看護師の特定行為に係る手順書の実態調査研究

文献情報

文献番号
202421015A
報告書区分
総括
研究課題名
看護師の特定行為に係る手順書の実態調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23IA1013
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
神野 正博(公益社団法人全日本病院協会 )
研究分担者(所属機関)
  • 木澤 晃代(日本看護協会)
  • 村上 礼子(自治医科大学 看護学部)
  • 釜萢 敏(公益社団法人 日本医師会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
5,338,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2015年度医療関係者研修費等補助金事業において、特定行為に係る医師、看護師等の有識者により、特定行為(38行為)の実施に係る手順書例集を作成した経験や、2015年度より実施している「看護師の特定行為に係る指導者育成事業」「看護師の特定行為に係る指導者リーダー育成事業」での受講者からの意見等を活かし、特定行為の実施に係る手順書の記載内容とその運用の実態や、特定行為研修修了者の活動を推進する手順書の具体的な運用方法に関する知見を得る。特定行為研修修了者の就業している医療機関等の医師・看護師等を対象にした、手順書の具体的な記載内容や運用方法、及び運用後の見直しに関する実態調査を実施し、調査結果に基づいた、特定行為に係る手順書例集の作成を行うとともに、手順書のクリニカルパスへの位置づけや、外科手術後対応のための手順書を含む包括指示書の活用など、特定行為研修修了者の活動の推進に資する手順書の運用方法の具体的な提案や、関係者を対象とした普及促進活動の資料、及び制度見直し等に資する資料の作成を目的とする。
研究方法
2年計画の1年目は看護師の特定行為研修修了者就業先医療機関での特定行為研修修了者の就業状況や特定行為や6つの領域パッケージの実施状況、手順書例集の活用状況等を把握するために、特定行為研修修了者の就業先から医療機関に対象に特定行為に係る手順書例集改定に向けた活用状況等調査のアンケートを実施。また、実際に現場で使用している手順書の提供をEメールにて依頼した。2年計画の2年目は訪問看護ステーション201施設に特定行為に係る手順書例集改定に向けた活用状況等調査のアンケート調査表を郵送した。また、1年目に実施した看護師の特定行為研修修了者就業先医療機関を対象とした調査で回答があった医療機関より8病院を抽出し、ヒアリング調査を実施した。そのうえで、初年度に73病院から提出いただいた実際に現場で使用している手順書を選定した。
結果と考察
今年度に実施した特定行為に係る手順書例集改定に向けた活用状況等調査は、特定行為研修修了者の就業先医療機関を対象としたものである。特定行為研修修了者がいる医療機関の医師や特定行為研修修了者以外の看護師の本制度に対する認知や理解が低いことが自由記載いただいた課題からわかる。この問題は手順書例集を改訂するだけでは解決しないと思われる。特定行為研修修了者が通常の看護業務しか行っていないという結果も出ている。現状では医師による直接指示が受けやすいことから手順書を使用した特定行為研修修了者の活用が進んでいない可能性もあるが、医師の働き方改革等で状況は変わってくることから、本制度の推進が必要である。その点で、特定行為の手順書と訪問看護指示書が似ているように思われる。訪問看護指示書も当初は医師が作成してくれず非常に困ったという過去がある。その時の経験がヒントになるのではないかと推察される。また、調査結果から手順書例集をアレンジして活用している医療機関が多い。今提示している手順書例集が正解なのではなく、アレンジしてこれだけのパターンの手順書が現場で活用されているということを示すことも有用と思われる。医療機関で手順書を医師や看護師等が一緒になって作成する・共有することで、今までなんとなくやっていた行為が、どういった考えで、何のためにやっていたのかということを明確にすることが、チーム医療としては非常に意味がある。そのための1つの材料が手順書であると考えるべきである。
結論
研修修了者が上手く活動できていない理由の一つとして、「手順書が○○だ」という声が聞かれている。「○○」には難しいとか面倒くさいとか大変だという言葉が入る。「平成27 年度手順書例集」の編集責任を担当し、特定行為研修指導者講習会やe ラーニングなどで、手順書の説明を長年行ってきた。最初の手順書例集が悪かったのか、と少なからず責任を感じていた。確かに当時は、作成者の多くが研修指導に関わっていなかったので、決して100点満点の手順書ではなかったかもしれない。しかし熟練した臨床医が作成したものであることには間違いなく、それなりのレベルにあるものと思っていた。しかし、今回の編集作業を行い、「平成 27 年度手順書例集」は、現場の手順書の例として有効に働いていることがわかった。一部は、そのまま同じものが使われていた。結論として初代の手順書例集は、意外と好い線いっていた、ということがわかり安堵した。そして、問題は手順書自体にあるのではなく、特定行為を最初から最後まで手順書に従って実践しようとしていることにあるのではないか、と思うようになった。最初から直接的指示で行うとか、途中で医師に連絡をして直接的指示に切り替えるといった、柔軟な対応を行うことで、診療の補助をタイムリーに実践して欲しいと思っている。

公開日・更新日

公開日
2025-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-06-11
更新日
-

文献情報

文献番号
202421015B
報告書区分
総合
研究課題名
看護師の特定行為に係る手順書の実態調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23IA1013
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
神野 正博(公益社団法人全日本病院協会 )
研究分担者(所属機関)
  • 木澤 晃代(日本看護協会)
  • 村上 礼子(自治医科大学 看護学部)
  • 釜萢 敏(公益社団法人 日本医師会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2015年度医療関係者研修費等補助金事業において、特定行為に係る医師、看護師等の有識者により、特定行為(38行為)の実施に係る手順書例集を作成した経験や、2015年度より実施している「看護師の特定行為に係る指導者育成事業」「看護師の特定行為に係る指導者リーダー育成事業」での受講者からの意見等を活かし、特定行為の実施に係る手順書の記載内容とその運用の実態や、特定行為研修修了者の活動を推進する手順書の具体的な運用方法に関する知見を得る。特定行為研修修了者の就業している医療機関等の医師・看護師等を対象にした、手順書の具体的な記載内容や運用方法、及び運用後の見直しに関する実態調査を実施し、調査結果に基づいた、特定行為に係る手順書例集の作成を行うとともに、手順書のクリニカルパスへの位置づけや、外科手術後対応のための手順書を含む包括指示書の活用など、特定行為研修修了者の活動の推進に資する手順書の運用方法の具体的な提案や、関係者を対象とした普及促進活動の資料、及び制度見直し等に資する資料の作成を目的とする。
研究方法
2年計画の1年目は看護師の特定行為研修修了者就業先医療機関での特定行為研修修了者の就業状況や特定行為や6つの領域パッケージの実施状況、手順書例集の活用状況等を把握するために、特定行為研修修了者の就業先から医療機関に対象に特定行為に係る手順書例集改定に向けた活用状況等調査のアンケートを実施。また、実際に現場で使用している手順書の提供をEメールにて依頼した。2年計画の2年目は訪問看護ステーション201施設に特定行為に係る手順書例集改定に向けた活用状況等調査のアンケート調査表を郵送した。また、1年目に実施した看護師の特定行為研修修了者就業先医療機関を対象とした調査で回答があった医療機関より9病院を抽出し、ヒアリング調査を実施した。そのうえで、初年度に73病院から提出いただいた実際に現場で使用している手順書を選定した。
結果と考察
今年度に実施した特定行為に係る手順書例集改定に向けた活用状況等調査は、特定行為研修修了者の就業先医療機関を対象としたものである。特定行為研修修了者がいる医療機関の医師や特定行為研修修了者以外の看護師の本制度に対する認知や理解が低いことが自由記載いただいた課題からわかる。この問題は手順書例集を改訂するだけでは解決しないと思われる。特定行為研修修了者が通常の看護業務しか行っていないという結果も出ている。現状では医師による直接指示が受けやすいことから手順書を使用した特定行為研修修了者の活用が進んでいない可能性もあるが、医師の働き方改革等で状況は変わってくることから、本制度の推進が必要である。その点で、特定行為の手順書と訪問看護指示書が似ているように思われる。訪問看護指示書も当初は医師が作成してくれず非常に困ったという過去がある。その時の経験がヒントになるのではないかと推察される。また、調査結果から手順書例集をアレンジして活用している医療機関が多い。今提示している手順書例集が正解なのではなく、アレンジしてこれだけのパターンの手順書が現場で活用されているということを示すことも有用と思われる。医療機関で手順書を医師や看護師等が一緒になって作成する・共有することで、今までなんとなくやっていた行為が、どういった考えで、何のためにやっていたのかということを明確にすることが、チーム医療としては非常に意味がある。そのための1つの材料が手順書であると考えるべきである。
結論
研修修了者が上手く活動できていない理由の一つとして、「手順書が○○だ」という声が聞かれている。「○○」には難しいとか面倒くさいとか大変だという言葉が入る。「平成27 年度手順書例集」の編集責任を担当し、特定行為研修指導者講習会やe ラーニングなどで、手順書の説明を長年行ってきた。最初の手順書例集が悪かったのか、と少なからず責任を感じていた。確かに当時は、作成者の多くが研修指導に関わっていなかったので、決して100点満点の手順書ではなかったかもしれない。しかし熟練した臨床医が作成したものであることには間違いなく、それなりのレベルにあるものと思っていた。しかし、今回の編集作業を行い、「平成 27 年度手順書例集」は、現場の手順書の例として有効に働いていることがわかった。一部は、そのまま同じものが使われていた。結論として初代の手順書例集は、意外と好い線いっていた、ということがわかり安堵した。そして、問題は手順書自体にあるのではなく、特定行為を最初から最後まで手順書に従って実践しようとしていることにあるのではないか、と思うようになった。最初から直接的指示で行うとか、途中で医師に連絡をして直接的指示に切り替えるといった、柔軟な対応を行うことで、診療の補助をタイムリーに実践して欲しいと思っている。

公開日・更新日

公開日
2025-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-06-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202421015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
特定行為研修制度が創設されて8年が経過し、特定行為研修修了者の活動の場や働き方は多様になっている。手順書についても特定行為のみの指示に留まらない内容が追記されているなど、修了者の活動状況に応じて効果的な手順書の様々な作成・運用の実態があることが想定されている。手順書の具体的な記載内容や運用方法、及び運用後の見直しに関する実態調査を実施し、調査結果に基づいた、特定行為に係る手順書例集を作成した。
臨床的観点からの成果
2015年度医療関係者研修費等補助金事業において、特定行為に係る医師、看護師等の有識者により、特定行為(38行為)の実施に係る手順書例集をベースに、21区分 38行為 1,000種類の実際に現場で使用している手順書を収集し、実践的であると思われる78件を選定。実際に現場で使用している手順書であり、様々な書式があることを示しつつ、1冊の「例集」とした。これは、現場での活動を支援するものであり、臨床的観点においての成果は大きい。
ガイドライン等の開発
本研究では、直接、ガイドライン等の開発を行うものではないが、現場で活用しやすい特定行為に係る手順書例集を作成した。
その他行政的観点からの成果
看護師の特定行為研修制度の今後のさらなる普及に資する研究であるとともに、特定行為研修の成果を現場で円滑に発揮するために重要な資料を提示している。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
令和6年度作成「特定行為に係る手順書例集」を取りまとめた

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-06-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
202421015Z