文献情報
文献番号
202421049A
報告書区分
総括
研究課題名
身寄りのない人や意思決定が困難な人への医療行為の同意に関する実態把握のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24IA2001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
山縣 然太朗(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 成育こどもシンクタンク)
研究分担者(所属機関)
- 田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 / ヘルスサービス開発研究センター)
- 武藤 香織(国立大学法人東京大学 医科学研究所)
- 橋本 有生(早稲田大学法学部)
- 山﨑 さやか(健康科学大学 看護学部)
- 熊田 均(熊田法律事務所)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
3,875,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、身寄りがない高齢者等が医療を受ける際に、本人の意向に沿った医療的ケアを受けられる体制の構築を目的とし、特に高齢者等終身サポート事業者(以下、事業者)の役割に着目して、医療に係る意向表明文書の作成支援と活用の実態を調査した。あわせて、厚生労働省が発出・推奨している関連ガイドラインとの整合性を踏まえ、実務に資する支援のあり方を、調査結果を踏まえて「事業者の関わり方」として整理・提示することを目指した。
研究方法
本研究では、全国の事業者395件を対象にアンケート調査を実施し、うち139件から回答を得た(回収率35.2%)。また、そのうちヒアリング調査に同意した10事業者を対象にオンラインでインタビューを行い、実践内容や課題を詳細に聴取した。さらに、医療に係る意向表明文書や事前指示の有効性が争点となった裁判例の分析を通じて、法的な留意点を抽出した。以上の知見を基に、支援実務に資する「事業者の関わり方」を策定した。
結果と考察
アンケート調査では、77.7%の事業者が医療的意思決定支援を、74.8%が意向表明文書の作成支援を行っていた。文書の作成時期は「契約時」が最も多く(78.8%)、多くは事業者の提案により開始されていた。また、約9割が「延命治療」に関する記載を文書に含めていた。一方で、形式的なテンプレートへの署名に留まるケースや、再確認や更新を行っていない事業者も一定数存在し、支援の質・継続性に課題があった。
ヒアリング調査では、医療行為の同意書への署名代行要請、利用者の家族等への連絡要請、意向表明文書の公正証書化、利用者の判断能力の評価、意向表明文書の作成時期と配慮事項、意向表明文書作成過程での話し合いの意義と課題等が挙げられた。。特に、医療機関との信頼関係が十分に構築されていない場合、利用者の意思が現場に伝わらず適切に尊重されないリスクが示された。事業者の対応も分かれており、意向の確認や共有の方法には地域差と法人特性によるばらつきが存在していた。
また、判例分析では、①事前指示の書面化の必要性、②本人の意思表示が前提であること、③説明と理解の確認の重要性、④意向の具体性、⑤適用場面の明示、⑥法的効力の整理が重要であることが示された。これらの視点は、文書作成時の支援プロセスの質を高めるうえで不可欠である。
これらの結果から、「事業者の関わり方」では、①本人との十分な対話による作成支援、②意向内容の具体化、③既存ガイドラインとの整合性の確保、④再確認・更新体制の構築、⑤医療現場との情報共有と保管体制の整備、の5点が中核的要素として整理された。
ヒアリング調査では、医療行為の同意書への署名代行要請、利用者の家族等への連絡要請、意向表明文書の公正証書化、利用者の判断能力の評価、意向表明文書の作成時期と配慮事項、意向表明文書作成過程での話し合いの意義と課題等が挙げられた。。特に、医療機関との信頼関係が十分に構築されていない場合、利用者の意思が現場に伝わらず適切に尊重されないリスクが示された。事業者の対応も分かれており、意向の確認や共有の方法には地域差と法人特性によるばらつきが存在していた。
また、判例分析では、①事前指示の書面化の必要性、②本人の意思表示が前提であること、③説明と理解の確認の重要性、④意向の具体性、⑤適用場面の明示、⑥法的効力の整理が重要であることが示された。これらの視点は、文書作成時の支援プロセスの質を高めるうえで不可欠である。
これらの結果から、「事業者の関わり方」では、①本人との十分な対話による作成支援、②意向内容の具体化、③既存ガイドラインとの整合性の確保、④再確認・更新体制の構築、⑤医療現場との情報共有と保管体制の整備、の5点が中核的要素として整理された。
結論
本研究は、医療に係る意向表明文書に対する高齢者等終身サポート事業者の関わりについて、量的・質的データを統合的に分析し、支援の現状と課題、ならびに実務的指針を明示した点に意義がある。本人の意思に基づく医療的ケアを支える仕組みとして、高齢者等終身サポート事業者が果たす役割を検討し、今後の法制度や研修制度、医療・福祉連携体制の整備に向けた実践的基盤を提供するものである。また、本研究成果は、家族の支援を受けられない人々への包括的医療支援モデルの構築に向けた国際的・社会的課題への応答ともなりうる。
公開日・更新日
公開日
2025-06-05
更新日
-