文献情報
文献番号
202421053A
報告書区分
総括
研究課題名
地域において安心して妊娠・子育てが可能となる安全な周産期医療体制の構築のための政策研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24IA2005
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 聖子(九州大学大学院医学研究院 生殖病態生理学 )
研究分担者(所属機関)
- 城戸 咲(九州大学病院 総合周産期母子医療センター)
- 池田 すばる(九州大学大学院医学研究院 保健学部門)
- 加藤 育民(旭川医科大学 産婦人科)
- 杉山 隆(国立大学法人愛媛大学 大学院医学系研究科)
- 池田 智明(国立大学法人三重大学 医学系研究科)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
2,208,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本邦の周産期医療体制においては、少子化の進行により分娩を取り扱う診療所は減少傾向にあり、周産期母子医療センターでは今後ハイリスクでない分娩の集約化の受け皿としての役割も求められることとなる。令和6年度より完全施行となった働き方改革により地域の産科医師の労働力は減少することが見込まれ、さらなる医療資源の適切な集約化・重点化が喫緊の課題となっている。
そこで本研究では1)地域の実情に応じた分娩機能の集約化・重点化の好事例収集、要素分析、類型化、2)各々の類型について、周産期医療の集約化に際して行政の施策立案に必要となるマイルストーンを明示したガイドライン案の策定、3)類型判断およびガイドライン案の使用等につき都道府県にヒアリングを行い、各都道府県がどの類型に相当するかのマッチングを行うことにより、都道府県ごとの提案を行いつつ、周産期医療における第8次医療計画の中間見直しおよび第9次医療計画の議論に向けた問題点の抽出および策定に繋がる提言の3つを行い、都道府県における適切な集約化・重点化を通じた安全な周産期医療提供体制を構築することを目的とした。
そこで本研究では1)地域の実情に応じた分娩機能の集約化・重点化の好事例収集、要素分析、類型化、2)各々の類型について、周産期医療の集約化に際して行政の施策立案に必要となるマイルストーンを明示したガイドライン案の策定、3)類型判断およびガイドライン案の使用等につき都道府県にヒアリングを行い、各都道府県がどの類型に相当するかのマッチングを行うことにより、都道府県ごとの提案を行いつつ、周産期医療における第8次医療計画の中間見直しおよび第9次医療計画の議論に向けた問題点の抽出および策定に繋がる提言の3つを行い、都道府県における適切な集約化・重点化を通じた安全な周産期医療提供体制を構築することを目的とした。
研究方法
研究初年度である令和6年度は、地域の実情把握と好事例収集のための下記の調査を行った。1,3,4は全都道府県・市区町村の周産期医療担当者を対象に、2,3,4は全周産期母子医療センターの産科責任者を対象に、WEBアンケートで調査を行った。またアンケート回答者への負担軽減のため、厚生労働省医政局地域医療計画課が行った周産期医療体制調査や日本産婦人科医会の調査について情報共有をいただき解析に使用した。
1.各地域における分娩施設へのアクセスについての調査
2.周産期基幹施設(周産期母子医療センター)のマンパワーについての調査
3.分娩集約化に対する意識調査
4.取り組みの好事例収集
(倫理面への配慮)
WEBアンケート回答時に研究内容と結果公表についての説明文を添付し、同意を得た。
1.各地域における分娩施設へのアクセスについての調査
2.周産期基幹施設(周産期母子医療センター)のマンパワーについての調査
3.分娩集約化に対する意識調査
4.取り組みの好事例収集
(倫理面への配慮)
WEBアンケート回答時に研究内容と結果公表についての説明文を添付し、同意を得た。
結果と考察
アンケート回答率は都道府県で100%、市区町村で55%、周産期母子医療センターで54%(総合86%, 地域42%)であった。
1.地域における分娩施設へのアクセスについての調査
以下の項目について該当する地域があるかを「ある、ない、把握していない」で回答を得た。
① 妊産婦の自宅から最寄りの分娩施設まで30分以上かかる
② 妊産婦の自宅から最寄りの分娩施設まで60分以上かかる
③ 分娩施設から最寄りの搬送先基幹施設まで30分以上かかる
④ 分娩施設から最寄りの搬送先基幹施設まで60分以上かかる
⑤ その他のアクセスの問題がある
都道府県は43地域が「ある」1地域が「ない」、3地域が「把握していない」と回答した。市区町村はすべての都道府県で「ある」と回答した地域があった。全国的には、各市区町村で「ある」が平均64.7%、「ない」が平均33%、「把握していない」が2%であった。
2.周産期基幹施設(周産期母子医療センター)のマンパワーについての調査
各施設におけるフルタイム勤務の産婦人科医師数(常勤・非常勤は不問)の全国平均は12.4人であった。ただし東京都など人口の多い地域で平均を引き上げており、都道府県平均としては全国平均を下回る地域が28県あった。育児中でフルタイム勤務の医師は、施設ごとの平均で9%であった。当直体制については都道府県間の傾向は明らかでなかったが、全国平均で月5回程度あり、依然週1回以上の当番を行っている施設が多かった。マンパワーについては都道府県ごとの傾向よりは各施設で状況が異なり、同じ都道府県内の施設同士でどう協力分担していくかについて解析を深める必要がある。
3.分娩集約化に対する意識調査
分娩集約化には「対応できる」と答えた施設が非常に多かった。周産期母子医療センターでは分娩集約化の必要性を強く感じており、その責務を担う意思があることを示している。集約化が必要な理由として、都道府県・市区町村調査では「分娩施設の減少」が最も多く、周産期母子医療センターでは「より安全性の高い周産期管理」「医師の労働状況改善」に意見が集まった。
4.取り組みの好事例収集
安全な周産期医療体制構築のために各地域で行っている取り組みについては、都道府県では交通・宿泊補助、母体搬送システムの構築が多かった。
1.地域における分娩施設へのアクセスについての調査
以下の項目について該当する地域があるかを「ある、ない、把握していない」で回答を得た。
① 妊産婦の自宅から最寄りの分娩施設まで30分以上かかる
② 妊産婦の自宅から最寄りの分娩施設まで60分以上かかる
③ 分娩施設から最寄りの搬送先基幹施設まで30分以上かかる
④ 分娩施設から最寄りの搬送先基幹施設まで60分以上かかる
⑤ その他のアクセスの問題がある
都道府県は43地域が「ある」1地域が「ない」、3地域が「把握していない」と回答した。市区町村はすべての都道府県で「ある」と回答した地域があった。全国的には、各市区町村で「ある」が平均64.7%、「ない」が平均33%、「把握していない」が2%であった。
2.周産期基幹施設(周産期母子医療センター)のマンパワーについての調査
各施設におけるフルタイム勤務の産婦人科医師数(常勤・非常勤は不問)の全国平均は12.4人であった。ただし東京都など人口の多い地域で平均を引き上げており、都道府県平均としては全国平均を下回る地域が28県あった。育児中でフルタイム勤務の医師は、施設ごとの平均で9%であった。当直体制については都道府県間の傾向は明らかでなかったが、全国平均で月5回程度あり、依然週1回以上の当番を行っている施設が多かった。マンパワーについては都道府県ごとの傾向よりは各施設で状況が異なり、同じ都道府県内の施設同士でどう協力分担していくかについて解析を深める必要がある。
3.分娩集約化に対する意識調査
分娩集約化には「対応できる」と答えた施設が非常に多かった。周産期母子医療センターでは分娩集約化の必要性を強く感じており、その責務を担う意思があることを示している。集約化が必要な理由として、都道府県・市区町村調査では「分娩施設の減少」が最も多く、周産期母子医療センターでは「より安全性の高い周産期管理」「医師の労働状況改善」に意見が集まった。
4.取り組みの好事例収集
安全な周産期医療体制構築のために各地域で行っている取り組みについては、都道府県では交通・宿泊補助、母体搬送システムの構築が多かった。
結論
分娩集約化に関して都道府県・市区町村ではやはりアクセスの問題が最も大きく多くの地域で取り組みが検討されているが、医師や病床など医療資源の確保に関わっている地域は少ない。周産期母子医療センターでは労働状況、とくに時間外体制について安全な周産期医療体制のために改善すべき点が多く残されている一方、地域の分娩集約化を担う意思が多くの施設でみられた。
公開日・更新日
公開日
2025-06-03
更新日
-