水道用塗料の経年劣化に伴う溶出の実態等に関する研究

文献情報

文献番号
201005023A
報告書区分
総括
研究課題名
水道用塗料の経年劣化に伴う溶出の実態等に関する研究
課題番号
H22-特別・指定-018
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
安藤 正典(武蔵野大学環境学部)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 哲治(国立医薬品食品衛生研究所生活衛生化学部)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター)
  • 山崎 雅之(千葉県薬剤師会検査センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
水道管からビル等に引き込まれている屋内配管は経年的劣化による赤水の原因となることが長年の課題である。この鉄錆等を防止するため、屋内配管の内面を塗装する工法が用いられ、これに管更生工事用エポキシ樹脂塗料が利用されてきた。エポキシ樹脂塗料は、エポキシ樹脂の原料単体と硬化剤であるアミンから成るが、アミンとして4,4-メチレンジアニリン(MDA)を利用しているものがある。このため、長年にわたって使用している既設屋内配管にMDAが残留し、更生工事後の硬化した塗料からMDAが溶出の可能性について確認するため本研究を実施した。
研究方法
管更生工事後、長期間を経過している集合住宅を選定し、屋内配管を通過した給水栓水中のMDA等の検討としてⅠ.MDA及び2,4-ジクロロアニリン(2,4-DCA)、2,4,6-トリクロロアニリン(2,4,6-TCA)の測定方法の開発並びに他の分析手法の検討、Ⅱ.屋内配管既塗装による塗料の経年劣化に伴うMDAの溶出実態調査を行った。また、Ⅲ.既存の健康影響情報を収集した。
結果と考察
ⅠのMDA及び2,4-DCA、2,4,6-TCAの測定方法の開発並びに他の分析手法の検討では、MDAと2,4-DCA、2,4,6-TCAを0.0005μg/Lまで分析できる方法を開発した。また、他の分析手法としてNMRによる測定法を検討したが、定量下限値はLC/MS法に比べおよそ100,000倍大きく、水道水中のMDAの同定と定量分析法には適さないことが確認された。Ⅱの屋内配管経由の給水栓水の実態調査では、昭和61年?平成8年に施工した9カ所のビル等の屋内配管についてMDAの存在量を調査した。その結果、何れのビル内屋内配管の給水栓水でもMDAを確認することはできなかった。そこで、これらビルの内、2カ所について屋内配管を切り出し、浸出試験を実施したが、MDAを検出することはできなかった。一方、屋内配管内の下部に貯溜・硬化していた状態の1カ所では2,4,6-TCAが確認された。Ⅲでは、屋内配管からMDA は不検出であったことから屋内配管に由来するMDAの健康リスクは無視できるレベルであった。
結論
MDA及び2,4-DCA、2,4,6-TCAの定量方法を確立した。この方法に従い、集合住宅屋内配管からの配水中のMDAを測定したが不検出であった。さらに、管を切断した浸出試験でもMDAは不検出であった。

公開日・更新日

公開日
2011-06-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201005023C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ビル等の屋内配管の経年的劣化に伴う赤水等の対策に内面をエポキシ樹脂塗料で塗装する工法が行われてきた。しかし、硬化塗料から樹脂構成成分のMDA(4,4-メチレンジアニリン)等の発ガン性物質などを含むアミンや分解物の溶出が懸念されていたが、長年使用の屋内配管からの実体は不明であった。本研究によって、MDAの溶出は認められなかったが、塩素化アニリンや分解物が生成・溶出してくることがみられ、ビル等の配水ばかりでなく水道水の安全性の観点から、さらに研究していく必要性が認められた。
臨床的観点からの成果
屋内配管からMDA は検出されなかったことから屋内配管に由来するMDAの健康リスクはないものと考えられた。しかしながら、塩素化アニリン類の毒性情報については文献がほとんどないことから、さらに毒性情報の収集し、健康影響について検討することが望ましい。現段階では臨床的情報はない。
ガイドライン等の開発
飲料水の安全性については、2005年7月10日「人体に影響のある化学物質に関する関係省庁連絡会議」(内閣府) や2009年、国会質問第348号で現状の確認が指摘された。2006年厚生労働科学特別研究を実施したが、MDAは不検出だった。今回もMDAは不検出であったが、塩素化アニリンや酸化分解物が確認された。このことから、飲料水中化学物質の健康影響のリスクを検討し、安全生確保の観点から水質管理に的確な対応できるガイドライン等の設定に資するべきである。
その他行政的観点からの成果
2005年7月10日「人体に影響のある化学物質に関する関係省庁連絡会議」(内閣府)や2009年10月23日国会質問第348号でビル等貯水槽屋内配管の更生工事によるMDA等化学物質の安全対策に対する質問がなされた。2006年厚生労働科学特別研究及び今回の研究でもMDAは不検出であったが、塩素化物や酸化分解物が確認された。このことから、飲料水中化学物質の毒性情報 を収集し、健康影響について検討し、配水並びに水道水の安全確保と水質管理に努め、国民の健康保持に資するものである。
その他のインパクト
2005年及び2010年、週刊誌等のマスコミに発ガン物質とされるMDAの溶出が懸念された。2006年には厚生労働科学特別研究を実施し、MDAの溶出はなかった。しかし、アミンの酸化分解物が確認されたことからさらに情報の収集・蓄積が必要である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Uchiyama S., Kaneko T., Ando M.
Acid-catalyzed isomerization and decomposition of ketone-2,4- dinitrophenylhydrazones,
Analytica Chimica Acta, 2007, 605, . ,  (605) , 198-204  (2007)
原著論文2
Uchiyama, S.; Matsushima, E.; Ando, M,et.al
Effect of natural compounds on formaldehyde emission from plywood.,
Environmental Atmospheric Environment 2007,41,8812-8817 ,  (41) , 8812-8817  (2007)
原著論文3
Uchiyama, S.; Matsushima, E. Tokunaga, H.; Ando, M.
Determinattion of orthophthalaldehyde in air using 2,4-dinitrophenylhydrazine-impregnated silica cartridge and high-performance liquid chromatography.
Journal of Chromatography A, 2006; 1116:165-171. ,  (1116) , 165-171  (2006)
原著論文4
Hichiya H, Tanaka-kagawa T.; Ando, M.
Functional Characterization of five novel CYP2C8 variants, G171S, R186X, R186G, K247R, and K383N, found in a Japanese population.
Drug Metab Dispos. 2005; 33(5):630-6. ,  (33) , 630-636  (2005)
原著論文5
Tsuchiya T, Tanaka-kagawa T, Jinno H, Ando M
Inorganic arsenic compounds and methylated metabolites induce morphological transformation in two-stage BALB/c 3T3 cell assay and inhibit metabolic cooperation in V79 cell assay.
Toxicol Sci. 2005 ; 84(2):344-51. ,  (84) , 344-351  (2005)
原著論文6
金志勲、許春蓮、秋葉道宏、安藤正典 
水道水源における同化性有機炭素の瞳孔に関する基礎的研究、
水道協会雑誌、2004, 73(11):11-18. ,  (73) , 11-18  (2004)
原著論文7
Shigehisa Uchiyama, Shohei Aoyagi, Masanori Ando.,
Evaluation of a diffusive sampler for measurement of carbonyl compounds in air.
Atmospheric Environment 2004, 38:6319-6326. ,  (38) , 6319-6326  (2004)

公開日・更新日

公開日
2018-05-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201005023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,360,000円
(2)補助金確定額
8,931,000円
差引額 [(1)-(2)]
429,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
単年度で終了するまでの期間が短かったため、決算日を過ぎて、研究遂行に関わる事務処理等の消耗品を購入してしまった。また、本事業の遂行以外への用途あるいは複数の競争的資金制度には使用していない。なお、差引額は返還した。

公開日・更新日

公開日
2016-06-01
更新日
-