文献情報
文献番号
201005019A
報告書区分
総括
研究課題名
生鮮食品を共通食とする原因不明食中毒に対する食品衛生上の予防対策
課題番号
H22-特別・指定-022
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
小西 良子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
- 鎌田洋一(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
- 大西貴弘(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
- 黒田 誠(国立感染症研究所)
- 八幡 裕一郎(国立感染症研究所)
- 横山 博(東京大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年、全国的に、食後数時間程度で一過性の嘔吐や下痢を呈し、軽症で終わる有症事例で、既知の病因物質が不検出、あるいは検出した病因物質と症状が合致せず、原因不明として処理された事例が増加している。提供メニューのうち生食用鮮魚介類が含まれていた事例が多く、とくにヒラメが提供された例が多く認められ、平成22年10月の食中毒事例ではヒラメが原因食品であった。生鮮魚介類以外では馬刺しが提供された例が多く見られたことから、ヒラメおよび馬肉に焦点をあて、本食中毒の原因物質の究明に必要な毒性評価法の確立および予防対策の策定を目的とした。
研究方法
各自治体から送付された事例検体を用いて、遺伝子学的手法、顕微鏡所見等で検査法を確立し、ヒラメ、馬刺し中の寄生虫の有無を調べた。平成22年10月のヒラメを原因とする食中毒事例の疫学解析を行った。毒性評価法は、実験動物、ヒト腸管細胞培養系で確立し、毒性を明らかにするとともに、冷凍等毒性を失活させる方法を検討した。
結果と考察
次世代シークエンサーによる網羅配列解読、事例残品、患者吐瀉物からクドア属が検出されたことから、ヒラメ中の病因物質として、クドア属が本食中毒と相関性が極めて高いことが示唆された。Kudoa septempunctataの毒性評価から、嘔吐毒性、下痢原性が観察され、ヒト腸管培養細胞にも毒性があることが明らかになった。失活は、-15℃ 4時間以上保管および加熱処理(中心温度75℃5分以上の加熱)で失活した。検査法としても食中毒原因究明および水産現場でのモニタリングに用いるための検査法を開発した。食中毒事例の疫学調査の結果から、発症暴露量の推定も行った。
馬刺し中の病因物質は、有症事例に関連した馬刺し残品の大半のものに共通して住肉胞子虫Sarcocystis fayeriが感染していたこと、事例から分離されたSarcocystis fayeriは犬を終宿主とし馬を中間宿主とする生活環を有することが確認されたことから、Sarcocystis fayeriの可能性が強く示唆された。病原性は、ウサギ腸管ループ試験で腸管病原性が認められた。失活は、馬肉を-20℃で48時間以上、-30℃で36時間以上、-40℃で18時間以上及び急速冷凍装置を用いた場合は-30℃で18時間以上を保持する冷凍方法、並びに、液体窒素に浸す場合にあっては、1時間以上保持する方法で失活した。
馬刺し中の病因物質は、有症事例に関連した馬刺し残品の大半のものに共通して住肉胞子虫Sarcocystis fayeriが感染していたこと、事例から分離されたSarcocystis fayeriは犬を終宿主とし馬を中間宿主とする生活環を有することが確認されたことから、Sarcocystis fayeriの可能性が強く示唆された。病原性は、ウサギ腸管ループ試験で腸管病原性が認められた。失活は、馬肉を-20℃で48時間以上、-30℃で36時間以上、-40℃で18時間以上及び急速冷凍装置を用いた場合は-30℃で18時間以上を保持する冷凍方法、並びに、液体窒素に浸す場合にあっては、1時間以上保持する方法で失活した。
結論
予防対策としては、本研究で確立した検査法を用いて養殖場や屠殺場段階におけるモニタリング等の対策および冷凍、冷蔵などの流通・加工段階における対策が有効であると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2011-05-31
更新日
-