文献情報
文献番号
202421036A
報告書区分
総括
研究課題名
HL7 FHIRを用いた汎用性の高い情報利活用の方法論の確立と実装に向けた課題整理と対応策の検討に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24IA1018
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 美保子(一般社団法人医療データ活用基盤整備機構 )
研究分担者(所属機関)
- 上野 悟(国立保健医療科学院 保健医療情報政策研究センター)
- 込山 悠介(国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系)
- 讃岐 徹治(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科 耳鼻咽喉・頭頸部外科)
- 池原 由美(琉球大学病院 臨床研究教育管理センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
4,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
これまでの地域医療連携システムや、多施設共同研究では、それぞれの中での情報の共有化に留まっており、国内すべての病院、診療所を包括するような情報の共有や利活用はできていない。より効果的・効率的な医療等の提供を促進するための情報連携の仕組み作りが課題となっている。現在、我が国では医療DXが推進され、国際的な標準規格HL7 FHIRⓇが採用されている。本研究では、医療機関および医療機関間において医療情報の利活用による診療や業務の効率化、効果的・効率的な医療に向けた診療や研究でのデータの利活用と評価を可能にする仕組み等を構築するため、電子カルテ情報共有サービスとの関係を視野に置きHL7 FHIRⓇを用いた汎用性の高い情報利活用の方法論の確立と実装に向けた課題整理と対応策を検討することを目的とする。
研究方法
(1) HL7 FHIRの活用動向 - 文献検索による調査: 近年のHL7 FHIRを用いた医療情報の利活用について国際的な動向を把握するため、文献検索により調査し、整理する。
(2) 欧米を中心として医療施設間連携に係るFHIR活用の実際例、国レベルでのFHIRを中心とする医療情報化政策等を調査し要約する。
(3) CDISCによる医療情報利活用について国際会議、トレーニングへの参加等を通じて情報収集を行い、方策を検討する。
(4) 国内医療施設における診療データの臨床試験、臨床研究への活用の実際と課題について具体事例を調査し、課題の整理と対応策の検討を行う。
(2) 欧米を中心として医療施設間連携に係るFHIR活用の実際例、国レベルでのFHIRを中心とする医療情報化政策等を調査し要約する。
(3) CDISCによる医療情報利活用について国際会議、トレーニングへの参加等を通じて情報収集を行い、方策を検討する。
(4) 国内医療施設における診療データの臨床試験、臨床研究への活用の実際と課題について具体事例を調査し、課題の整理と対応策の検討を行う。
結果と考察
(1) HL7 FHIRに関する研究論文について文献調査を行った。期間は2019年~2024年、対象文献は243件であった。臨床試験では、臨床試験情報マネジメントシステム、多施設におけるeSourceデータの交換、患者データと適格基準のマッチ、自動リクルートなど、臨床試験に係る様々なFHIRの利活用がみられる。またコンセントマネジメントに係る一定数の論文がある。領域別・疾患別応用ではゲノム研究、眼科領域データの標準、脳卒中レジストリーデータのデータ標準、慢性疾患管理等がみられる。技術・方法論では、メタデータ、クラウドネーティブ、ブロックチェーン技術、AI駆動型臨床意思決定支援システム、意味論的な課題と対応策などがある。またOMOPとFHIRに関係については複数の論文がみられた。広域にわたる医療情報連携の例として米国トラステッド交換フレームワークおよび共通協定について概要を調べた。また、CDISCによる標準化とHL7 FHIRとの連携は、臨床研究の効率化と品質向上、さらにデータの二次利用を強力に後押しするものである。国内医療機関のデータ利活用による効率化に関する課題として①項目定義、記述形式、単位、ハウスマスタ(施設独自コード)などが統一されておらず、横断的なデータ利用が困難であること(標準化の遅れ)②既存DWHではリアルタイム連携やAPI連携が困難。各システムが独立し再入力を必要とするケースが多い。(情報基盤の未整備)③自由記述や形式不統一により、機械的な抽出・解析が困難。構造化テンプレートの導入が求められる(非構造化データの多さ)④地域内ネットワークは存在するが、全国的な接続性・再利用性を担保する共通規格の実装例は少ない(相互運用性不足)と整理された。考察として文献調査より、HL7 FHIRは一次利用目的のみならず、二次利用での適用範囲も非常に適用範囲は幅広い。特に臨床試験、臨床研究での活用については国内でも共通する課題が存在し、FHIR活用の方策が考えられる。医療コンテンツの相互運用性を担保するためにFHIRでは標準コードを定める。これを支えるには良質な標準の維持管理、提供のサイクルが回る仕組みに産官学、それぞれが当事者として、取り組むべきではないか。また、CDISCは臨床試験データの標準として知られているが、臨床試験に限らず幅広いタイプの研究に活用可能である。臨床研究に活用可能な標準は利用できるものは利用すべきである。そのため、より広く知っていただくための情報提供の方法を研究班として検討したい。
結論
様々な観点からHL7 FHIRによる情報の利活用に係る国際動向調査と、国内の現状と課題について調査し考察した。結果として、HL7 FHIRの活用動向、医療施設間連携へのHL7 FHIR活用事例調査、CDISCによる医療情報利活用に関する調査、さらに電子カルテと臨床試験・臨床研究の実際と課題について具体事例を調査し、課題を整理した。また広域的情報活用の方法に関する検討を行った。国際動向から、国内の具体的課題まで、また技術的観点から臨床的観点まで、網羅的に調査し、整理することができた。調査で終わることなく、これらの結果から解決策をさぐり、令和7年度は一部実装を行う予定である。
公開日・更新日
公開日
2025-06-02
更新日
-