パーキンソン病に対する細胞移植治療確立のための霊長類を用いた前臨床研究

文献情報

文献番号
201006011A
報告書区分
総括
研究課題名
パーキンソン病に対する細胞移植治療確立のための霊長類を用いた前臨床研究
課題番号
H21-再生・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 淳(京都大学 再生医科学研究所/iPS細胞研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 尾上 浩隆(理化学研究所 分子イメージング科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
56,760,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究課題ではパーキンソン病に対する幹細胞移植治療実現化のための前臨床試験を最終目標としている。平成22年度はヒトES, iPS細胞から誘導した神経前駆細胞をカニクイザルパーキンソン病モデルに移植した結果の解析を行い、腫瘍形成を抑え移植効果を発揮させる条件の検討を行った。
研究方法
ヒトES細胞(KhES-1, 2)からSDIA法変法を用いて神経前駆細胞を誘導した。ドーパミン神経誘導を促進するShhやFGF8を培養液中に加え、途中からはドーパミン神経細胞成熟に必要なGDNFやBDNFを加えた。35、42日間分化誘導を行い、免疫不全マウスおよびMPTP全身投与で作製したパーキンソン病モデルカニクイザルの線条体に細胞を移植した。移植後12か月間、MRIおよびPET解析を行い行動解析も行った。細胞に脳切片の免疫組織学的解析を行った。
ヒトiPS細胞(253G4)からはフィーダー細胞を用いない浮遊培養系で神経前駆細胞を誘導し、カニクイザルモデルに移植した。
結果と考察
1)我々の過去の実験で、未分化ES細胞が残存している細胞ではサル脳内で9か月にわたってその未分化細胞が増殖し続け腫瘍を形成することが明らかとなっている。今回の実験では、35、42日間分化誘導した細胞では未分化ES細胞は残存しておらず最終分裂を終えたドーパミン神経細胞も混じっている。これらの細胞の移植では腫瘍形成はみられず特に42分化細胞では4頭中3頭において6か月目からは移植片の増大がみられなくなった。未分化ES細胞が増殖している移植片ではFLT-PETにおいてFLTの高い取り込みが観察されたが、今回はそのような取り込みは全くみられなかった。42日分化細胞を移植したモデルサルでは移植3か月後から12か月後に渡り、コントロール群と比べて有意な行動改善が認められた。これらのサルではFDOPA-PETでは移植片におけるFDOPA取り込みの上昇が確認され、その取り込み上昇率は行動改善率と相関関係がみられた。
2)ヒトiPS細胞移植後の解析では、ドーパミン神経細胞におけるドーパミン輸送顆粒(VMAT2)や再取り込みを行うドーパミン受容体(DAT)に対するリガンドを用いてPET解析(それぞれDTBZ-PET、PE2I-PET)を行った。生着したドーパミン神経細胞数に相関してこれらの取り込み上昇が観察された。
結論
今回の実験で移植前に十分な神経分化をさせるとヒトES, iPS細胞の腫瘍形成は抑えられ、行動改善も期待しうることが明らかとなった。またMRIやPETなどの画像解析が細胞の増殖や機能を同定するのに有用であることも明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2011-07-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
201006011Z