再生医療・細胞医療製剤に汎用可能な新規微量高感度品質管理・安全性検証システムの開発と製剤の規格化に関する研究

文献情報

文献番号
201006006A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療・細胞医療製剤に汎用可能な新規微量高感度品質管理・安全性検証システムの開発と製剤の規格化に関する研究
課題番号
H20-再生・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
森尾 友宏(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 則夫(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
  • 加藤 俊一(東海大学 医学部基盤診療学系再生医療科学)
  • 浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 伊藤 仁也(神鋼病院 血液病センター)
  • 中田 光(新潟大学 生命科学医療センター )
  • 吉江 弘正(新潟大学 医歯学総合研究科 摂食環境制御学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、[再生医療の安全性・品質管理に必要な4つのシステム]を開発し、検証することを目標としている。
研究方法
①マルチプレックスPCR, リアルタイムPCR, RDV法、次世代シークエンサを用いて微生物を高感度多項目迅速検出した。また新規マイコプラズマ検出系を開発した。②FACSや組織染色による微量細胞を用いたDNA損傷及び変異細胞の検出を行った。③ルミネックス法あるいはFACSにて標準製品規格を検証した。④移植マウス系で細胞毒性(有効性)を検証した。
結果と考察
開発したウイルス測定系は、技術移転した。試薬調製は外部委託可能になり、検査も外部施設に発注することが可能となった。マイコプラズマの検出については、複数のプライマーとプローブを用いる高感度なマルチプレックスPCR系を立ち上げ、体外診断薬承認に向けて検討を開始した。未知のウイルスにはRDV法を、培養T細胞でした。さらに簡便な細菌・真菌検出系として、BacT/ALERTシステムのバリデーションをおこなった。
DNA損傷修復反応については検出分子を拡大し検討した。実際には、ATM、p53のリン酸化、p21、H2AX,AIDの発現などを指標にして、フローサイトメトリーにて微量かつ高感度迅速で測定するシステムを確立した。付着細胞においては、免疫組織染色で各種DNA損傷修復関連分子を測定し、辺縁以外の細胞でのリン酸化ATMの発現や、リン酸化p53の検出は強力な増殖刺激、変異刺激の際にのみ検出されることを明らかにした。
ルミネックス法により、培養骨膜(増殖良好群、不良群、PMA刺激群)の培養上清で、多項目の生理活性物質を測定した。その結果、不適格な細胞培養上清にて検出されるサイトカインを明らかにした。
細胞毒性(有効性)検証系では、マウスを用いたシステムを確立した。また、培養細胞にマイコプラズマ感染させ、発現するmRNA、誘導されるシグナル伝達物質やサイトカインについて明らかにした。さらに長期培養において、腫瘍化への移行段階(とその指標)を検討した。
結論
最終年度にあたり、今までに開発してきたシステムを用いて、多種類かつ多数の再生医療・再生医療製剤を検討し、その中での課題や改良点を見いだすことができた。

公開日・更新日

公開日
2011-08-12
更新日
-

文献情報

文献番号
201006006B
報告書区分
総合
研究課題名
再生医療・細胞医療製剤に汎用可能な新規微量高感度品質管理・安全性検証システムの開発と製剤の規格化に関する研究
課題番号
H20-再生・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
森尾 友宏(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 則夫(東京医科歯科大学  難治疾患研究所)
  • 加藤 俊一(東海大学 医学部基盤診療学系再生医療科学 )
  • 浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部 )
  • 伊藤 仁也(神鋼病院 血液病センター)
  • 中田 光(新潟大学 生命科学医療センター )
  • 吉江 弘正(新潟大学 医歯学総合研究科 摂食環境制御学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
再生医療・細胞治療の実用化と普及に際して、加工製剤の品質管理システムの確立が必須である。本研究は、再生医療・細胞治療の場で汎用性のある、①高感度迅速多項目微生物検出系、②微量異常・変異細胞検出系、③標準調製細胞規格策定系、④有効性・毒性検出系、を開発・改良・検証することを目的として行われた。
研究方法
①マルチプレックスPCR, リアルタイムPCR, RDV法、次世代シークエンサを用いて50種類以上の微生物を測定する系を構築した。②DNA損傷応答やテロメア長をFACSや組織染色で解析した。③ルミネックス法/FACS法にて標準規格を策定した。④移植モデルマウス系を構築した。
結果と考察
【研究結果】検出可能な微生物の種類は50種類を越え、細菌、真菌をrRNAで同定する系も確立した。免疫担当細胞、培養口腔粘膜細胞にて測定すべきウイルスが明らかになった。微生物検査は各施設に技術移転し、実稼働させデータが集積した。マイコプラズマ検出法は既存の方法との比較し、単独検査として高感度網羅的に検出する系を確立した。
DNA損傷・変異細胞検出系では複数以上の分子を指標としたFACS及び免疫染色によるDNA損傷修復反応検出法を開発し、免疫担当細胞、口腔粘膜細胞、培養骨膜細胞などで検証を行った。細胞周期との同時解析やテロメア長の測定により、異常クローンの検出も試みた。
標準細胞規格策定では、FACS及びルミネックス法での検証を行った。培養法を改変した骨膜細胞や、変異誘導骨膜細胞などで多項目生理活性物質を測定し、変異細胞での生理活性物質を明らかにすると共に、製品標準書に記載する最適状態を規格化することを試みた。FACS法では、幹細胞自体がある分画に特定されること、幹細胞増殖を支持する細胞群が、実際の組織再生に重要であることなどを明らかにした。
免疫不全マウスへの細胞移植実験は、有効性検証に有用であった。培養増殖骨髄幹細胞や、髄核細胞の移植実験で、期待された通りの組織が形成された。SKY-FISHにおいて、腫瘍化・染色体異常の発生はないことが検証された。
結論
本研究では4つの柱がほぼ完成し、微生物検査については、検査キットのベンチャー企業での作成、検査会社における受託検査、施設に対する技術移転が行われた。将来的に再生医療・細胞治療分野の品質保証統一規格となることを期待する。

公開日・更新日

公開日
2011-08-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201006006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
高感度迅速多項目微生物検出系、微量異常・変異細胞検出系、標準調製細胞規格策定系、有効性・毒性検出系、を開発・改良・検証した。本研究は再生医療実現化ネットワークプログラム・技術開発個別課題に引き継がれて検討が行われている。微生物検出系の一部については技術移転が行われ、試薬会社からの再生医療用として販売されるに至った。微量異常・変異細胞検出系はDNA損傷修復反応を指標とした画期的な検査法を提唱した。
臨床的観点からの成果
再生医療・細胞医療に関与する細胞加工センターに対して、品質管理・安全管理について、特に高感度迅速多項目微生物検出系、微量異常・変異細胞検出系を中心に、技術指導及び検査導入支援を行い、大学や研究所以外にも企業でも検証されはじめている。安価・簡便かつ高感度な検査系が導入されたことは、同分野の臨床の進展において大きな成果をあげたものと考えている。
ガイドライン等の開発
再生医療・細胞医療に関与する細胞加工センターに対して、品質管理・安全管理について、特に高感度迅速多項目微生物検出系、微量異常・変異細胞検出系を中心に、技術指導及び検査導入支援を行い、実際に4施設以上において使用されるに至った。実際に再生医療・細胞治療製剤を提供する施設において安価・簡便かつ高感度な検査系が導入されたことは、同分野の臨床の進展において大きな成果をあげたものと考えている
その他行政的観点からの成果
「再生医療の制度的枠組みに関する検討会」委員として、細胞加工センターの現状について報告し、上記4つの取組みを紹介すると共に、品質管理・安全管理における高感度迅速多項目微生物検出系導入の重要性を指摘した。微生物検出系や遺伝的不安定性検証系は、現在省庁が支援する再生医療研究プログラムにおいてさらにキット化や自動化に関する研究へと進展し、将来的な標準化を目指している
その他のインパクト
厚生労働科学研究免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業の造血細胞移植関連班(研究代表者:加藤俊一、谷口修一、池原進)などの班会議やシンポジウムにおいて、細胞治療製剤の品質管理や、管理体制などについて発表を継続して行った。また日本再生医療学会、日本増結細胞移植学会、医薬品等ウイルス安全性シンポジウム、PMDA科学委員会などで、本研究班の成果や、品質管理の在り方について発表を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sugita S, Shimizu N, Watanabe K, et al.
Diagnosis of bacterial endophthalmitis by broad-range quantitative PCR.
Br J Haematol. , 95 , 345-349  (2011)
原著論文2
Iwata S, Wada K, Tobita S, et al.
Quantitative Analysis of Epstein-Barr Virus (EBV)-Related Gene Expression in Patients with Chronic Active EBV Infection.
J Gen Virol. , 91 , 42-50  (2010)
原著論文3
Miyagawa Y, Kiyokawa N, Ochiai N, et al.
Ex vivo expanded cord blood CD4 T lymphocytes exhibit a distinct expression profile of cytokine-related genes from those of peripheral blood origin.
Immunology. , 128 , 405-410  (2010)
原著論文4
Watanabe S, Maeda K, Suzuki K, et al.
Identification of a novel betaherpesvirus in bats using a rapid determination system for viral RNA sequences (RDV) Emerg.
Infect. Di , 16 , 986-988  (2010)
原著論文5
Watanabe S, Mizutani T, Sakai K, et al.
Development of a method to detect viral RNA sequences from cultured cells by combining size fraction and a rapid determination system for viral RNA sequences (RDV).
J. Vet. Sci. Tech. , 1  (2010)
原著論文6
Oda M, Toba K, Ozawa T, et al.
Establishment of culturing system for ex-vivo expansion of angiogenic immature erythroid cells, and its application for treatment of patients with chronic severe lower limb ischemia
Journal of Molecular and Cell Cardiology , 49 , 347-353  (2010)
原著論文7
Shimizu T, Kubota T, Nakasone N,et al.
Microarray and quantitative RT-PCR analyses in calcium-channel blockers induced gingival overgrowth tissues of periodontitis patients.
Arch Oral Biol. , 56 , 277-284  (2010)
原著論文8
Kawase T, Yamanaka K, Suda Y, et al.
Collagen-coated poly(L-lactide-co-ε-caprolactone) film: A promising scaffold for cultured periosteal sheets.
J Periodontol , 81 , 1653-1662  (2010)
原著論文9
Kawase T, Okuda K, Kogami H, et al.
Human periosteum-derived cells combined with superporous hydroxyapatite blocks used as an osteogenic bone substitute for periodontal regenerative therapy: Animal implantation study using nude mice.
J Periodontol , 81 , 420-427  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2015-06-16

収支報告書

文献番号
201006006Z