文献情報
文献番号
201005005A
報告書区分
総括
研究課題名
A型肝炎発生報告増加に対する食品衛生上の原因究明と予防対策
課題番号
H22-特別・指定-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
野田 衛(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
- 田中 智之(堺市衛生研究所)
- 石井 孝司(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
- 清原 知子(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
- 多田 有希(国立感染症研究所 感染症情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
12,060,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
2010年春季を中心に我が国でA型肝炎が多発し,多くの事例で食品の関与が疑われた。本研究ではA型肝炎発生報告増加に対する食品衛生上の原因究明を行い,予防対策に資することを目的とした。
研究方法
国立研究機関および地方衛生研究所と共同で,2010年に報告されたA型肝炎事例について分子疫学的解析を実施するとともに国内で流通する国産カキ等の二枚貝,輸入魚介類等のA型肝炎ウイルス(HAV)汚染実態調査を行った。
結果と考察
2010年のA型肝炎事例から検出されたHAVの多くは,2つの1Aのクラスターと3Aに分類され,多数を占めた1Aの一つのクラスターに属した株の多くは遺伝子的に同一(1A-2010型)であった。春季の国内感染事例の一部はこの1A-2010型の汚染を受けたカキによる広域的集団発生であった可能性が高く,地域別の感染リスクに差が認められた。3Aによる広域食中毒の可能性がある事例も認められた。1A-2010型は2007年頃輸入魚介類等を介してフィリピン等から国内に持ち込まれた可能性があり,3Aは海外渡航者あるいは輸入魚介類を介して韓国等から持ち込まれた可能性がある。患者情報と一元化を図った分子疫学的解析結果の自治体間での共有は,各事例の疫学的関連性や感染源の推定に有用であった。2011年1月~2月に寿司店を原因施設とする自治体をまたぐA型肝炎食中毒が発生し,今回構築された調査・検査体制が患者間の疫学的関連性の確認等に寄与した。国内産カキからHAVは検出されず,汚染リスクは低いと考えられたが,5月の下水1検体からHAVが検出されたことから,汚染リスクは存在すると思われる。HAV常在国からの輸入魚介類はHAVの汚染リスクがあり,それを介して持ち込まれたHAVが国内のA型肝炎の原因となっている可能性がある。輸入半乾燥トマト等からHAVは検出されなかった。患者多発および重症化の背景には,A型肝炎の抗体保有率の低下が重要な要因として関与している。今後,検出率や分子疫学的解析能の向上に向けた検査法の改良が必要である。A型肝炎多発への対応の一環として作成された「A型肝炎簡易調査票」や「A型肝炎症例質問票」は広域集団発生が疑われた場合に全国共通の疫学情報収集に寄与すると考えられる。以上の結果を基に,A型肝炎の食品衛生上の予防対策を取りまとめた。
結論
2010年のA型肝炎が多発した原因を明らかにできた。また,国内流通の二枚貝等のHAVの汚染リスク等予防対策に必要なデータが得られた。
公開日・更新日
公開日
2011-05-31
更新日
-