法医学領域における多職種連携とキャリアパスの推進について

文献情報

文献番号
202421032A
報告書区分
総括
研究課題名
法医学領域における多職種連携とキャリアパスの推進について
研究課題名(英字)
-
課題番号
24IA1014
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
井濱 容子(横浜市立大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 琢磨(兵庫医科大学 法医学)
  • 松末 綾(福岡大学 医学部法医学)
  • 笹尾 亜子(是枝 亜子)(熊本大学 大学院生命科学研究部(医)法医学講座)
  • 梅原 敬弘(産業医科大学 医学部)
  • 前田 一輔(横浜市立大学 大学院医学研究科 法医学)
  • 小川 匡之(愛知医科大学 医学部法医学講座)
  • 美作 宗太郎(東北大学 大学院医学系研究科法医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
1,410,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
死因究明等推進基本法(令和元年6月制定、令和2年4月施行)が法制化され、「死因究明」は国策としても推進すべき重要課題となっている。「死因究明」は法医学の責務であるが、解剖実務は医師だけで行うものではなく、臨床検査技師や薬剤師など他領域の専門家の協力が不可欠である。円滑な法医実務の遂行と正確な死因判断には、多職種連携は必須の課題である。

本研究の目的は、医師以外の職員を法医実務において活躍させることである。法医実務の効率化によって解剖率が上昇し、社会ニーズである正確な「死因究明」に寄与することが可能となる。そのためには医師以外の職員の現状や課題を把握し、課題解決のための施策が必要である。また、人材確保のための取り組みについても検討する。
研究方法
①人材確保のためのセミナー開催
学部学生・大学院生を対象として法医学をアピールするため、令和6年8月24-25日に横浜市立大学にてセミナーを開催した。開催のためのポスターならびにプログラムを添付する。アンケート結果については分担者の研究報告書(「学生のための法医学セミナー アンケートに関する研究」前田)を参照のこと。

②法医学領域教職員の実態調査
全国80大学医学部法医学講座に対してアンケート調査を実施した。アンケート結果については分担者研究報告(「法医学領域における多職種連携とキャリアパス推進に関する研究」笹尾)を参照のこと。

③先進的な取り組みの視察
研究領域、法医実務領域、人材確保領域に分かれて、効率的な業務運用や先進的な取組みをしている講座を視察した。詳細については分担者報告(「他施設視察に関する報告」山本・梅原、松末、笹尾参照)を参照のこと。
結果と考察
①人材確保のためのセミナー開催
 「学生のための法医学セミナー」には約70名の学部学生や大学院生の参加があった。過去に、医学部生を対象とした法医学の啓発セミナーは開催されたことがあるが、医学部以外の学生を対象としたセミナーは初めての開催である。
 医学部以外の学生が、どのくらい法医学に興味を持っているのかについては予想できなかったが、実際には多くの学生の参加があり、関心の高さが示された結果となった。
 セミナーの講師は全国の有志の法医学者らであり、手弁当でセミナーに参加し、盛り上げていただいたことに感謝している。一方、後進育成や若手リクルートは法医学の現場にとっては喫緊の課題であり、現役法医学者の関心の高さを反映していると考えている。
セミナーの具体的な成果については、参加者に実施したアンケートを解析した分担者の研究報告書(「学生のための法医学セミナーアンケートに関する研究」前田)で検討されているが、大変好評であったと自負している。
また、本セミナーは時事通信社の記事にもなり、社会の関心の高さを示している[https://medical.jiji.com/column4/215]。

②法医学領域教職員の実態調査
アンケートによる実態調査では、漠然と感じていた課題や問題が明確化した。働き方の現状については、教授を筆頭にかなりの業務負担があることが浮き彫りになった。一方で、激務にもかかわらず「法医学にやりがいを感じる」と回答した人が全体の75%以上を占め、案外と法医学の未来は明るいのではないかと期待を持った。さらに、多くの大学院生が「将来、法医学の常勤を希望する」と回答していることも嬉しい結果であった。
今回のアンケート結果については、分担者の研究報告書(「法医学領域における多職種連携とキャリアパス推進に関する研究」笹尾)で検討されているが、大変興味深い結果であった。

③先進的な取り組みの視察
 研究、法医実務ならびに人材確保に対して先進的な取り組みをしている施設への視察を実施した。各大学講座では効率的な業務のために、様々な工夫をしていることを認知した。各法医学講座によって状況は異なるものの、参考にすることができる取り組みや体制もあり、我々の得たものを何らかの形で周知することを検討している。
また、今回の視察をした分担者は、人材交流が進んだことを成果として報告した。個別に話をすることによって相互理解が進みやすく、研究協力のハードルが下がるだけでなく、職務上の悩みを分け合うなどのメリットもあると感じた。特に若い法医学者、コメディカルにこのような機会を作ることも大事な任務と感じている。
各視察については分担者の研究報告書(「他施設視察に関する報告」(研究部門)山本・梅原(法医実務部門)松末(人材確保部門)笹尾)に詳細を記載する。

結論
アンケートやセミナー開催、他施設への視察によって、法医学領域における多職種連携の課題が明らかになった。今後、アンケートや視察の結果についてより詳細に分析して、今後の法医学が目指すべき方向や施策についての提言ができるよう積極的に取り組んでいく。

公開日・更新日

公開日
2025-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
202421032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,833,000円
(2)補助金確定額
1,814,231円
差引額 [(1)-(2)]
18,769円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 427,350円
人件費・謝金 241,466円
旅費 722,415円
その他 0円
間接経費 0円
合計 1,391,231円

備考

備考
【 内 容 】
① 物品費が交付決定額より増額した理由
② 人件費・謝金および旅費が交付決定額より減額した理由
③ 経費の変動によって、研究に支障はなかったか、研究目標を達成できたか

【 回 答 】
① 物品費
研究遂行していくうえで、各自がデータ保存をするための媒体が必要となり増額となった。
② 人件費・謝金
本研究費より支出予定であった謝金の支払いが不要となったため減額となった。
旅費
対面で予定をしていた班会議の一部をWEB会議に切り替えたため、当初想定していた金額よりも減額となった。
③ 経費の変動はあったが、研究に支障はなく、研究目標を達成できた。

公開日・更新日

公開日
2025-06-02
更新日
-