医療関係職種の要請教育における課題解決に資する研究

文献情報

文献番号
202421034A
報告書区分
総括
研究課題名
医療関係職種の要請教育における課題解決に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24IA1016
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
板橋 匠美(東京医療保健大学 総合研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
1,410,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、厚生労働省医政局医事課が所管する医療関係職種の養成教育において、質の高い人材育成を支える教育体制の在り方を探るため、「遠隔授業の在り方」と「第三者評価の方法」という職種横断的な課題について実態を整理・分析することである。特に令和6年度は、令和2年度以降の新型コロナウイルス感染症の影響で急速に普及した遠隔授業に注目し、その活用実態と課題、教育的有効性、職種特性との関係性などを明らかにすることを目的とした。対象職種は、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士とし、各職種の分担研究班と連携しながら調査を進めた。令和7年度以降は、柔道整復師を中心に「第三者評価の方法」に関する検討を進め、将来的には教育の質保証や制度設計につながる共通の評価基準の構築を目指す。
研究方法
本研究は医療関係職種の養成教育における「遠隔授業の在り方」と「第三者評価の方法」という2つの職種横断的な課題をそれぞれ年度ごとに段階的に整理・分析するものである。令和6年度は「遠隔授業の在り方」に焦点を当て、総括研究班が中心となり、各職種の分担研究班と連携して調査研究を進めた。まず総括研究班にて統一的な調査票を作成し、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師、柔道整復師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士の養成機関に対して配布した。得られた回答は、①職種共通の内容と②職種特有の内容の2軸で一次分類を行い、さらに③人体に触れる機会の多寡や④職種特性による分類などを用いた二次分類によって、教育内容と遠隔授業の実施実態を可視化した。加えて、各分担研究班にて職種別の好事例を抽出し、総括研究班にて横断的に分析・統合。これにより、遠隔授業の教育的有効性、学生の理解度、実技科目への適用限界、使用機器やシステム面の工夫、今後の活用意向などを含む多面的な知見を整理した。研究は、各職種の学校協会や関係団体の協力のもと進められ、将来の制度的整備に向けた基盤情報を収集する設計とした。
結果と考察
令和6年度の調査結果より、医療関係職種における遠隔授業の実施状況には明確な共通点と職種特有の差異が存在することが明らかとなった。共通して認められたのは、講義科目(解剖学、生理学、基礎知識など)では遠隔授業が一定の学修効果を発揮している一方、実技系科目や臨床実習においては画面越しの指導や観察では限界があるとされ、学生の理解や習熟に支障をきたす懸念が示された点である。また、職種ごとに遠隔授業の導入度や活用形態に差が見られた。例えば、柔道整復師・鍼灸師等では実技中心の教育内容が多いため、対面での指導が不可欠であるとの意見が多く、一方で診療放射線技師や臨床検査技師では一部科目においてシミュレーション教材や動画コンテンツが有効活用されていた。また遠隔授業導入にあたっては通信環境や配信機材、教員のICTリテラシーといった物理的・人的インフラが成功の鍵であるとの認識が共通していた。さらに、学生の集中力維持や双方向性の確保など、教育手法としての質的課題も浮き彫りになった。加えて、今後も遠隔授業の継続を望む声は一定数あり、特に通学困難な状況や感染症対策としての有効性を評価する傾向も認められた。以上より、遠隔授業は代替手段にとどまらず、今後の教育の一手法として定着する可能性を示唆する一方で、各職種の教育目的や学修内容に即した慎重な制度設計が必要であることが示された。
結論
本研究により、医療関係職種の養成教育において遠隔授業の導入・活用に関する現状と課題が職種横断的に明らかとなった。特に知識伝達型の講義については多くの職種で遠隔化が可能であり、教育効果や学生満足度も一定の水準を維持している一方、技能習得や実技実習においては対面指導の必要性が依然として高く、遠隔授業の限界が明確に示された。また、教員の遠隔授業に対する対応力や機材環境、学生の学修姿勢の支援体制といった教育基盤の整備も、教育の質を左右する重要な要素であることが認識された。さらに、好事例の収集・整理を通じて、ICTを活用した工夫や教育的効果を高める取り組みも多く確認され、これらは今後の教育指針策定の際の有益な手がかりとなる。令和7年度には、第三者評価の在り方に関する研究に移行し、特に柔道整復師の事例をもとに、教育内容の質保証と可視化に資する評価手法の整理を進める計画である。本年度の成果は、遠隔授業に関する共通課題と個別課題の切り分け、教育の質確保に向けた実態把握、職種特性に応じた対応の必要性を明示するものであり、今後の法令整備やガイドライン策定に資する基盤的データを提供するものといえる。したがって、本研究は医療関係職種教育における新たな学修モデルの形成と政策的支援の在り方に対して、重要な実証的示唆を与えるものである。

公開日・更新日

公開日
2025-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-30
更新日
2025-07-31

収支報告書

文献番号
202421034Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,833,000円
(2)補助金確定額
1,590,000円
差引額 [(1)-(2)]
243,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 668,060円
人件費・謝金 0円
旅費 260,706円
その他 238,835円
間接経費 423,000円
合計 1,590,601円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2025-05-29
更新日
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