再生医療実用化に向けた細胞組織加工医薬品の安全性・品質等の確保に関する基盤技術開発研究

文献情報

文献番号
201006005A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療実用化に向けた細胞組織加工医薬品の安全性・品質等の確保に関する基盤技術開発研究
課題番号
H20-再生・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
山口 照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 青井 貴之(京都大学 物質-細胞統合システム拠点/iPS細胞研究センター)
  • 中内 啓光(東京大学 医科学研究所)
  • 早川 堯夫(近畿大学 薬学総合研究所)
  • 鈴木 和博(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部 )
  • 川崎 ナナ(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部 )
  • 石井 明子(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部 )
  • 内田 恵理子(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部 )
  • 佐藤 陽治(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部 )
  • 川端 健二(独立行政法人 医薬基盤研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
39,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
再生医療実用化に向け、細胞組織加工医薬品の安全性・品質等を確保するための、基盤技術開発を目指す。
研究方法
細胞の感染性因子汚染検出技術、遺伝的安定性評価手法、同等性評価法、新規免疫原性評価技術、特性解析・品質管理技術、の各技術の開発を行った。
結果と考察
1)細胞組織加工医薬品のウイルス安全性確保の一環として、E型肝炎ウイルスの核酸増幅検査による測定の評価に用いる標準パネルを樹立した。
2)ナノLC-MSを用いた高感度分析により、ハイスループットなプロテオーム解析が可能となり、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)に特徴的な表面CDマーカーを網羅的に検出できることを明らかにした。
3)LC/MSにより得られたヒトMSC 及びMSC を分化誘導した細胞の糖鎖プロファイルの主成分分析により分化を評価する方法として利用可能であることを見出した。
4)CXCL12発現アデノウイルス(Ad)またはVEGF Adベクター投与が、ヒト造血幹細胞移植効率を向上させる技術として有用である可能性を示した。また、ES、iPS細胞へAdベクターを用いてHoxB4遺伝子を導入することにより効率良く血液細胞を誘導可能であることを見出した。
5)細胞特性評価指標の探索法としてDNAマイクロアレイを応用し、発現量がヒトMSCの虚血(低酸素低グルコース)ストレス化下でのVEGF分泌と相関する遺伝子、すなわち虚血応答性VEGF分泌の指標となり得る因子を同定した。
6)2種類存在することが知られているヒト血管内皮前駆細胞(early EPC及びlate EPC)の血管形成促進機構に関する検討を行い、early EPCの遊走にp110delta PI3Kが関与していること、及び、late EPCの管腔形成にオクルディンが関与していることを見出した。
7)O-結合型糖鎖とグリコサミノグリカン型糖鎖の比較糖鎖プロファイリング技術により、細胞の特性解析、同定・確認、細胞間の差異、品質管理、細胞の機能と細胞を構成する糖タンパク質の関係、さらには各種疾患における原因糖鎖や疾患マーカーの探索など、きわめて広範囲に応用できる可能性を明らかにした。
結論
感染性危険因子の高感度・高精度検出法や細胞組織加工医薬品の造腫瘍性・遺伝的安定性・同等性評価手法、あるいは細胞の特性解析、製造方法の妥当性や品質規格の設定に関する手法が確立できた。

公開日・更新日

公開日
2011-07-15
更新日
-

文献情報

文献番号
201006005B
報告書区分
総合
研究課題名
再生医療実用化に向けた細胞組織加工医薬品の安全性・品質等の確保に関する基盤技術開発研究
課題番号
H20-再生・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
山口 照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 山中 伸弥 (京都大学 物質-細胞統合システム拠点/再生医科学研究所)
  • 中川 誠人(京都大学 再生医科学研究所)
  • 青井 貴之(京都大学 物質-細胞統合システム拠点/iPS細胞研究センター)
  • 中内 啓光(東京大学 医科学研究所)
  • 早川 堯夫(近畿大学 薬学総合研究所)
  • 鈴木 和博(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
  • 川崎 ナナ(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 石井 明子(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 内田 恵理子(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
  • 佐藤 陽治(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
  • 川端 健二(独立行政法人 医薬基盤研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
再生医療実用化に向け、細胞・組織加工医薬品の安全性・品質等を確保するための、基盤技術開発を目指す。
研究方法
細胞の感染性因子汚染検出技術、遺伝的安定性評価手法、同等性評価法、新規免疫原性評価技術、特性解析・品質管理技術、の各技術の開発を行った。
結果と考察
1)細胞組織加工医薬品の安全性確保の一環として、パルボウイルスB19のin vitro持続感染系を確立、E型肝炎ウイルスの核酸増幅検査の評価に用いる標準パネルの作成、マイコプラズマのPCR法3種類と酵素法による迅速検査法の有用性を検討した。
2)ナノLC-MSを用いたショットガンプロテオミクスを用いた網羅的発現解析により、ヒト間葉系幹細胞(MSC)に特徴的な表面CDマーカーを網羅的に検出できることを明らかにした。
3)ナノLC/MSを利用したN-結合型糖鎖プロファイルの主成分分析により、ヒトMSC 及びMSC より分化誘導した細胞の特性指標を評価する方法として有用であることを見出した。
4)免疫原性評価のための基盤技術として、CXCL12発現アデノウイルス(Ad)またはVEGF Adベクター投与が、ヒト造血幹細胞移植効率を向上させる技術として有用である可能性を示した。
5)細胞特性評価指標の探索法としてDNAマイクロアレイや抗体アレイを用いて、発現量がヒトMSCの虚血ストレス化下でのVEGF分泌と相関する因子を同定すると共に、サイトカイン分泌プロファイルの有用性を明らかにした。
6)2種類のヒト血管内皮前駆細胞(early EPC及びlate EPC)の血管形成促進機構に関する検討を行い、early EPCの遊走にp110delta PI3Kが関与していることと細胞膜に発現するMMP-9及びMMP-2がその特性指標となること、さらにlate EPCの管腔形成にオクルディンが関与していることを見出した。
7)O-結合型糖鎖とグリコサミノグリカン型糖鎖の比較糖鎖プロファイリング技術により、細胞の特性解析、同定・確認、細胞間の差異、品質管理等に、広範囲に応用できる可能性を明らかにした。
8)細胞組織加工医薬品に供する細胞資源としてのヒトiPS細胞の同一性・同等性評価法の開発、特性解析法の開発を目的として様々な年齢の日本人の線維芽細胞から樹立したiPS細胞を解析し、ES細胞との類似性を明らかにした。
結論
感染性危険因子の高感度・高精度検出法や細胞組織加工医薬品の造腫瘍性・遺伝的安定性・同等性評価手法、あるいは細胞の特性解析、製造方法の妥当性や品質規格の設定に関する手法が確立できた。

公開日・更新日

公開日
2011-07-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-01-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201006005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
感染因子の試験法やその評価法、血管内皮前駆細胞や間葉系幹細胞等をモデルとして特性指標の解析及びその試験法の設定のあり方については論文等で発表し、広く公開してきている。
臨床的観点からの成果
本研究は臨床研究を目指したものではなかったが、臨床研究等に用いる細胞の特性解析、品質管理、安全性評価のための基本的な考え方について有用な情報を提供できた。さらに、ウイルスやマイコプラズマ否定試験の評価法や評価のための標準品の利用、細胞の特性解析指標の探索方法と探索した指標の評価法、細胞の同等性試験のあり方などについて基本的考え方を提示することができ、臨床試験への応用が広がることが期待される。
ガイドライン等の開発
直接ガイドラインの作成を意図した研究ではなかったが、研究から得られた考え方は「ヒト幹細胞臨床研究指針」(2010)の改定にも参考にした。特に、細胞の特性解析、ウイルス安全性などに関して「ヒト幹細胞臨床研究指針」にできるだけ盛り込むようにした。
その他行政的観点からの成果
ヒト幹細胞臨床研究評価委員会では、すでに申請された多くの臨床研究の審査を行い答申を行っているが、これらの審査においても研究から得られた成果を参考にして審査を実施している。
その他のインパクト
シンポジウムやワークショップでの議論を通じて、研究で得られた成果について、その考え方を紹介してきている。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
49件
その他論文(和文)
29件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
142件
学会発表(国際学会等)
27件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計4件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ken Nishimura, Masayuki Sano, Manami Ohtaka, et al
Development of defective and persistent sendai virus vector: a unique gene delivery/expression system ideal for cell reprogramming.
J Biol Chem , 286 , 4760-4771  (2011)
原著論文2
Yamaguchi T, Suzuki T, Arai H, et al
Continuous mild heat stress induces differentiation of mammalian myoblasts, shifting fiber-type from fast to slow.
Am J Physiol Cell Physiol. , 298 , 140-148  (2010)
原著論文3
Inamura M., Kawabata K., Takayama K., et al
Efficient generation of hepatoblasts from human ES cells and iPS cells by transient overexpression of homeobox gene HEX.
Mol Ther. , 10 , 400-407  (2011)
原著論文4
Yamada K, Hyodo S, Kinoshita M, et al
Hyphenated technique for releasing and MALDI MS analysis of O-glycans in mucin-type glycoprotein samples.
Anal Chem. , 82 (17) , 7436-7443  (2010)
原著論文5
Kinoshita M, Kakoi N, Matsuno YK, et al
Determination of sulfate ester content in sulfated oligo- and poly-saccharides by capillary electrophoresis with indirect UV detection.
Biomed Chromatogr. , 25 (5) , 588-593  (2011)
原著論文6
Noritaka Hashii, Nana Kawasaki, Satsuki Itoh, et al
Alteration of N-glycosylation in the kidney of systemic lupus erythematosus model mouse. Relative quantification of N-glycans by using isotope tagging method.
Immunology , 126 (3) , 336-345  (2009)
原著論文7
Tashiro K., Inamura M., Kawabata K., et al
Efficient adipocyte and osteoblast differentiation from mouse induced pluripotent stem cells by adenoviral transduction.
Stem Cells , 27 , 1802-1811  (2009)
原著論文8
Takuo Suzuki, Akiko Ishii-Watabe, Minoru Tada, et al
Importance of FcRn in regulating the serum half-life of therapeutic proteins containing the Fc domain of human IgG1: A comparative study of the affinity of monoclonal antibodies and Fc-fusion proteins to human FcRn.
J.Immunol. , 184 (4) , 1968-1976  (2010)
原著論文9
Yamada K, Watanabe S, Kita S, et al
Determination of Tn antigen released from cultured cancer cells by capillary electrophoresis.
Anal Biochem. , 396 (1) , 161-163  (2010)
原著論文10
Kinoshita M, Ohta H, Higaki K, et al
Structural characterization of multibranched oligosaccharides from seal milk by a combination of off-line high-performance liquid chromatography-matrix-assisted laser desorption / ionization-time-of-flight mass spectrometry and sequential
Anal Biochem. , 388 (2) , 242-253  (2009)
原著論文11
Itoh S, Hachisuka A, Kawasaki N, et al
Glycosylation analysis of IgLON family proteins in rat brain by liquid chromatography and multiple-stage mass spectrometry.
Biochemistry , 47 , 10132-10154  (2008)
原著論文12
Aiba K, Nedorezov T, Piao Y, et al
Defining developmental potency and cell lineage trajectories by expression profiling of differentiating mouse embryonic stem cells.
DNA Res. , 16 , 73-80  (2009)
原著論文13
Nishida M, Sato Y, Uemura A, et al
P2Y6 receptor-Galpha12/13 signaling in cardiomyocytes triggers pressure overload-induced cardiac fibrosis.
EMBO J. , 27 , 3104-3115  (2008)
原著論文14
Sakurai F, Nakamura SI, Akitomo K, et al
Adenovirus serotype 35 vector-mediated transduction following direct administration into organs of nonhuman primates.
Gene Ther. , 16 , 297-302  (2009)
原著論文15
Hashii N, Kawasaki N, Itoh S, et al
Alteration of N-glycosylation in the kidney in a mouse model of systemic lupus erythematosus: relative quantification of N-glycans using an isotope-tagging method.
Immunology. , 126 , 336-345  (2008)
原著論文16
Tanabe S, Sato Y, Suzuki T, et al
Gene expression profiling of human mesenchymal stem cells for identification of novel markers in early- and late-stage cell culture.
J Biochem. , 144 , 399-408  (2008)
原著論文17
Harazono A, Kawasaki N, Itoh S, et al
Simultaneous glycosylation analysis of human serum glycoproteins by high-performance liquid chromatography/tandem mass spectrometry.
J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci. , 869 , 20-30  (2008)
原著論文18
Sakurai F, Nakamura S, Akitomo K, et al
Transduction properties of adenovirus serotype 35 vectors after intravenous administration into nonhuman primates.
Mol Ther. , 16 , 726-733  (2008)
原著論文19
Kiyonaka S, Kato K, Nishida M, et al
Selective and direct inhibition of TRPC3 channels underlies biological activities of a pyrazole compound.
Proc Natl Acad Sci USA. , 106 , 5400-5405  (2009)
原著論文20
Okita K, Nakagawa M, Hong H, et al
Generation of mouse induced pluripotent stem cells without viral vectors.
Science. , 322 , 949-953  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201006005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
39,750,000円
(2)補助金確定額
39,750,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
預金利息

公開日・更新日

公開日
2015-06-17
更新日
-