臨床検査技師、臨床工学技士、診療放射線技師のタスクシフテイング/タスクシェアリングの安全性と有効性評価

文献情報

文献番号
202421041A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床検査技師、臨床工学技士、診療放射線技師のタスクシフテイング/タスクシェアリングの安全性と有効性評価
研究課題名(英字)
-
課題番号
22IA2010
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
小坂 鎮太郎(公益社団法人地域医療振興協会 地域医療研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 板橋 匠美(東京医療保健大学 総合研究所)
  • 上田 克彦(国際医療福祉大学 大学院)
  • 益田 泰蔵(一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会)
  • 青木 郁香(中村 郁香)(公益財団法人医療機器センター 医療機器産業研究所)
  • 藤谷 茂樹(聖マリアンナ医科大学 医学部救急医学)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
2,545,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、医師の働き方改革を背景として、臨床検査技師・臨床工学技士・診療放射線技師を中心とするタスク・シフト/シェアの安全性および有効性を検証し、医療提供体制の持続可能性を高める制度的基盤を整備することを目的とした。2021年の法改正により、これら3職種に計20行為が新たに認められたが、その実施状況や安全管理体制には施設間差がみられ、科学的根拠に基づく実態把握が求められていた。本研究では、全国調査、事例調査、スコーピングレビューを組み合わせ、各職能団体および学会と連携して、法制度下での実施実態、教育体制、安全性・有効性を多面的に検証した。
研究方法
研究代表者の統括のもと、各分担研究者が担当職種別に調査を実施し、共通評価指標(安全性・有効性・効率性・普及要因)を設定した。診療放射線技師領域では、日本診療放射線技師会との共同調査および熊本大学病院・香川大学医学部附属病院へのヒアリングを実施し、RI検査部門における静脈路確保・薬剤投与等の導入経過と安全運用体制を確認した。臨床検査技師領域では、スコーピングレビューにより国内外の14文献を分析するとともに、済生会中央病院・国立国際医療研究センター病院における持続皮下グルコース検査や内視鏡検査補助の運用を調査した。臨床工学技士領域では、4施設を対象に麻酔管理補助業務の教育・認定体制と実施件数を分析した。また、日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)と連携し、心臓カテーテル室における全国調査を行い、法改正前後での職種別業務分担と安全管理体制を比較した。
結果と考察
全国的に、3職種におけるタスク・シフト/シェアは安全に実施されており、教育体制と標準手順書の整備が安全性確保の鍵となっていた。
診療放射線技師では、令和6年度末時点で告示研修修了者が3万人を超え、RI検査部門における新規行為が定着していた。熊本大学病院・香川大学医学部附属病院では、導入後もインシデントは報告されず、検査件数や医師業務効率の向上が認められた。
臨床検査技師領域では、持続皮下グルコース測定や内視鏡補助行為などで安全な運用が確認され、教育プログラムの整備が普及促進に寄与していた。
臨床工学技士では、麻酔管理補助業務が制度化され、年間数千件規模で安全に実施されていた。チーム連携により、手術対応力や医師の心理的負担軽減に寄与していることが明らかになった。
さらに、心臓カテーテル室調査では、全国771施設のうち多くでタスク・シフトが進み、地方医療機関でも多職種による安全な分担が確認された。
これらの成果から、タスク・シフト/シェアは単なる業務移譲ではなく、チーム医療の機能強化と医療安全の両立を可能にする仕組みであることが示唆された。
結論
本研究により、臨床検査技師・臨床工学技士・診療放射線技師のタスク・シフト/シェアは、教育・認定制度と多職種連携のもとで安全に実施できることが確認された。タスク・シフトは医師の負担軽減のみならず、医療の効率化・安全性・質の向上に寄与する有効な方策である。成功要因として、①明確な手順書と教育制度、②職能団体・学会・行政の連携体制、③安全文化の醸成、④インシデント情報の共有が挙げられる。一方で、教育投資への支援や責任分担の明確化など、制度的課題も残された。
今後は、トップダウンの方針を現場に確実に浸透させる組織体制を構築し、教育・研修への財政的支援や危険手当を含む評価制度の整備が求められる。また、AIやデジタル技術との協働によるタスク・シフトの高度化を視野に、持続可能で安全な医療提供体制の確立に向けた取組を進めることが重要である。

公開日・更新日

公開日
2025-10-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-10-22
更新日
-

文献情報

文献番号
202421041B
報告書区分
総合
研究課題名
臨床検査技師、臨床工学技士、診療放射線技師のタスクシフテイング/タスクシェアリングの安全性と有効性評価
研究課題名(英字)
-
課題番号
22IA2010
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
小坂 鎮太郎(公益社団法人地域医療振興協会 地域医療研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 板橋 匠美(東京医療保健大学 総合研究所)
  • 益田 泰蔵(一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会)
  • 青木 郁香(中村 郁香)(公益財団法人医療機器センター 医療機器産業研究所)
  • 藤谷 茂樹(聖マリアンナ医科大学 医学部救急医学)
  • 上田 克彦(国際医療福祉大学 大学院)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医師の働き方改革を背景に、臨床検査技師、臨床工学技士、診療放射線技師によるタスク・シフト/タスク・シェアの推進は、医療の質を維持しつつ効率化を図る上で重要な課題である。令和3年度の医療法施行規則等の改正により、3職種で計20行為が法的に実施可能となったが、安全性や有効性に関する科学的根拠は十分に整備されていなかった。本研究は、これらの医療技術職による業務分担の実態を明らかにし、安全かつ有効に実施されるための体制条件を検証することを目的とした。
研究方法
研究期間は令和4~6年度の3年間とし、①制度改正直後の実施状況把握、②多施設共同による安全性評価、③関連領域(心臓カテーテル検査室等)を含む全国的検証の3段階で実施した。
調査対象は、亀田総合病院、済生会熊本病院、藤田医科大学病院、聖隷浜松病院など、先行的にタスク・シフトを導入している全国20施設以上である。
各施設において、行為別実施件数、インシデント・アクシデント件数、教育・研修体制、院内認定制度の有無等を標準化した調査票により収集した。安全性評価指標として「タスクシフト安全性指数(インシデント+アクシデント+ヒヤリハット件数/行為数)」を導入し、施設間・職種間比較を行った。また、全国アンケート調査および文献レビューにより、法改正後の制度定着度を分析した。データは量的・質的両面から統合解析し、教育・認定体制や多職種協働体制との関連を評価した。
結果と考察
3年間の総合分析により、いずれの職種・行為においても重大な有害事象は報告されず、安全性指数は概ね0.1%未満で推移した。臨床検査技師による静脈路確保や造影超音波検査、臨床工学技士による麻酔管理補助、診療放射線技師による造影検査においても、医師や看護師が同様の行為を行う場合と同等の安全水準であった。
安全運用を支える要因として、①標準作業手順書・力量評価表の整備、②院内認定制度・教育プログラムの体系化、③医師・看護師・技師間の協働と責任分担の明確化、④継続的な安全文化の醸成が共通して抽出された。これらの体制を整備した施設では、事故の増加はなく、むしろ検査品質の向上、再検率や検体溶血率の低下、検査待機時間短縮などの効果が得られた。
また、関連領域である心臓カテーテル検査室では、PCI関連操作における3職種の関与が拡大し、2023年から2024年にかけて調査対象施設数が倍増するなど、制度定着が進展している。これらの成果は、タスク・シフト/シェアが単なる業務移管ではなく、医療プロセスの最適化とチーム医療の質的向上を実現する仕組みであることを示している。
一方で、大学病院等では導入の慎重さや教育負担、責任体制整備に時間を要するなどの課題も確認された。これらに対しては、国・学会・職能団体による標準教育プログラムやガイドラインの共有が求められる。
結論
本研究により、臨床検査技師・臨床工学技士・診療放射線技師によるタスク・シフト/シェアは、適切な教育・認定・手順整備のもとで安全かつ有効に実施可能であることが科学的に実証された。安全性指標はいずれも極めて低率であり、医師や看護師と同等の安全水準を維持している。また、導入施設では医師・看護師の業務負担軽減、検査待機時間短縮、手術件数増加など、医療の質と効率の双方を高める成果が得られた。
さらに、職能団体によるガイドラインや教育カリキュラムの整備、標準手順書の公開が進み、制度的にも全国的定着の段階に入っている。
総じて、タスク・シフト/シェアは「安全に行われている」ことが確認され、今後は教育・認定制度の全国標準化と継続的モニタリング体制の構築を通じて、持続可能な医療提供体制の確立に寄与することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-11-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-11-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202421041C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究により、臨床検査技師・臨床工学技士・診療放射線技師によるタスク・シフト/シェアが、適切な教育・認定・標準手順の整備により安全かつ有効に実施できることを科学的に実証した。安全性指標は0.1%未満で推移し、医師・看護師と同等の水準を確認。成果はガイドラインや教育体系の整備に反映され、医療の質向上と働き方改革の両立に資する国際的にも先進的なエビデンスとなった。
臨床的観点からの成果
本研究により、臨床検査技師・臨床工学技士・診療放射線技師による静脈路確保、造影検査、麻酔補助などの行為が、安全かつ効果的に実施できることを多施設データで実証した。導入施設では医師・看護師の業務負担軽減、検査待機時間短縮、検査品質向上が確認され、チーム医療の質と効率が向上。成果はガイドライン整備や教育制度に反映され、持続可能な医療提供体制の構築に寄与している。
ガイドライン等の開発
本研究では独自のガイドラインは作成していないが、得られた成果は日本臨床衛生検査技師会、日本臨床工学技士会、日本診療放射線技師会がそれぞれ策定した手順書・教育カリキュラム・安全運用マニュアルの改訂に活用された。これらは厚生労働省医政局によるタスク・シフト/シェア関連検討の参考資料として共有され、今後の制度運用および教育標準化に資する基礎資料となった。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果は、医師の働き方改革および医療人材活用方策の具体化に資する実証的根拠として、厚生労働省医政局医事課によるタスク・シフト/シェア関連検討の基礎資料として活用された。多職種にわたる安全性・有効性評価の結果は、次期医療計画や人材確保総合対策の政策立案に反映が期待され、医療提供体制の効率化と質の両立を支える行政的エビデンスとして貢献している。
その他のインパクト
本研究成果は、医療現場におけるタスク・シフト/シェアの安全性を社会に広く周知するため、日臨技、日本臨床工学技士会、日本診療放射線技師会の公式ウェブサイトで成果概要・手順書等が公開された。また、医学検査誌や学会シンポジウムで多数発表され、医療従事者や行政関係者への啓発に寄与した。これらの活動は医療職の役割拡大に対する社会的理解を深め、医療DX推進にも波及効果をもたらしている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-10-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
202421041Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,297,000円
(2)補助金確定額
2,168,144円
差引額 [(1)-(2)]
1,128,856円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 921,997円
人件費・謝金 0円
旅費 477,097円
その他 17,050円
間接経費 752,000円
合計 2,168,144円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2025-10-07
更新日
-