救急応需率向上を目指した効率的な救急医療提供体制の構築に資する研究

文献情報

文献番号
202421030A
報告書区分
総括
研究課題名
救急応需率向上を目指した効率的な救急医療提供体制の構築に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24IA1012
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
大友 康裕(独立行政法人国立病院機構 災害医療センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
3,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
COVID-19が第5類感染症とされた現在においても、救急医療機関の救急患者応需率は依然として低い水準にとどまっており、救急医療提供体制の効率化と強靭化に向けた構造的課題の把握が求められている。本研究は、三次・二次救急医療機関における各段階(受け入れ決定、外来診療、入院、転退院)での阻害因子を抽出し、救急医療体制の質的改善に資する政策提言の根拠を得ることを目的とした。また、2024年4月に施行された医師の働き方改革が救急医療体制に与える影響や、三次救急医療機関からの転院促進に関する課題の明確化も目指した。
研究方法
本研究では、以下の4つの分担研究を遂行した。
Ⅰ. 三次救急医療機関における応需率と施設要素の関連性解析
「令和5年救命救急センターの充実段階評価」のオープンデータと厚生労働省から提供された応需率データを用いて、全国304施設の応需率と42の評価項目との関連性を分析した。単回帰分析および四分位による比較を実施した。
Ⅱ. 救急不応需の要因解析に関する研究
大阪府のORIONシステムに登録された2016~2023年の救急搬送データを用い、「本来二次救急で対応すべきにもかかわらず不応需となった事例」に焦点を当て、搬送困難の頻度と関連因子を分析した。
Ⅲ. 3次、2次救急医療機関応需率とDPCデータの関連性解析
DPCハッシュアプリを改修し、救急搬送経路の特定機能と匿名化処理機能を実装した。DPCデータと救急搬送記録との統合により、病院到着から入院・転退院に至るプロセスの可視化と構造的分析の基盤を整備した。
Ⅳ. 病院前救護の現状と救急搬送困難事案の因子解析
全国消防本部のデータを用い、地域類型(大都市・地方都市・過疎地域)ごとに搬送困難の傾向を分析。搬送件数の規模を調整しつつ、地域ごとの課題とデータ活用の限界を整理した。
結果と考察
Ⅰでは、地方で救命救急センターや高度救命救急センターまでのアクセスが悪い地域に設置された地域救命センターの応需率(90.3%)は救命センターや高度救命センターの応需率(81.6%)より高く、また応需率の高い施設は、救急外来のトリアージ機能を整備し、専任の看護師又は医師が配置されている施設が多かった(97.8%)。一方、救急専従の医師数や院内の診療体制整備の強度とは大きな相関は見られなかった。
Ⅱでは、搬送困難の割合がCOVID-19以降に急増し、特に2022年には例年の3倍以上となった。曜日別では土日、時間帯別では深夜(0〜5時台)に多く、事故種別では自損、加害、火災、水難で高率であった。また、年齢階層別では高齢者(特に90歳以上)の困難事案が増加していた。
Ⅲでは、DPCハッシュアプリVer.7.0の導入により、救急搬送症例の自動抽出と構造化が可能となり、今後の定量的な制度評価の技術的基盤が構築された。
Ⅳでは、曜日・時間帯・年齢・傷病分類・調整時間などが搬送困難と関連しうる要素として抽出されたが、データの精度や記録形式には限界があった。
本研究では、三次救急医療機関における応需率の向上に向けて、人的・物的体制の単純な充実ではなく、地域における施設の機能的役割やトリアージ体制の整備が重要であることを示した。また、COVID-19流行期に顕著となった搬送困難の背景には、夜間医療提供体制の脆弱性や高齢者対応の限界が存在する。DPCデータと搬送記録の統合的解析を通じて、従来困難であった救急診療の実態把握が可能となりつつあり、政策形成への応用が期待される。一方で、消防データの活用に際しては分類精度や欠損情報などの技術的課題も明らかとなった。
結論
本研究は、救急医療体制の応需率向上と搬送困難の軽減に資する要因を多面的に明らかにし、三次・二次医療機関双方における実効性ある体制整備の方向性を示した。今後は、DPCデータと消防データの連携をさらに深化させることで、地域特性を反映した医療資源の最適配分と、政策的支援の科学的根拠となるデータ創出が期待される。本研究の遂行には、悉皆性・事例単位・時間情報を備えた良質なデータへの安定的なアクセスが不可欠であり、厚生労働省医政局地域医療計画課および消防庁救急企画室等の継続的な協力のもと、さらなる研究を進める。

公開日・更新日

公開日
2026-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
202421030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,420,000円
(2)補助金確定額
4,420,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,954,217円
人件費・謝金 0円
旅費 341,040円
その他 1,104,743円
間接経費 1,020,000円
合計 4,420,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2026-01-30
更新日
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