末梢血単核球移植による血管再生治療と次世代の再生医療を目指した基盤研究

文献情報

文献番号
201006004A
報告書区分
総括
研究課題名
末梢血単核球移植による血管再生治療と次世代の再生医療を目指した基盤研究
課題番号
H20-再生・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
小室 一成(大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 南野徹(千葉大学大学院医学研究院 循環病態医科学)
  • 宮内秀行(千葉大学大学院医学研究院 循環病態医科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
41,958,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々はこれまでに末梢血単核球を用いた血管新生治療について基礎研究を重ねてきた。その結果、末梢血単核球は高度な血管新生効果を持つこと、その効果は骨髄由来の単核球と比較して、勝るとも劣らないことを見出した。重症末梢性動脈疾患を対象とした臨床研究を2002年7月より開始し、以後これまでに90例以上に対して本治療を行い、その安全性と有効性を確認した。そこで本研究では、末梢血単核球を用いた血管新生治療の安全性や有効性をさらに確認するため、重症間欠性跛行症例、重症虚血性心疾患症例に対してプラセボをコントロールとした2重盲験試験を行う。さらに動物モデルを用いた基礎的な研究も進めることによって、次世代の血管再生治療の開発、治療効果の予想指標の解明を行う。
研究方法
本研究では、末梢血単核球を用いた血管新生治療の有効性をさらに確認するため、重症間欠性跛行症例、重症虚血性心疾患症例に対してプラセボをコントロールとした2重盲験試験を行う。さらに動物モデルを用いた基礎的な研究も進めることによって、次世代の血管再生治療の開発、治療効果の予想指標の解明を行う。
結果と考察
末梢性血管疾患による重症間欠性跛行を有するが、従来の内科および外科的治療にても症状が改善せず、将来的に虚血症状の悪化が見込まれる症例に対する臨床試験については、その登録を開始した。初期の12症例における検討では、本治療の安全性と有効性が示唆された。
 重症虚血性心疾患に対する末梢血単核球細胞移植による血管再生治療に関しては、プラセボコントロール試験に先駆けて、まず用量エスカレーション試験を施行することが、臨床研究の評価委員会で決定されたため、プロトコールの一部を変更した。全例において、細胞移植を行う方針とし、登録を開始した。初期の18症例における検討では、本治療と因果関係が疑われる有害事象の報告はなかった。

結論
初期の症例の検討では、本治療の安全性と有効性が示唆された。本研究により重症虚血性心血管疾患に対する有効性が確定すれば、エビデンスのある血管再生治療として多施設において臨床応用を進めることができると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-25
更新日
-

文献情報

文献番号
201006004B
報告書区分
総合
研究課題名
末梢血単核球移植による血管再生治療と次世代の再生医療を目指した基盤研究
課題番号
H20-再生・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
小室 一成(大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 南野徹(千葉大学大学院医学研究院 循環病態医科学)
  • 宮内秀行(千葉大学大学院医学研究院 循環病態医科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々はこれまでに末梢血単核球を用いた血管新生治療について基礎研究を重ねてきた。その結果、末梢血単核球は高度な血管新生効果を持つこと、その効果は骨髄由来の単核球と比較して、勝るとも劣らないことを見出した。重症末梢性動脈疾患を対象とした臨床研究を2002年7月より開始し、以後これまでに90例以上に対して本治療を行い、その安全性と有効性を確認した。そこで本研究では、末梢血単核球を用いた血管新生治療の安全性や有効性をさらに確認するため、重症間欠性跛行症例、重症虚血性心疾患症例に対してプラセボをコントロールとした2重盲験試験を行う。さらに動物モデルを用いた基礎的な研究も進めることによって、次世代の血管再生治療の開発、治療効果の予想指標の解明を行う。
研究方法
本研究では、末梢血単核球を用いた血管新生治療の有効性をさらに確認するため、重症間欠性跛行症例、重症虚血性心疾患症例に対してプラセボをコントロールとした2重盲験試験を行う。さらに動物モデルを用いた基礎的な研究も進めることによって、次世代の血管再生治療の開発、治療効果の予想指標の解明を行う。
結果と考察
末梢性血管疾患による重症間欠性跛行を有するが、従来の内科および外科的治療にても症状が改善せず、将来的に虚血症状の悪化が見込まれる症例に対する臨床試験については、その登録を開始した。初期の12症例における検討では、本治療の安全性と有効性が示唆された。
 重症虚血性心疾患に対する末梢血単核球細胞移植による血管再生治療に関しては、プラセボコントロール試験に先駆けて、まず用量エスカレーション試験を施行することが、臨床研究の評価委員会で決定されたため、プロトコールの一部を変更した。全例において、細胞移植を行う方針とし、登録を開始した。初期の18症例における検討では、本治療と因果関係が疑われる有害事象の報告はなかった。

結論
初期の症例の検討では、本治療の安全性と有効性が示唆された。本研究により重症虚血性心血管疾患に対する有効性が確定すれば、エビデンスのある血管再生治療として多施設において臨床応用を進めることができると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201006004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
末梢血単核球移植による血管再生医療は、重症下肢虚血だけではなく、重症間欠性跛行症例においてその有効性が2重盲験試験によって示唆されたことから、今後適応の拡大の根拠になりうる。重症虚血性心疾患症例においても安全性が確認されたことから、学術的意義は高いと思われる。
臨床的観点からの成果
末梢血単核球移植による血管再生医療は、重症間欠性跛行症例においても有効性が示唆された。また、重症虚血性心疾患症例においても安全性が確認された。特に高用量の細胞治療では、心機能の改善傾向が認められている。現在すべての症例登録が終了し、フォローアップデータを収集・解析している。
ガイドライン等の開発
末梢血単核球移植による血管再生医療は、本研究によってその安全性や有効性が示唆され、今後治療のオプションになっていくものと思われる。
その他行政的観点からの成果
本治療の標準化は、これまで下肢切断による寝たきりを余儀なくされていた症例において救肢の可能性があり、医療行政上も好ましいものと考えられた。また、重症虚血性心疾患症例に対する効果は、行政的観点からも重要な成果といえる。
その他のインパクト
本治療は読売新聞医療ルネッサンス等に掲載され、その安全性や有効性について大きな反響があった。

発表件数

原著論文(和文)
82件
原著論文(英文等)
43件
その他論文(和文)
44件
その他論文(英文等)
73件
学会発表(国内学会)
39件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Zhu W, Shiojima I, Ito Y, et al
IGFBP-4 is an inhibitor of canonical Wnt signalling required for cardiogenesis
Nature , 454 , 345-349  (2008)
原著論文2
Minamino T, and Komuro I
Vascular aging: insights from studies on cellular senescence, stem cell aging, and progeroid syndromes
Nat Clin Pract Cardiovasc Med , 5 , 637-648  (2008)
原著論文3
Toko H, Minamino T, and Komuro I
Role of heart shock transcriptional factor 1 and heart shock proteins in cardiac hypertrophy
Trends Cardiovasc Med , 18 , 88-93  (2008)
原著論文4
Monzen K, Ito Y, Naito AT, etl al
A crucial role of a high mobility group protein HMGA2 in cardiogenesis
Nat Cell Biol , 10 , 567-574  (2008)
原著論文5
Nishi J, Minamino T, Miyauchi H, et al
Vascular endothelial growth factor receptor-1 regulates postnatal angiogenesis through inhibition of the excessive activation of Akt
Circ Res , 103 , 261-268  (2008)
原著論文6
Ito K, Akazawa H, Tamagawa M, etl al
PDK1 coordinates survival pathways and beta-adrenergic response in the heart
Proc Natl Acad Sci USA , 106 , 8689-8694  (2009)
原著論文7
Akazawa H, Komuro I
“Change Can Happen” by PKA: Proteasomes in in vivo Hearts
J Mol Cell Cardiol , 46 , 445-447  (2009)
原著論文8
Akazawa H, Yasuda H, Komuro I
Mechanisms and functions of agonist-independent activation in the angiotensin II type 1 receptor. Mol Cell Endocrinol
Mol Cell Endocrinol , 302 , 140-147  (2009)
原著論文9
Minamino T, Orimo M, Shimizu I, et al
A crucial role for adipose tissue p53 in the regulation of insulin resistance
Nat Med , 15 , 1082-1087  (2009)
原著論文10
Qin Y, Yasuda N, Akazawa H, etl al
Multivalent ligand-receptor interactions elicit inverse agonist activity of AT(1) receptor blockers against stretch-induced AT(1) receptor activation
Hypertens Res , 32 , 875-883  (2009)
原著論文11
Kayama Y, Minamino T, Toko H, et al
Cardiac 12/15 lipoxygenase-induced inflammation is involved in heart failure
J Exp Med , 206 , 1565-1574  (2009)
原著論文12
Liao CH, Akazawa H, Tamagawa M, et al
Cardiac mast cells cause atrial fibrillation through PDGF-A-mediated fibrosis in pressure- overloaded mouse hearts
J Clin Invest , 120 , 242-253  (2010)
原著論文13
Moriya J, Minamino T, Tateno K, et al
Inhibition of semaphorin as a novel strategy for therapeutic angiogenesis
Circ Res , 106 , 391-398  (2010)
原著論文14
Shimizu I, Minamino T, Toko H, et al
Excessive cardiac insulin signaling exacerbates systolic dysfunction induced by pressure overload in rodents
J Clin Invest , 120 , 1506-1514  (2010)
原著論文15
Naito AT, Okada S, Minamino T, et al
Promotion of CHIP-mediated p53 degradation protects the heart from ischemic injury
Circ Res , 106 , 1692-1702  (2010)
原著論文16
Ueda K, Takano H, Niitsuma Y, et al
Sonic hedgehog is a critical mediator of erythropoietin-induced cardiac protection in mice
J Clin Invest , 120 , 2016-2029  (2010)
原著論文17
Shioyama W, Nakaoka Y, Higuchi K, et al
Docking Protein Gab1 Is an Essential Component of Postnatal Angiogenesis After Ischemia via HGF/c-Met Signaling
Circ Res , 108 , 664-675  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201006004Z