多剤耐性Acinetobacter beumanniiに対する適切な感染対策方法の確立と病原性の解析に関する研究

文献情報

文献番号
201005024A
報告書区分
総括
研究課題名
多剤耐性Acinetobacter beumanniiに対する適切な感染対策方法の確立と病原性の解析に関する研究
課題番号
H22-特別・指定-025
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
賀来 満夫(東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座感染制御・検査診断学)
研究分担者(所属機関)
  • 森澤 雄司(自治医科大学感染制御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
1,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、我が国では、諸外国からの持ち込み例を含む多剤耐性菌による院内感染事例が相次ぎ、その対応が緊急の課題となっている。特に多剤耐性株を含むAcinetobacter 属菌の病原性に関しては、バイオフィルム形成に関する報告がある程度で、必ずしも十分な研究がなされておらず、病原性の解析に関する研究も切望されている。
 そのような背景から、本研究班では、多剤耐性 A.baumannii に対する適切な感染対策方法の確立および A.baumannii の病原性の解析を目的とした研究を実施した。
研究方法
Ⅰ.適切な感染対策方法の確立に関する研究
 平成22年に発生した帝京大学病院におけるMRAB感染症のアウトブレイク対応において実践された
感染対策を基とした感染対策マニュアルを立案・策定した。さらに、地域連携・協力体制構築の目的で、公衆衛生行政担当者との連携や地域ネットワークによる体制の確保を模索するため、全国保健所長会の代表者および専門医師との協議を行った。
Ⅱ.病原性に関する研究
 多剤耐性A.baumanniiのヒト好中球に対する食菌抵抗性や莢膜保有の多剤耐性A.baumanniiのオプソニン作用の抵抗性について検討した。さらに、Acinetobacter の細胞接着性と侵入性は、BEAS-2B細胞(気道上皮細胞株)、およびCalu-2細胞(気道上皮細胞)を用いて細胞侵入性を解析した。
結果と考察
Ⅰ.適切な感染対策方法の確立に関する研究
 本研究班で策定したマニュアルは、極めて具体的かつ実際の臨床現場での対応に即した内容となっており、今後、我が国における感染対策のモデルマニュアルと考えられた。また、院内感染発生時の対応としての地域ネットワークの具体化が模索され、今後の地域でのネットワーク構築の際に有用な情報として貢献すると考えられた。
Ⅱ.病原性に関する研究
 多剤耐性A.baumanniiは、好中球による貪食されにくいことから、免疫不全患者や糖尿病患者など宿主防御能が低下した患者でより重篤化、難治化する可能性が示唆された。また、血液より分離されたA.baumanniiは侵入性が有意に高いことが示されたことから、感染症が重篤化しやすいことに十分留意していくことが必要と考えられた。
結論
多剤耐性A.baumanniiによる院内感染事例は我が国のいずれの地域の医療施設においてもアウトブレイクが起こりえると考え、危機管理を徹底していく必要があり、本研究班によるマニュアルや地域ネットワーク構築、病原性解析は有用な情報となると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-06-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201005024C

収支報告書

文献番号
201005024Z