文献情報
文献番号
202421063A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全に資する医療情報の拡充に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24IA2015
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
滝沢 牧子(埼玉医科大学 総合医療センター 医療安全管理学)
研究分担者(所属機関)
- 武田 理宏(大阪大学大学院医学系研究科 情報統合医学講座 医療情報学)
- 横田 慎一郎(国立大学法人千葉大学 大学院看護学研究院)
- 岡田 佳築(国立大学法人 大阪大学 医学部附属病院)
- 北村 温美(大阪大学医学部附属病院 中央クオリティマネジメント部)
- 中山 典幸(群馬大学医学部附属病院 薬剤部)
- 橋詰 淳哉(長崎大学 病院(医学系) 薬剤部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
4,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
政府が推進する医療DXの一環として、2027年度に本稼働予定の「電子カルテ情報共有サービス」では、薬剤アレルギー等情報およびその他アレルギー等情報の多施設間共有が予定されている。これらの情報の適切な利活用は、医療の効率化のみならず、医療安全に資する重要な取り組みである。一方で、現時点ではアレルギー等情報の登録方法や定義に関する標準的なルールが整備されておらず、情報の正確性や共有時のリスクが課題となっている。そこで本研究では、電子カルテ情報共有サービスにおけるアレルギー等情報の安全かつ有効な利活用を推進するため、必要な入力項目やその定義、情報の粒度やコードの適用等、共有時の留意点を整理し、標準化に向けた具体的な提言を取りまとめることを目的とした。
研究方法
本研究は、医療安全や病院情報システムの専門家によって構成される研究班が、日本医療情報学会および医療の質・安全学会の合同委員会と連携し実施した。
調査は以下の4つの側面から実施された。①医療機関におけるアレルギー情報の登録実態調査、およびJ-FAGYコードの検証、②薬剤・食物アレルギー情報の入力項目と定義に関する検討、③既存データの引継ぎに関する課題と電子カルテベンダーへのヒアリング調査、④アラート疲労の実態とその影響に関する検討である。加えて、HL7 FHIR形式の電子カルテ情報共有サービス仕様への対応も視野に入れ、国際標準規格との整合性を踏まえた項目設定と運用ルールについて議論を行った。
調査は以下の4つの側面から実施された。①医療機関におけるアレルギー情報の登録実態調査、およびJ-FAGYコードの検証、②薬剤・食物アレルギー情報の入力項目と定義に関する検討、③既存データの引継ぎに関する課題と電子カルテベンダーへのヒアリング調査、④アラート疲労の実態とその影響に関する検討である。加えて、HL7 FHIR形式の電子カルテ情報共有サービス仕様への対応も視野に入れ、国際標準規格との整合性を踏まえた項目設定と運用ルールについて議論を行った。
結果と考察
調査の結果、薬剤アレルギー等情報や食物アレルギー等情報の登録方法や粒度は医療機関ごとに大きく異なり、共有時にリスクとなる可能性があることが明らかとなった。特に、薬剤においては系統単位ではなく個別医薬品コード(YJコード)での登録・共有が望ましく、情報過多や誤解を防ぐうえで重要であることが確認された。
また、アレルゲン情報の多くが自由記載で登録されている現状に対し、日本で開発されたアレルゲンコード「J-FAGYコード」を用いることで、91.5%が記述可能であることが実証され、標準化への有効性が示された。さらに、食物アレルギー情報についても、選択項目の粒度や運用方法にばらつきがあり、今後の実装に向けて給食部門等を含む現場の実態把握と調整が必要である。
電子カルテ共有サービスによる情報活用にあたっては、責任の所在を明確にし、登録情報を「参照情報」として扱う体制とともに、医療機関ごとの教育・運用の継続が不可欠である。アラート疲労に関する検討では、共有情報の増加が不要なアラートを増やすことで本来重要なアラートの見逃しにつながるリスクも指摘され、アラートの制御設計も重要な課題であることが確認された。
また、アレルゲン情報の多くが自由記載で登録されている現状に対し、日本で開発されたアレルゲンコード「J-FAGYコード」を用いることで、91.5%が記述可能であることが実証され、標準化への有効性が示された。さらに、食物アレルギー情報についても、選択項目の粒度や運用方法にばらつきがあり、今後の実装に向けて給食部門等を含む現場の実態把握と調整が必要である。
電子カルテ共有サービスによる情報活用にあたっては、責任の所在を明確にし、登録情報を「参照情報」として扱う体制とともに、医療機関ごとの教育・運用の継続が不可欠である。アラート疲労に関する検討では、共有情報の増加が不要なアラートを増やすことで本来重要なアラートの見逃しにつながるリスクも指摘され、アラートの制御設計も重要な課題であることが確認された。
結論
本研究では、電子カルテ情報共有サービスにおいて共有される薬剤アレルギー等情報およびその他アレルギー等情報の運用に向けて、①薬剤アレルギー等情報の入力に関する提言、②その他アレルギー等情報の入力に関する提言、③既存情報の出力方法に関する提言の3点を取りまとめた。これらの成果は、電子カルテベンダー向けの技術解説書作成にも活用されており、今後の制度設計やサービス実装の基盤となることが期待される。アレルギー等情報を安全に利活用するには、コードの整備と共通認識のもとで正確な情報を登録・共有する体制の構築が不可欠であり、本研究はそのための具体的手がかりを提供するものである。
公開日・更新日
公開日
2025-08-19
更新日
2025-09-29