医療機関から在宅へ円滑に移行するための適切な栄養管理に関する実態把握及び体制整備へ向けた課題探索のための研究

文献情報

文献番号
202421029A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関から在宅へ円滑に移行するための適切な栄養管理に関する実態把握及び体制整備へ向けた課題探索のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24IA1011
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
榎 裕美(一般社団法人 日本健康・栄養システム学会 )
研究分担者(所属機関)
  • 梶井 文子(東京慈恵会医科大学 医学部看護学科)
  • 加藤 昌彦(椙山女学園大学 生活科学部 管理栄養学科)
  • 菊谷 武(日本歯科大学 口腔リハビリテーション多摩クリニック)
  • 古賀 奈保子(医療法人社団いばらき会 栄養課)
  • 高田 和子(東洋大学 健康スポーツ科学部栄養科学科)
  • 高田 健人(十文字学園女子大学 人間生活学部 食物栄養学科)
  • 田中 和美(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 栄養学科)
  • 友藤 孝明(朝日大学 歯学部 口腔感染医療学講座)
  • 西井 穗(神戸女子大学 家政学部 管理栄養士養成課程)
  • 松尾 浩一郎(東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 医歯理工保健学専攻 地域・福祉口腔機能管理学分野)
  • 三浦 公嗣(一般社団法人日本健康・栄養システム学会)
  • 本川 佳子(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,388,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、5つの目標を立て、医療計画および介護保険事業(支援)計画の見直しに向けて、在宅療養者に対する適切な栄養管理の充実に向けたシステム構築の基礎資料を示すことを目的とする。目標は、①-1文献収集により効果的な訪問栄養食事指導等の体制整備に向け事例を収集し、訪問栄養食事指導の実施方法、栄養面での改善効果、その他の改善効果、実施上の課題について抽出、①-2 都道府県の第8次医療計画における管理栄養士の人材確保、訪問栄養食事指導の計画、在宅栄養食事指導に関連する評価指標の記載状況についての整理、②実態調査により、訪問栄養食事指導等の実態把握と促進要因および阻害要因の抽出、③入院医療から在宅療養への切れ目のない栄養管理体制に向けた課題探索、④インタビュー調査により多職種および多施設と連携した訪問栄養食事指導等による栄養管理体制の構造化、⑤①~④より現場で活用できる手引書、医療計画・介護保険事業(支援)計画の策定に寄与する提言の作成、の5つである。
研究方法
①-1文献収集により、これまでに報告された訪問栄養食事指導等に関わる栄養管理体制の事例ならびに効果に関する国内のエビデンスを整理した。①-2都道府県の第8次保健医療計画における管理栄養士の人材確保、訪問栄養食事指導の計画、在宅栄養食事指導に関連する評価指標の記載状況についての整理を行った。②③厚生労働省地方厚生局のデータベースを基に、全在宅療養支援病院、在宅療養支援診療所と在宅療養支援歯科診療所は都道府県別層化3割無作為抽出、全都道府県栄養士会栄養ケア・ステーションを対象として、WEBアンケート調査を実施した。④ ②③の調査結果より、先進的に訪問栄養食事指導等の取組が為されている医療機関および都道府県栄養士会栄養ケア・ステーションに対し、半構造化インタビューの実施に向け対象施設の抽出とインタビューガイドを作成する。
結果と考察
①-1訪問栄養食事指導の事例報告では、栄養面の改善とQOLの改善に加え、介護者の負担軽減など栄養面以外の効果が示されていた。また、問題点として、診療報酬上で認められている訪問回数の不足、訪問栄養食事指導ができる管理栄養士の不足が指摘されていた。①-2 都道府県の医療計画において、訪問栄養食事指導の体制整備や連携の記載、医療従事者としての管理栄養士の現状値の記載はあるが、配置率の向上、資質の向上などの目標値についての具体性は低かった。②③在宅療養支援病院、在宅療養支援診療所、在宅療養支援歯科診療所および都道府県栄養士会栄養ケア・ステーション(以下栄養CS)を対象とした実態調査を行った結果、管理栄養士の雇用が進んでおらず、訪問栄養食事指導を行うことが可能な体制を有している在宅療養支援病院(n=134)は全体の36.6%、在宅療養支援診療所(n=354)は全体の14.4%であった。栄養CSにおける訪問栄養食事指導の実績は低く、在宅の栄養管理の拠点として十分に機能を発揮しているとは言い難い状況であった。入院医療から在宅療養に移行するための栄養管理の体制整備は、在宅へ移行する手続き等のプロセスの明確化と地域における多施設連携を推進する必要があることが示された。一方、管理栄養士は、医師、歯科医師、看護師等の多職種から「在宅療養者の生きがい、食べる楽しみ等のQOL向上」の担い手であると認識されていた。体制整備に向けた最も大きな課題は、管理栄養士の数の不足と診療所等の人的資源の有効活用が成されていない点であった。④令和7年度に実施するインタビュー調査のインタビューガイドの作成と41施設のインタビュー対象施設を抽出した。インタビューは、好事例の聴取から、多職種連携を踏まえた訪問栄養食事指導等のプロセスと体制および取組の状況を聴取する。
結論
事例収集により訪問栄養食事指導は、栄養面の改善と介護者の負担軽減など栄養面以外の効果が示され、さらに実態調査からも同様に意見が述べられた一方で、管理栄養士の数の不足から在宅療養者の適切な栄養管理の充実に向けた体制整備は行われているとは言い難い状況であった。人的資源の確保に向けて、まずは都道府県の医療計画において、地域の特性に見合った訪問栄養食事指導等の具体的な推進方針とそれを支える管理栄養士の確保目標数が明示されることが望まれる。在宅へ移行する手続き等のプロセスの明確化と地域における多施設連携は、令和7年度に実施するインタビュー調査により明らかにする。令和7年度には、最終目標である在宅の低栄養高齢者の栄養管理の定量的ニーズとそれに対応する管理栄養士の必要数等の推計、推計に基づく次期医療計画・地域医療構想における在宅低栄養高齢者対応への記載内容に関するテンプレートの提案と在宅の低栄養高齢者に対する訪問栄養支援のための手引書を作成する。

公開日・更新日

公開日
2025-05-30
更新日
2025-06-06

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-05-30
更新日
2025-06-06

収支報告書

文献番号
202421029Z