文献情報
文献番号
202422006A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢労働者の転倒災害防止に向けたOccupational Fall Risk Assessment Tool(OFRAT)短縮版の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
23JA1002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
大須賀 洋祐(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 研究所 フレイル研究部)
研究分担者(所属機関)
- 畑中 翔(東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
- 笹井 浩行(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 自立促進と精神保健研究チーム)
- 中田 由夫(筑波大学 体育系)
- 岡 敬之(東京大学 医学部附属病院 22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本年度の報告書では、OFRAT-5が異なる集団においても全転倒、就業転倒リスクを予測できるか否かについて予備的に検討した。
研究方法
研究参加者
本研究の研究参加者は、国立長寿医療研究センターが実施する東浦研究と東京都健康長寿医療センターが実施する板橋健康長寿縦断研究に参加する者の内、月に4日以上の就業実績がある者で、本研究に対する参加同意を得られたものを研究参加者とした。なお、本報告書では、令和5年度に登録が完了した395名の内、追跡が完了した343名を解析対象とした。
アウトカム
令和5年度のベースライン調査から転倒・転落発生状況を一年間追跡した。
転倒・転落の定義は、「他人(自動車や自転車を含む)との衝突、意識消失、麻痺、てんかん発作などによる転倒を除き、不注意によって地面や地面より低い平面(階段下など)へ倒れること」とした。
全転倒は期間中に発生した全ての転倒を、就業転倒は就業中(就業場所への行き帰りを含む)の転倒について、それぞれ調査した。
研究参加者は、1)転倒・転落回数、2)転倒・転落日、3)転倒・転落の要因(躓いた、滑った、ふらついた、踏み外した、その他)、4)ケガの詳細(ケガなし、擦り傷・切り傷、打撲、捻挫、骨折、その他)について、1か月に一度はがきで報告するよう求められた。
OFRAT-5
OFRAT-5は、以下の5項目について評価した。
1) 過去一年間の転倒歴の有無
2) 糖尿病の有無
3) 転倒リスクを高める薬(睡眠薬、抗うつ薬など)の使用の有無
4) 主観的な聴力の低下の有無
5) 敏捷性の低下
主観的な聴力の低下は、「聴力の問題で仕事や日常生活に支障をきたすと感じることはどの程度ありますか?」と尋ね、「全くない、ほとんどない、たまにある、よくある、いつもある」の内、「よくある」または「いつもある」に該当した場合、聴力の低下ありとした。
敏捷性の低下は、ステップテストの所要時間が10秒以上の場合、低下ありとした。ステップテストは、高さ20 cmのステップ台に足の裏をなるべく素早く交互に8回タッチするよう求め、その所要時間を計測した。
5つの変数は、該当した場合を1点、該当しなかった場合を 0点とし、合計得点を算出し、これをリスクスコア(最小値:0、最大値:5)とした。リスクスコアは、臨床的な解釈が容易になるように3段階に分類して評価した(0点:低い、1点:中程度、2点以上:高い)。
OFRATスコアの予測妥当性は、従属変数を就業転倒と全転倒の有無、独立変数を3段階のグレード評価(0点を基準群)、性・年齢を調整変数として投入した二項ロジスティック回帰モデルを用いて検証した。
本研究の研究参加者は、国立長寿医療研究センターが実施する東浦研究と東京都健康長寿医療センターが実施する板橋健康長寿縦断研究に参加する者の内、月に4日以上の就業実績がある者で、本研究に対する参加同意を得られたものを研究参加者とした。なお、本報告書では、令和5年度に登録が完了した395名の内、追跡が完了した343名を解析対象とした。
アウトカム
令和5年度のベースライン調査から転倒・転落発生状況を一年間追跡した。
転倒・転落の定義は、「他人(自動車や自転車を含む)との衝突、意識消失、麻痺、てんかん発作などによる転倒を除き、不注意によって地面や地面より低い平面(階段下など)へ倒れること」とした。
全転倒は期間中に発生した全ての転倒を、就業転倒は就業中(就業場所への行き帰りを含む)の転倒について、それぞれ調査した。
研究参加者は、1)転倒・転落回数、2)転倒・転落日、3)転倒・転落の要因(躓いた、滑った、ふらついた、踏み外した、その他)、4)ケガの詳細(ケガなし、擦り傷・切り傷、打撲、捻挫、骨折、その他)について、1か月に一度はがきで報告するよう求められた。
OFRAT-5
OFRAT-5は、以下の5項目について評価した。
1) 過去一年間の転倒歴の有無
2) 糖尿病の有無
3) 転倒リスクを高める薬(睡眠薬、抗うつ薬など)の使用の有無
4) 主観的な聴力の低下の有無
5) 敏捷性の低下
主観的な聴力の低下は、「聴力の問題で仕事や日常生活に支障をきたすと感じることはどの程度ありますか?」と尋ね、「全くない、ほとんどない、たまにある、よくある、いつもある」の内、「よくある」または「いつもある」に該当した場合、聴力の低下ありとした。
敏捷性の低下は、ステップテストの所要時間が10秒以上の場合、低下ありとした。ステップテストは、高さ20 cmのステップ台に足の裏をなるべく素早く交互に8回タッチするよう求め、その所要時間を計測した。
5つの変数は、該当した場合を1点、該当しなかった場合を 0点とし、合計得点を算出し、これをリスクスコア(最小値:0、最大値:5)とした。リスクスコアは、臨床的な解釈が容易になるように3段階に分類して評価した(0点:低い、1点:中程度、2点以上:高い)。
OFRATスコアの予測妥当性は、従属変数を就業転倒と全転倒の有無、独立変数を3段階のグレード評価(0点を基準群)、性・年齢を調整変数として投入した二項ロジスティック回帰モデルを用いて検証した。
結果と考察
転倒発生情報
1年間の追跡期間中に、133名(38.8%)が少なくとも一回は転倒を経験し、48名(14.0%)が就業中に転倒を経験していた。
転倒・転落の要因としては、「躓いた」が最も多く(56.3%)、次いで「ふらついた」(19.6%)、「踏み外した」(9.5%)、「滑った」(7.0%)などが続いた。これらの要因は、身体的なバランス能力の低下や注意力の低下、作業環境の物理的リスクなど、複合的な要素が関与していると考えられる。また、転倒による外傷の約73%が「ケガなし」であった一方で、骨折(1.9%)や捻挫(0.7%)といった比較的重篤な外傷も一定数みられ、就労継続や日常生活への影響も無視できないことが示された。
OFRAT-5と転倒との関連
OFRAT-5のリスクスコアを曝露、一年間に発生した全転倒、就業転倒の有無をアウトカムとした二項ロジスティック回帰分析の結果、リスクのカテゴリが増加すると、転倒発生のオッズも増加した(オッズ比[95%信頼区間]、全転倒:中群1.83 [1.13–2.96]、高群2.34 [1.10–4.97]、就業転倒:中群1.32 [0.67–2.60]、高群2.06 [0.79–5.38])。全転倒においては、中リスク群と高リスク群でオッズ比の有意な上昇がみられた。就業転倒に関してもオッズ比が上昇する傾向がみられたものの、信頼区間が広く統計学的な有意性は確認されなかった。これは、就業中転倒の発生数が少なく統計学的な検出力が不足していたことや、作業環境・業務内容などの交絡因子が影響している可能性が考えられる。
1年間の追跡期間中に、133名(38.8%)が少なくとも一回は転倒を経験し、48名(14.0%)が就業中に転倒を経験していた。
転倒・転落の要因としては、「躓いた」が最も多く(56.3%)、次いで「ふらついた」(19.6%)、「踏み外した」(9.5%)、「滑った」(7.0%)などが続いた。これらの要因は、身体的なバランス能力の低下や注意力の低下、作業環境の物理的リスクなど、複合的な要素が関与していると考えられる。また、転倒による外傷の約73%が「ケガなし」であった一方で、骨折(1.9%)や捻挫(0.7%)といった比較的重篤な外傷も一定数みられ、就労継続や日常生活への影響も無視できないことが示された。
OFRAT-5と転倒との関連
OFRAT-5のリスクスコアを曝露、一年間に発生した全転倒、就業転倒の有無をアウトカムとした二項ロジスティック回帰分析の結果、リスクのカテゴリが増加すると、転倒発生のオッズも増加した(オッズ比[95%信頼区間]、全転倒:中群1.83 [1.13–2.96]、高群2.34 [1.10–4.97]、就業転倒:中群1.32 [0.67–2.60]、高群2.06 [0.79–5.38])。全転倒においては、中リスク群と高リスク群でオッズ比の有意な上昇がみられた。就業転倒に関してもオッズ比が上昇する傾向がみられたものの、信頼区間が広く統計学的な有意性は確認されなかった。これは、就業中転倒の発生数が少なく統計学的な検出力が不足していたことや、作業環境・業務内容などの交絡因子が影響している可能性が考えられる。
結論
OFRAT-5は、シルバー人材センター以外の集団においても、高齢労働者の転倒リスク評価に有用である可能性がある。今後は、新たに追加した研究参加者を含めて包括的に再解析する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2025-08-08
更新日
-