,680,000円
差引額 [(1)-(2)]
200,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 787,131円
人件費・謝金 37,697円
旅費 3,299,784円
その他 3,276,891円
間接経費 2,280,000円
合計 9,681,503円

備考

備考
「(2)補助金確定額」と支出の「合計」の差額は、自己資金1,503円である。

公開日・更新日

公開日
2026-01-27
更新日
-