文献情報
文献番号
202421017A
報告書区分
総括
研究課題名
公的に標準化された医療情報を活用した感染症流行状況と一般診療状況を把握するための分析手法の開発および評価方法に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23IA1015
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 大介(藤田医科大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 谷口 俊文(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
- 今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
- 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
- 明神 大也(浜松医科大学 医学部 健康社会医学講座)
- 高嶋 隆太(東京理科大学 創域理工学部経営システム工学科)
- 伏見 清秀(国立大学法人 東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
- 新城 大輔(東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学分野)
- 土井 俊祐(千葉大学 医学部附属病院 地域医療連携部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
4,324,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
標準化された請求情報および診療情報等による新興感染症と一般診療の状況を定点的に把握する方法と、既存の分析によって得られる結果についての精度比較を行う。また、標準化された請求情報および診療情報等から得られるデータを基に、確率モデルや機械学習等の学習アルゴリズムを用いた予測モデルを構築し、感染症データ収集の頻度変化に伴う感染症流行状況の把握の精度に及ぼす影響について経営工学、オペレーションズ・リサーチ分野の工学的手法を用いて評価、分析を行う。このような政策科学の手法を取り入れ、医療現場の負担と予測精度のトレードオフを検討し、感染症流行状況を把握する方法の提案を行うことを目的とする。
研究方法
本研究は令和5年度にデータ入力から分析までデジタルで完結する分析方法および制度・仕組みに関する検討し、令和6年度より標準化された請求情報や診療情報データを活用した分析の予測精度モデルの開発、分析方法および指標の提案ならびに実現に向けた仕組みの検討および学術団体と連携した提案を行う。具体的には下記の項目に沿って研究計画を実施する。
1)データ入力から分析までデジタルで完結する分析方法および制度・仕組みに関する検討
2)レセプト情報やDPCデータを用いた新型コロナウイルス感染症および一般診療に関する分析結果と、既存の分析結果を比較した予測精度の評価
3)確率モデルを用いた感染症流行状況の把握に資する分析の変数定義および解析モデルの開発
4)標準化された請求情報や診療情報を積極的に活用する分析方法を政策へ展開するための検討と提案
1)データ入力から分析までデジタルで完結する分析方法および制度・仕組みに関する検討
2)レセプト情報やDPCデータを用いた新型コロナウイルス感染症および一般診療に関する分析結果と、既存の分析結果を比較した予測精度の評価
3)確率モデルを用いた感染症流行状況の把握に資する分析の変数定義および解析モデルの開発
4)標準化された請求情報や診療情報を積極的に活用する分析方法を政策へ展開するための検討と提案
結果と考察
第一に、感染症流行時に医療機関から日々収集されるレセプト情報を活用し、感染状況や医療資源使用のリアルタイム把握の可能性を検討した1)システム処理への影響、2) ファイルサイズとストレージの必要量、3)通常業務フロー、4)病院機能の4点から次の収集頻度を提案した。
・特定機能病院・DPC病院 :週次(日次)
・一般病床:週次(日次)
・一般病床以外(精神除く):月次(日次)
・診療所:月次(日次)
収集体制を実現するには診療報酬改定DXの「共通算定モジュール」の導入が有効であることを示した。
第二に、DPCデータに基づくSIRD(感受性-感染-回復-死亡)モデルを構築し、感染症流行状況の予測モデルを開発した。データの変数(入退院日・診療内容等)から、年齢や既往症などに応じた回復率・死亡率の推定が可能となり、感染拡大や医療資源需要を定量的に予測できる手法が示された。
本研究は、公的に標準化された医療情報を活用するために、日々レセプト導入の実現可能性と感染症情報の即時性の両立、上記データ活用した予測モデルの妥当性、今後のパンデミック対策に必要な情報基盤整備への知見を提供した。しかしながら、公的に標準化された医療情報を活用するにあたっては、死亡情報の欠落が課題であり、レセプト情報への入力や死亡個票等とのリンケージが必要である。
・特定機能病院・DPC病院 :週次(日次)
・一般病床:週次(日次)
・一般病床以外(精神除く):月次(日次)
・診療所:月次(日次)
収集体制を実現するには診療報酬改定DXの「共通算定モジュール」の導入が有効であることを示した。
第二に、DPCデータに基づくSIRD(感受性-感染-回復-死亡)モデルを構築し、感染症流行状況の予測モデルを開発した。データの変数(入退院日・診療内容等)から、年齢や既往症などに応じた回復率・死亡率の推定が可能となり、感染拡大や医療資源需要を定量的に予測できる手法が示された。
本研究は、公的に標準化された医療情報を活用するために、日々レセプト導入の実現可能性と感染症情報の即時性の両立、上記データ活用した予測モデルの妥当性、今後のパンデミック対策に必要な情報基盤整備への知見を提供した。しかしながら、公的に標準化された医療情報を活用するにあたっては、死亡情報の欠落が課題であり、レセプト情報への入力や死亡個票等とのリンケージが必要である。
結論
公的に標準化された医療情報を活用した感染症流行状況と一般診療状況を把握は十分実現可能であり、医療政策のエビデンスとなる情報基盤として有効であることを示した。
公開日・更新日
公開日
2025-06-04
更新日
-